キャラクリ

〔主人公視点〕


翌朝。


私は早めに昼食を終えダイブの準備をする。

ダイブ装置を引っ張り出してきて、コードを差し込み、電源をつける。あとは水とかを…


ピロン


ん?何だろうか?……琴音からメールからのメールのようなので、ウイルスバスターにかけてから確認する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

宛先:****

差出:☆☆☆☆

題名:OLOで待ってるよ!

キャラクリエイトとチュートリアルが終わったら私にフレンド申請してね!(私の名前はニーシャだよ)

「初めの1歩広場」で待ってるよ!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


合流のお誘いだった。初めの1歩広場がどこかは分からないが、まずはダイブしてからだろう。……うん、準備は完了だ。



「…ダイブ開始」


《ダイブ申請を確認。簡易スキャンを開始》


《…完了。問題は見られません》


《ダイブを開始します》


若干明るかった装置内が完全に暗くなると、私の意識はどこかに飛ばされるかのように消えた。





次に目を開いた時には宇宙を思わせるような空間に立って…いや、浮いていた。

周りにはタブレットのようなものと人型のマネキンみたいなのがある。


すると何もない空間から1つの真っ黒な球体が出現した。


「こんにちは木佐 有華様、私はOll Life Online運営管理下のサポートAIです。お好きな名前でお呼びください。」


「じゃあアイさん」


「了解しました。では、私はAIのアイです。」


どうやらサポートAIのようだ。反射的にアイと名ずけてしまったが、まあいいだろう。今後何回も会うとは思わないし。


「木佐 有華様、最初にキャラクタークリエイトを行ってください」


「はい、分かりました」


では、一生モノであるキャラクリといこう。ここでゲームでの「新しい人生」が決まると言っても過言では無いのだから集中しなくては。


「では、こちらのタブレットから容姿・種族と初期のスキルをお選びください。容姿の全体像はこちらのマネキンから詳しく確認できます」


と言ってイアさんがタブレットを起動してくれる。

……ふーむ、結構な数のプリセットとスキルがある。

モヒカン頭やらモーニングスターみたいなトゲトゲ頭があったり、ドデカいケツアゴがついてるものもあ……んん??オカマセットなるものがある?!……運営遊び過ぎでは??


種族の方は安定のド定番である。ドワーフ、エルフ、人間、トカゲ人、妖精の5種族のようだ。

人間以外の種族には特定の行動を行うと進化するというロマン溢れる設定がある!だが、一部の行動にはペナルティが掛かるようだ。人間は完全な器用貧乏、良く言えば万能型だ。この説明を書いた運営の人はギャグを求めなかったようだ。安心。


スキルは数え切れない程たくさんあるが、最大5つまでしか取れないようだ。

…そして容姿のプリセットより運営のおふざけ度合いが増している。


「鳥人間」

【効果】鳥のような人間のような鳥人間になれる


鳥なのか人なのかハッキリさせろ。


「ヒャッハー」

【効果】ヒャッハーを上手に言えるようになる


だからモヒカン頭があったのか……!


「☆YA☆RA☆NA☆I☆KA☆」

【効果】ヤル気が出る


………出さなくていい


「サラリーマン」

【効果】残業と聞くと心から喜べるようになる


誰かこの人休ませてあげて


「お楽しみいただけたようで何よりです。ですが、時間の方はよろしいでしょうか?現在サービス開始から30分が経過しております」


イアさんの言葉で私は我に返った。別に最速を目指している訳では無いが、他の人より早くこのゲームを楽しむに越したことはない。


「イアさん、ありがとう」


私がそう言うとイアさんは深々とお礼……のような行動を取った。丸いから分からない。

横道に逸れるのもここまでにしておいて、私は20分程使って容姿・種族とスキルを設定した。


【PL情報】

名前:アリア

種族:人間

性別:女

職業:---


スキル:目利き(Lv1)、弓技(Lv1)、影が薄い(Lv1)

魔力操作(Lv1)、闇魔法(Lv1)


持ち物:1000ポル


こんな感じになった。名前は有華の「か」を「あ」に変えてもじっただけ。「Oll Life Online」ということで色んなことをしたいので種族は人間。性別は女。ネカマは今のところしたいと思っていない。特別不自由だったりした事がないからだ。


スキルの方は戦闘を意識したものとなっている。敵対者を相手が認知出来ないところから矢で即死させる、というコンセプトだ。


主武装が弓な理由は、仕事でたまに動物とかを狩ることがあり、その時に機械弓を使うことが多いため使い慣れているからだ。使ったこともないような剣より馴染み易いと思う。


「悪路走破」という名前の走行補助スキルもあったが、同じ理由で捨てた。魔法を使ってみたかったしね。


そしてロマンの「魔力操作」と「闇魔法」。

まず初めに、どうやらこのゲームで魔法を使うのはちょっとしたコツが必要なようで、コツを分かりやすくするためにあるのが「魔力操作」というスキルのようだ。

「闇魔法」についてだが、効果があたりを暗くさせる程度のものしか使えないので、最初は補助として使おうと思っている。(というか補助的な使い方しか出来ない)

いつかは魔法らしい魔法が使えるようなので期待である。


そして期待(?)の容姿についてだが、もちろん世紀末にヒャッハー言ってバイク乗ってそうなモヒカン頭に………するわけが無い。

普通にリアルの姿を参考に少しいじっただけである。

黒茶色の髪は首まで伸びるショート。前髪は真ん中でしっかりと分かれている。

薄橙色よりやや白っぽい色のした肌で、顔は標準的な日本人より少しすらっとしている。

細目から覗く瞳は青みがかった黒色をしており、どこかキツい印象を受けるかもしれない。

胸の大きさはリアルよりも小さくして弓を引く時に邪魔にならないような大きさ。

身長はリアルと同じ165cmにした。正直大きくしようかと思ったが、差があるとゲームをするたび違和感を感じると思ったのでそのままにした。

最後にステータスと容姿をもう1回確認しておく。

……うん、文句の無い出来だ。


「キャラクタークリエイトはお済みでしょうか?」


ずっとフワフワしていたイアさんが丁度良いタイミングで声をかける。


「はい、終わりました。」


「ではキャラクターの同期を行います」


イアさんはそう言うとマネキンの足元に魔法陣のようなものを出し、マネキンがそれに段々と飲み込まれていく。

それと同時に私の体が足から形作られていき、マネキンが全て消えたと同時に私と私の体は完全に一体化した。


「おぉー……すごいね」


手を開いたり握ったりしても違和感なく動く。やはりカプセル型が最強なのか…?!他の型使ったことないけどね!


「キャラクターの操作に問題はなさそうですね。では戦闘チュートリアルに移ります。」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る