第一都市ファスト
〔主人公視点〕
私が降り立った広場はグラウンドぐらいの大きさの正八角形をしており、真ん中には真っ白な1本の枯れ木が植えられている。
更にあたりを見回すと広場は水路に囲まれており東西南北の4方向にはプレイヤーがひしめく大きな橋がある。あ、ひとり水路に落ちた
私は枯れ木の下で琴音改めニーシャにフレンド申請をする。即座に承認されたのでメッセを送る。
『チュートリアル終わったよ。いま白い枯れ木の下にいる』
『おっけー!!じゃあ北の橋を渡って〜---』
ニーシャの指示に従いながら「初めの1歩広場」を目指す。ちなみにここは「バリアツリー広場」と書いてあった。
北の橋は他の橋よりも人が多く、水路に落ちている人も多かった。減るどころか増えてるけど、どこかに上がる場所はあるのだろうか?
橋を抜けると商店街のような場所に出た。食べ物などを売る露店、武器・防具やベッドのマークが描かれた看板が並び、様々な服をきた人達が声を張り上げて売買をしている。
私もなにか買い物したいけど、先に合流してからのほうがいいだろう。ニーシャが教えてくれるに違いない
そんな期待を胸に商店街を歩いていくと店や露店はだんだん少なくなり、住宅街へと姿を変えていく。年期を感じさせる家々は木造でありながらしっかりと建っていた。
そんなリアルな街並みを見ていると、「初めの1歩広場」と書いてある場所に着く。
広場は小さな公園くらいの大きさで真ん中に青々とした葉をつけた大樹があり、その下に炎を思わせる真っ赤なロングヘアーを揺らしながらそわそわしている少女、
それを見ながら短めの黄色い髪と大きな胸を震わせて笑っている悪戯っぽい雰囲気の女性、
木の根にどっしりと腰掛けた1番大柄で濃い茶髪を持ち熊のような印象を受けるもののその黒目から父性のようなものを感じさせる男性、
少女を見ながら気味の悪そうな表情を浮かべる灰色の長い髪を後ろで一纏めにした生真面目そうな細身の男性の4人がいた。なかなかキャラが立った濃い面子だ。たぶん、あの赤いのがニーシャかな
「おーい、ニーシャー」
私が歩きながら声をかけると、嬉しそうな笑顔を見せながら手を振ってくる。こんの可愛いやつめー
「ほ、ほんとに来てくれたんだ…」
「もちろん。私がお前との約束を破るわけないだろうに」
そう言って真っ赤な髪をかき混ぜてやると恥ずかしそうに顔を俯ける。すると、急に周りから笑い声を押し殺すような音がする。おやおや?
「クッ!ククゥ、あっはははは!!!!なんてこった!【
「ふっふぃッ!くふっふははは!!なによこれぇ!ただの小動物じゃない〜!」
「……この猪にこんな面があったとはな。ふっ」
……ああ、さらに俯いてしまった。たぶん顔が髪と同じくらい真っ赤になってる。
私は苦笑を浮かべながら、比較的落ち着いているメガネの人に尋ねる。
「ところで、あなた方はニーシャのフレンドでしょうか?」
「こほんっ…はい、そうです。私の名前はアールトと言います。そちらはニーシャのお姉さんでよろしいですか?」
目の前のメガネの人、アールトさんが気をとりなおすように咳き込み、口調を改めて私に尋ね返す。
「ええ、そうです。いつも妹がお世話になっております、姉のアリアです。よろしくお願いします」
私は深々とお辞儀をする。そして顔を上げるとアールトさんは珍妙なものを見たかのような表情をしていた。プルプル、ボクハ(以下略)
「……失礼ながら、ニーシャの姉がこんなに礼儀正しいとは思いませんでした。彼女は初対面でも、その、フレンドリーな態度でしたから」
私は再び苦笑した。ニーシャ色々と迷惑をかけて、アールトさんが後始末をするという構図がすぐ頭に浮かんだ。
「ちょ、ちょっと!お姉ちゃんに変なこと吹き込まないでよ!!」
少し落ち着いたのか、ニーシャは顔を上げて抗議する。
「ふんっ、事実だろう。我々がお前にどれだけ振り回されたと……」
過去を思い出し苦々しい表情を浮かべるアールトさん。最低品質の人工珈琲を初めて飲んだ人と全く同じ顔をしているのは笑うべきだろうか
「うぐっ…い、いやそれはなんというかまぁ…ッてほら!お姉ちゃん!お姉ちゃんに街案内しなきゃ!こんな話してる場合じゃないよね?ね?」
あ、逃げたな。この場にいる全員がそう思ったが、目的を思い出したのかここで追求するのは無理だと思ったのか、アールトさんは盛大にため息を吐く
「…いいだろう。ではアリアさん、まずは我々の自己紹介からさせていただきます。私は【希望の聖剣】というクランで副クランマスターをつとめています。以後お見知りおきを」
「は、はい…こちらこそ」
アールトさんは右手を左方付近に当てて頭を下げて1歩下がる。私もそれに応えて軽く頭を下げると、悪戯っぽい女性が1歩前に出る。
「同じクランに所属しているニールよ、硬っ苦しいのは好きじゃないから呼び捨てでいいわ。よろしくね」
「…分かりました。よろしく、ニール」
ニールさんは軽く手を振りながらこちらに微笑む。そして熊のような雰囲気を持つ男性が立ち上がる。
「同じく【希望の聖剣】に所属してる凸熊だ。
「ええ、よろしくお願いします」
凸熊さんは体格からは想像できないくらい丁寧に自分の名前について教えてくれると、手を出して握手を求めた。もちろん私も応じる。
「そしてぇ…私が【希望の聖剣】クランマスター、ニーシャである!」
そう言って両手を腰に当ててあんまり無い胸を反らすニーシャ。私は目を丸くする。
驚いた。妹がクランマスターとは思わなかったのだ。
「と言っても私達とあともう1人しか居ないから、そんな大きなとこじゃないんだけどねー」
「それでも十分すごいじゃないか!相性の良い仲間とも出会えたようだし、大した先輩だな」
「ふふっ!じゃあ今日は先輩として、後輩にいいとこ見せないとね!」
ニーシャが笑いながらそう言うと、アールトさん、ニール、凸熊さんも同じように笑う。それは妹がこのゲームをどうしようもなく楽しんでいることを示していて、そこに私を誘ってくれた事がとても嬉しかった
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誠に申し訳ございません!(土下座)
今月はあと1、2話くらいは投稿したいと思っていますが、あんまり期待しないで待っていてくださると史上の喜びでございますぅ……
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