第7話 義妹と寝ちゃった

 就寝時間を迎え、綾花の寝室へ……。

 部屋は広くてベッドも二人は余裕で寝られるスペースがある。立ち尽くしていると、綾花が俺の手を引っ張り、強制的にベッドへ。


 ふかふかのベッドだ……良い匂いもする。


「……おぉ」

「寝心地最高でしょ~?」

「これは驚いた。こんな弾力があって気持ちいベッド初めてだ」

「結構高いヤツなんだよ、これ」


 どうやら、綾花は睡眠を重視するようでベッドとかマットにはこだわっているようだな。


「快眠できそうだ」

「うん、寝心地最高だし、疲れが取れて最高だから。はい、お兄ちゃんここ」


 ここ……って、綾花と密着するような距離感なのだが。しかし、俺に拒否権などなかった。腕を引っ張られ、俺はベッドへ落ちた。


 横になって綾花と目を合わせる状況に。


「綾花……俺、緊張して心臓が破裂しそうだよ」

「あはは。わたしも」


 そう言いながらも綾花はスマホをポチポチ。本当かよ!?


「SNSをチェックしてるのか?」

「ううん、違うよ。思い出したことがあって」

「思い出したこと?」

「お兄ちゃんと連絡先交換してないなって。はいっ」


 そうだった。メッセージアプリの交換くらいしておきたいな。今後、世話になるし……それに、俺の初めての女子が綾花なら、それは光栄なことだ(親族は除く)。


 今後のことも考え、俺は綾花を連絡リストに追加した。


 人生初の女の子が連絡先に……しかも、VTuberアキナとだなんて感動だ。今夜は、いろんな意味で興奮して寝れそうにないぞ。



「ありがとう、綾花」

「こちらこそ。これで毎日、お兄ちゃんと連絡取れるね」


 嬉しそうに微笑む綾花。

 俺も嬉しいぞ。


「困ったらいつでも連絡してくれ」

「うん。じゃあ、寝るね」

「お、おう……って、このまま?」

「このまま。逃げたら嫌だからね」


 まぶたを閉じる綾花は、スヤスヤと眠ってしまった。どうやら、お疲れのご様子。俺は緊張でそれどころじゃないのだが。


 目の前には無防備な綾花の寝顔。しかも、パジャマも胸元がはだけているんだよなぁ……。谷間、見えてるよ。眼福、眼福って――そうじゃない。

 せめてもの抵抗で俺は背を向けた。


 こうするしか興奮を抑える術はない。


 ……おやすみなさい。



 * * *



 ――次の日。

 起き上がると体が妙に重かった。おかしい。なんでこんな体が鉛みたいに……って、うわッ!!


 俺に抱きつく綾花の姿があった。



「あ、綾花!」

「おはよう、お兄ちゃん」

「ずっと、そうしていたのか」

「そだよ~。だって、幸せなんだもん」


 こんな大胆に密着して、ありがとうございます……! などと感謝している場合ではない。下半身的な意味で危険すぎる。このままでは暴発してしまう。


「そ、そうだ。朝ご飯しよう。ほら、今日は学校あるだろ」

「それもそっか~」


 納得する綾花は、俺から降りてくれた。しかし、その場でパジャマを脱ぎ始めた。……いかん、下着姿が!


「すとーっぷ!」

「どうしたの?」

「どうしたの、じゃないって。綾花、恥ずかしくないのか」

「は、恥ずかしいよ。でも、お兄ちゃんならいいかなって」


 本当に照れ臭そうに綾花は乱れたパジャマを戻していく。無茶しすぎだろう。まさか、俺を誘惑しているのか!?

 それはそれで嬉しいけど、遅刻しちゃうって。


「気持ちはありがたく。けど、時間ないだろ」

「そうだね。じゃあ、お兄ちゃんは隣の部屋で着替えて」

「そうする」


 いったん別れ、いそいそと着替えて仕度をしていく。学生服はリュックに詰められていたので、それを取り出した。正直、学校へ行く意味なんて……でも、幸いにも綾花と同じ高校だ。となると、行かないという選択肢は自然となくなった。


 朝食はエナジードリンクのみ補給した。綾花のルーチンらしい。配信者らしいといえば、配信者らしいな。


 マンションから出て地上へ。

 セキュリティが多くていちいち大変だな。


 ようやく街を歩きだすと、俺は気づいた。


「綾花……制服、可愛いな」

「やっと気づいてくれた?」

「ああ、最高だ」

「ありがと」


 その場でくるりと回る綾花。なんて可愛い義妹なんだ。信じられん。夢のようだ。まさか、同じ学校に一緒に登校する日が来るなんて。

 感動していると、通りかかった学生がアキナについて話していた。


「アキナって可愛いよな~」「ゲーム上手いよね」「現役の女子高生らしい」「マジかよ。付き合いたいなぁ」「住所特定して乗り込みたい」「馬鹿。そんなことしたら犯罪だろうが」「アキナちゃんに投げ銭したい」「あの甘々の妹癒しボイス、一生聴いていたい」


 へえ、やっぱり学生にも人気なんだな。だが、アキナはもう俺のだ。諸君、残念だが中の人は俺の義妹なのだよ。そんな優越感に浸りながら、俺は綾花と共に学校へ。

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