街散策とゲームシステム1

〔主人公視点〕


「じゃあ、とりあえずゲームシステムからかなぁ。お姉ちゃんはDEで遊ぶのは……あ、ごめん!ダイブ装置の事で、そうゆうのは使ったことない?」


頭を下げて両手を合わせるニーシャ。いちいち行動が大袈裟な癖は治ってないなぁ


「うん、全く。なんなら見たことも無いかな。送られた物を見た時、ヘルメット型以外に形があるとは思わなかったからびっくりしたよ」


私が買おうと調べて出てきたのは頭に被せるヘルメットのような形をした物で、カプセルのような形のものはなかったので商品名を3回くらい確認したのは内緒だ


「えっ、と…ダイブ装置、英訳で【Dive Equipment】って言うから略してDEで、DEにも色々種類があるの。お姉ちゃんに贈ったのはカプセル型で、他にもアクセサリー型とかメガネ型とかチェアー型とかもあるよ!場所の問題とか携帯性とか性能の問題で一般的なのはヘルメット型が一般的かな。でもチェアー型もーーー」


人差し指を立てて嬉しそうに解説するニーシャ。その解説を聴きながらアクセサリー型とかどうやって使うのだろうか、と考えていると横から妙な視線を感じる。

顔を向けると、ニーシャ以外の全員が顔を引き攣らせて私とニーシャを見ていた。なんだ?彼がバイクに跳ねられた話なら鼓膜破れてても聞いてたぞ?


「…れの……収3年……ガクッ」


「あ、あなた……!、……。…モウイイワ」


「に、ニーシャ…お、お前アレが……、…。もういい私は考えるのを辞める…ほら、蘊蓄うんちく語ってないで話を次に進めろ!」


凸熊さんが項垂れ、ニールは遠い目をし、アールトさんが周りの様子に気づかずに喋り続けるニーシャの頭を掴んでガシガシと揺らす。

はて、なんだったのだろうか?


「う、うう…わかったよ…。えーと、そんな感じでDEには色々種類があるんだけど、従来の機器とは違って全て自分の意志だけで操作が可能なの」


ニーシャの説明により私の頭はだんだん傾いていく。Do you KOTO?


「ぅーん……実際にやってみた方がいいかなぁ。例えばお姉ちゃん、「インベントリを開く」って考えてみて」


どんどん傾いていた頭を戻し、ニーシャに言われた通りにする。「インベントリを開く」……ッ!


「おっ!わかったかな?全て自分の意思で操作できるっていうのはこうゆうこと。ちなみにこのインベントリっていうのは通称で、正式名称は持ち物欄になってるけど、大まかなイメージがあってるなら問題ないよ」


私の目の前にはいつの間にか青色で半透明の横向きの長方形の画面が浮いていた。中はいくつもの正方形の枠があり、いかにもインベントリという感じだ。

EG日本支部にあるAR(拡張現実)掲示板に似ている感じだけど、私が首を動かして視界を移動させるとインベントリもズレなく移動するから走ってても見やすいね

というか、私チュートリアルでいつの間にか弓を持ってたけどアレもこれと同じなのかなぁ


「別に操作が可能なだけでちゃんと指で触って操作もできるよ。こんな感じに」


ニーシャは人差し指と中指の2本を立て、そのまま真っ直ぐ斜めに線を書く。すると青色で半透明の縦の長方形が出てくる。


「この動作をすればいつでもどこでもどんなときも設定画面を出せるよ!あとさっきのインベントリとかステータス画面とかの機能は全部ここに入ってるから、分からなくなったらこれを出してみるといいよ!ログアウトももちろんここからできるよ」


私も同じようにやってみると青色で半透明の縦の長方形の画面が表示される。お約束どおりログアウトボタンがあるかをすぐさま確認すると、しっかりと、そしてデカデカとログアウトのボタンがあった。剣の芸術のデスゲームでは無いようだ……そもそもここは天空に浮かぶ黒い城ではないんだけどね


「まぁ、基礎の基礎はこんなものかな?あとはゲーム特有のシステムについてかな」


「OLO特有のシステム?」


「そう。ダイブ技術じゃなくて、フルダイブ技術が使われているOLOだけのシステムが3つあるの」


ニーシャは少し真面目そうな顔をして指を3本立てる。


「1つ目は、体の可動域が非常に広いということ。機種にもよるけど、今までのダイブ技術だと複雑な動きをゲーム内で行うことは難しかったの。だからシステムアシストとかで誤魔化してたんだけど、フルダイブ技術ではその制限が無くなったの。例えば……アールト、ちょっとペン貸して」


「ん、ああ」


ニーシャは思案しながら辺りを見回すとアールトさんからペンを借りて、左手でペン回しを始める。私にはその速さとあまりに自然な動きでどんな風に回していたのか分からないぐらいだが、ニーシャの言った事はよくわかった。


「ふふーん!…とまあこんな感じで、指先の複雑な動きとかができるようになったの。まぁ、その代わりにシステムアシストとかは減っちゃったんだけどね」


ニーシャは自慢げな顔をしながら、ありがとねと言ってアールトさんにペンを返す。


「2つ目は、転職システムよ。このゲームでは同時に1つまでしか職業に就けれないけど、特定の建物で代償無しに職業を変更することができて、職業によって行動にシステムアシストがついたり特別なスキルが使えるようになるの。ちなみに私は【勇者】で、善行や戦闘を行うとバフがかかるんだけど……ちょっと離れてね」


……色々ツッコミ所はあるけどとりあえず、職業はひとつに決めとかなくていいってことと、それぞれの職業は特定の行動にバフがかかるということかな。

頭の中で情報を整理していると、ニーシャはインベントリから真紅の鞘に収まったロングソードを取り出し、抜剣する。

そのまま真正面に構えて、左下から右上の斜め切り、右上から下に一閃いっせん、そのまま両手持ちに切り替えてからの溜めて一突き。


「おおー」


私は拍手する。剣術とかはよく分からないから今の動きが正しいのかとかは分からないけど、素人なはずのニーシャには出来ない動きだった。


「こんな感じのが職業のバフ。他にも確率を上げたり、ステータスが直接上がったりするものもあるよ」


ニーシャが構えを解いて剣を収めると、インベントリにしまう。ふーむ、なかなか


「で、最後の3つ目……これは私の予想みたいなものなんだけどね……このゲームのNPCは、私たちと同じだと思ってほしいの」


……なかなか、面白くなってきたかな?

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