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その後も度々、彼女はSiestaへ訪れるようになった。彼女の名前はマイというらしい。
僕はマイさんがお店に来てくれるのが少し楽しみになっていた。それは彼女とのお喋りとは別に服装が毎回違うところだ。ガーリーファッションという系統なのだが、毎回違う服を着ている。
今日もマイさんが来店してくれた。
明るいブラウンのルーズスリーブのタートルネックニットにホワイトのロングスカート、そしてブラックのメリージェーンシューズ。
「こんにちは、マイさん ご注文お伺いしますね」
「今日もいつものお願いします。もうすっかりあのチャイティーラテにハマっちゃいました!」クシャッとした笑顔の彼女は恥ずかしそうに口元を手で隠した。
「マイさんもうすっかり常連さんですね。すぐに準備しますね。」 いつものようにチャイティーラテを作ってお渡しする。
大学のレポートが溜まっているので今日の勤務時間は短くしてもらった。
「ヒカルくん、ちょっといいかな」
時計の針が16時を回り、エプロンを脱いで身支度をしていると店長が肩を叩いた。
「最近いっぱい来てくれてる女の子、実は昨日も来てたよ」
「そうなんですね、ここのチャイティーラテを好きになって常連にもなってくれて僕も嬉しいです」
店長は僕の言葉に何か言いたげに微笑んでいた。
「そうだ、帰るついでにその女の子にチーズケーキ渡してきて。実は発注ミスで少し多めに仕入れちゃってて、冷蔵庫にあるからヒカルくんもよかったら食べてね」店長はずっとニヤニヤしていた。
「じゃあチーズケーキお願いね。」
そう言うと店長はフロアのカウンターへ戻っていった。
店内を見渡すとマイさんはまだゆっくり本を読んでいた。ヒカルはチーズケーキをお皿に移し、マイのテーブルへと向かった。
「マイさん、これよかったらどうぞ。お店のサービスです」 ヒカルはチーズケーキとナプキンをテーブルに置いた。するとマイさんはまたあの笑顔で僕の顔を見た。
「ほんとですか?!ありがとうございます!すごく美味しそうですね!」
「喜んでもらえてよかったです。それでは僕は失礼します」 会釈をして帰ろうとした時、マイさんは俺を呼び止めた。
「ヒカルさん、もしお時間大丈夫ならちょっとだけお喋りしませんか?」
「全然いいですよ」
僕は少し迷ったがマイさんのことは興味があったのでお喋りすることにした。
時間はあっという間に過ぎていく。吉祥寺に住んでいることやファッションの学校に通っていること、ガーリーの系統が好きなこと、インスタのリールに出てくるおすすめカフェを巡るのが大好きで、今はこのお店にどハマりしていること。マイさんの話は聞いてて飽きなかった。彼女の性格はファッション通りで女の子らしかった。結局閉店時間の19時までお喋りをしてしまい、お互い口の中の水分がなくなり最後の方は少し掠れた声になっていた。
お店を出た後もまたお喋りをしながら一緒に帰り、マイさんを駅まで送った。次は3日後お店に来るらしい。
次回は僕もお客さんとして。また会える嬉しさと同時に少し危機感があった。
洋服、どうしよう…
その日は家に帰って夕食も食べず、学校の課題のことも忘れてそのことばかり考えていた。
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