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3日後の土曜日、僕はお客さんとしてSiestaに来店した。
細身でライトブルーのハイウエストデニムに白の無地シャツをタックインをする。その上からオレンジ色にショート丈の三つボタンカーディガンを羽織り、ヒールブーツを履く。もちろん口のピアスも隠した。
パンツをハイウエストで履いてアウターをショート丈にして足長効果を図った。
パンクファッションの洋服しかない僕は何店舗も普段は絶対行かないような綺麗めのセレクトショップや古着屋さんを血眼で探した。この一式の服を買うのに8万円近く使ってしまった。普段ではありえないな。
お店の中に入ると、マイさんの姿があった。僕はマイさんのテーブルの前に座った。彼女は本当にいつもと変わらない。ファッションも性格も仕草も、全てが一体となってマイさんという存在を形成している。
「ヒカルくん、この後よかったらお出かけしない?」 2時間ほどお喋りをしたあと、提案をしてきた。
「この前履いてきたメリージェーンの靴が壊れちゃって、新しい革靴を買おうと思ってるの。よかったらアドバイス欲しいなって思って」
「この後何も予定ないので、僕でよかったら全然いいですよ」
「よかった、ヒカルくんお洒落さんだから良い靴見つかりそう」 彼女は満面の笑みだった。
お店を後にして僕たちは1時間くらいかけて都心へと向かった。さまざまなお店を見て回った後、青山にあるTricker'sというイギリスメイドのお店についた。
そこでもマイさんはメリージェーンを見ていた。僕は彼女に聞いてみた。
「この形の靴が好きなんですか?」
「このお靴は靴下も見えるので靴下の色を変えたりして遊べるから好きなんです」
「ヒカルくんはどんな靴が似合うと思います?」
僕は少し考えた後、口を開いた。
「僕もメリージェーンがすごく似合ってると思います。イギリス製のものは長く使えるものが多いのでTricker'sの革靴は丁度いいと思います」
マイさんは少し考えていた。
選択をミスしたかと思いすぐさま言い直そうとしたとき、彼女は言った。
「せっかくだから履いてみなきゃね!」マイさんは店員さんに自分のサイズを持ってくるようお願いした。
UK4のサイズを店員さんに持ってきてもらった。僕は店員さんの代わりにフィッティングをすることにした。先に25cmを履かせてみた。
「サイズどうですか?中で足が動いちゃいますか?」
次は24cmを履かせてみる。
「ジャストサイズです!でも少しきついかも」何歩か歩いたマイさんは鏡越しに言う。
「革靴は最初は我慢です。だんだんと履いていくうちに柔らかくなって自分の足に合っていくので大丈夫ですよ。逆にゆとりがあると余計に靴擦れしちゃうからあまり良くないんです」
「なるほど、ヒカルくん物知りだね! 服飾学生の私は顔負けだよー」
「そんなことないです、知り合いが言ってたのを覚えてただけです」
「じゃあこれ買います!」マイさんは即決した。
僕は値札を見た瞬間驚愕した。
お会計は10万円を超えていた。
「マイさん本当に大丈夫?」僕は慌てていた。
「うん!大丈夫だよ!元々良い靴を買おうと思ってたからお金貯めてたの」
彼女が笑みを浮かべこちらを見ている中、僕は君をどんな表情で見ているのか自分でもわからなかった。
でも洋服の価値観は合いそうだなとふと思った。
「今日はありがとう! すごい助かっちゃった」帰りの電車の中でカフェの時と同じくお喋りをする。
ショッパーを大切そうに持っている姿はクリスマスプレゼントをもらった時の子供のようだった。
「ヒカルくんって彼女とかいたことあるの?」話の流れでこのような会話になったってしまった。
「一人だけいたことあります」
「元カノの話聞かせてよ!人の恋愛ってめちゃくちゃ気になっちゃうんですよね」
僕は黙ってしまった。
「ごめんなさい、内緒です」少し嫌な顔が出てしまった気がした。僕の考えてる顔を見て彼女も黙ってしまった。電車の中で沈黙が続く。
マイさんとはLINEだけを交換して解散した。
マイさんは彼氏とか元彼とかいるのかな。
今日も空音が宙を舞う君との関係は、それもまた愛なのかな。 夏乃洋介 @birthbysleep0723
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★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 2話
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