第4話 最初の道のり
狂ってしまったこの世界だと夜が訪れるのが稀。今日は…いや今週はずーっと昼。教会から出発して二十分ぐらい経つ。その間で私とルーサーさんとの会話はあんまりなかった。必要な情報は全部フラちゃんが教えてくれたし、ルーサーさんから補足でこれもねって教えられたけど本人があんまり覚えなくてもいい知識だよ〜ってほのぼのとした様子で言われたから頭の中からはもう抜けちゃった。
「ルーサーさーん、あとどのぐらいで村に着くんですかー?」
気怠い感じで私は聞いてみる。
「あと…三十分ぐらいかな…」
右手首に巻いてある腕時計を見て、ルーサーさんが呟くように返してくれた。そういえば今更気づいたことあるし、聞いてみようかな?
「
「
左手をヘニャりとあげながらルーサーさんと目が合った。意外と体力ないのかなこの人。一応、川沿いを歩く感じで移動してるんだけど、この辺り家とかが少ないなぁ…。緑に覆われちゃった家とか所々に見える。私が育った村?規模でいうなら町かな、そこの周りはかなり発展してたけど、町から出て少し歩いただけでこんなに廃れて寂れちゃうのか…。
どこか物悲しい。フラちゃんが言ってた通り、この後に着く予定の村は寂れてるのかな。今の調子が続くなら絶対に廃村とかそんな事になってると思うんだけど。
「ん!ニニさん止まって」
「な、何っ!?」
ルーサーさんの声が思ったよりも大きくて鳥肌っぽいのをたてて私は止まる。ルーサーさんが私の前に右腕を伸ばしてこれ以上行くのを止めようとしているのが分かった。
私達の先にある草むらで何かが蠢いていた。黒い影、何かが溶け落ちるような音、鼻をツンとさすような刺激臭。思わず鼻をつまんでしまった。
「うっ…」
喉から何かが込み上げるような感触がする。それを抑え込んで、私はその草むらから出てきたモノを目撃した。
顔は豚っぽい…けど胴体が蛇みたいに細い、短いけど黒光りする手足が生えていた。その生物の口からはおそらく酸性だと思う液体がゴポゴポって音を立てながら垂れ流されてた。あの液体が溶かしてたんだ。その生物は私達の方を一瞥して、怯えたような表情を見せて、反対側の小さな平原へと走り去ってしまった。
「あれは…」
「狂った側の生き物だね。多分…六柱目の影響かな」
「分かるんですか?」
「なんとなくだよ。生き物をあんな風に
ルーサーさんが腕を組んで、悩んだような顔をしながら私からの疑問に答えてくれた。さっきの生き物が通った所を私達は踏み越えて、先へと進む。
鬱蒼とした森の中に道は続いていた。ルーサーさんが魔除けの魔法をかけて、早歩きでその森を通り抜けた。時間にして大体五分ぐらい。そこから小さな丘に差し掛かって、奥に大きな山々が見えた。学校の窓から見えていたあの山々達だった。どこか神々しささえ感じてしまう。そんな景色に見惚れながら丘の頂上まで私達は登り切った。
近くにあった石に私とルーサーさんは腰かけて、行く前に渡してもらった水筒の蓋を開けて、中に入った水を喉をちょっとだけ鳴らしながら熱くなった体の中に注ぎ込む。ひんやりとした感触が全身をじんわりと巡って行く。ルーサーさんも似たやつな水筒を手に持って、私と同じように水を飲んでいた。
「ふぅ…あそこだよニニさん、僕たちが目指していた所は」
ルーサーさんが飲み口から唇を離して、ある一点に向かって指を差した。その指の先に寂れたような雰囲気が漂う村があった。ここから見るだけでもその寂れ具合が伝わってくる。
学校で雑談程度に聞いたことのある廃れてしまった温泉地の跡地みたいな雰囲気が感じとれた。違う所があるとしたら、ちゃんと動いている人達がこの距離でも視認できるって事ぐらい。
「あと少しですねっ」
「あぁ、ここからは下りだし、ペース落として行こうか、村長さんには話が通ってるはずだしね」
「あそこの村の人達、私達が来るの知ってるんですか?」
「まぁね、じいちゃんが手紙の方を出してくれてて…わりと僕たちがしようとしてる事には肯定的っぽいし、もしかしたら手を貸してくれるかもだ」
思いもよらない朗報に私は少しだけ胸を躍らせてしまった。二人だけで?って思っていたけどここから増えてくれるなら本当にやれるんだって気が湧いてくる。一息ついてから私達は立ち上がって、視界にポツンと見えている村へと歩みを進める。初めての封殺が迫ってきてるってことを心のどこかで理解しながら。
一緒に上位者殺しませんか? @ARusK
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