第11話 どうしてなの?
部屋に戻って俺は着替えた。
リビングへ向かい、ソファに座って綾花を待った。
それにしても。
まさか綾花があんな嫉妬(?)するとは思わなかった。しかも、姉ちゃんに。
そりゃ、義理だけどさ……。別に特別な感情はないし。
俺はむしろ、一日中綾花のことでいっぱいなんだがな。
「う~ん……」
悩んでいると、背後から気配を感じた。綾花だ。
振り向こうとすると、綾花は俺の目を手で目隠しした。
「だーれだ」
「誰だって、そりゃ綾花に決まってる」
「残念、アキナでした~」
間違ってはいないけども!
確かに、さっきの声はアキナそのものだった。小悪魔的なところとかな。
「ゲームでもするか?」
「まだいいかな。それより、お兄ちゃんに聞いて欲しいことがあるの」
「どうした、改まって」
綾花は隣に座って改まる。
もじもじとして、どこか言い辛そうだ。
なにを言おうとしている?
「わたしはずっと一人ぼっちだった。毎日寂しかった」
「そんなことないだろ。アキナには何万というファンがいるじゃないか」
「ううん、違うの。リアルの話」
「……なるほど」
これは真面目に聞いた方が良さそうと判断した。
「実家は貧乏で大変だった。でも、ある時にネットでVTuber活動をしてみたら受けちゃってさ。それで上手く軌道に乗ってアキナが羽ばたいていった」
「そんな誕生秘話があったとは」
「しばらくすると、心優しいプロの人が
マジかよ。普通、何十万と掛かるらしいと聞いたことがある。それを無料とか、奇特な人もいたものだ。
それが更なるアキナの人気を加速させたらしい。まあ、その辺りの時期になると俺も配信に参加していた頃だから知ってはいる。
毎日のようにトークやゲーム配信を続け、一躍有名人に。今やCMに出演しているほど有名人。
それがまさか、こんな身近にいる女子高生だとは誰も思わないだろう。
「アキナにそんな歴史がね」
「でも、リアルではぼっちだったから、ずっとずっと寂しくて。そしたら、ふとお兄ちゃんのことを思い出して」
俺をずっと探していたらしい。
公園で絶望していた俺を偶然見つけ、そして拾ってくれた――と。
「でも、なんで俺なんだ?」
「小学校の頃、お兄ちゃんはわたしを救ってくれた。だから、ヒーローなんだよ」
俺が綾花を救った!?
……やばい。なにも覚えていない。
小学校の頃の記憶なんて曖昧すぎてな。
「すまん。俺、なにしたんだ?」
「いじめてくる男子から守ってくれた。身を呈して……ボロボロになるまで。あの時、本当に嬉しかったんだ」
瞳を潤ませ、頬を赤くして綾花は過去のことを教えてくれた。
俺が……綾花を守ったのか。
確かなことは思い出せない。
けど、綾花がそう覚えているのなら、俺は彼女を助けたのだろう。そうでなければ、こんな美少女がここまでしてくれるはずがない。子供の頃の俺よ、よくやった!
「ちなみに聞くけど、いじめてきた男子って覚えてる?」
「う~ん、名前を確か『伏見』って言ったかな」
ふせみ?
ふせみ、ふせみ、ふせみ、ふせみ……伏見ィ!?
あの男かよ!!
つまりなにか、あの男は小学校の頃から綾花を意識し、俺に嫉妬して最近は邪魔ばかりしてきていたのか。
ああ、そういうことかよ。
伏見がなぜ俺を恨んでいるのか分かったぞ。
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