第15話 神殿を血で染める(※残酷シーンあり)
俺は自分の手を汚さずにタビーシア王女を消すことに成功した。
今までも奴隷や偽証人の女を口封じのために殺してきたが、それとは心理的な抵抗感がまったく違う。王女を間接的に殺したことで俺の中の何かが変わった。
俺にはもう一つやらなければならないことがある。デンゼーリ神殿と残りのトバチランド王族の処理だ。もう遠慮する必要はない。
ブタイッシュ王国近衛隊には「デンゼーリ神殿の場所を調査中だ」と言ってのらりくらりかわしている。近衛隊長ジョールズ・コニウェルは武芸オンリーの脳筋バカなので扱いは楽だ。ただし、いつまでも先延ばしにはできない。
俺はトバチランド王を軟禁している部屋に向かった。
王が俺の姿を見るなり抗議の声を上げた。
「話が違うではないか!トバチランド王家を尊重し、トバチランド人を保護すると聞いたから降伏したのじゃぞ」
俺は軽蔑の笑いを浮かべた。
「ご自身たちの立場が分かっておられないようですなあ。あなた方の生殺与奪権は私にあるのですよ」
俺はニヤニヤ笑いながら続けた。
「さあ、デンゼーリ神殿に案内していただきましょうか。王族すべてを引き連れてね。もちろん王家の女も一緒ですぞ」
「なぜ王家の女を連れていく必要があるのじゃ」
「いいですか、私は各地で頻発する反乱の背後にあなた方王族がいるのではないかと疑っているのですよ。別の場所に我らを誘い込んだうえで、トバチランド兵残党の手引きで王家の女が脱出する。そして本当のデンゼーリ神殿に行って龍王の封印を解く。そうすれば龍王の力でトバチランドの国土と占領軍をひとまとめにして焼き払うことができる。そういう策略ではありませんかね?」
「誰がそんな汚い手を使うものか!」
王は怒りを
俺たちはトバチリア城近くにある地下神殿に案内された。トバチランド王族の男女全員が後ろ手に縛られ、両側をブタイッシュ兵に警護されてぞろぞろとデンゼーリ神殿に入っていく。
デンゼーリ神殿は薄暗く不気味なところだった。
「……グォォー…………グォォー……」
かすかに龍王の
国王が説明した。
「その正面の祭壇に7本の短剣が刺さっておるじゃろ。その短剣にはトバチランド初代国王である大魔導士の魔力が込められておってな、それがいわば龍王を封印している鍵となっておるのじゃ。」
見ると、龍の彫像を囲むように7つの短剣が刺さっている。祭壇に小さい穴がありそこに短剣がささるようになっているらしい。なんとなく黒ひげ危機一髪を思い起こさせた。
そして、短剣は7本とも刺さっていた。トバチランド王が言った。
「だからなんどもブタイッシュに使者を
俺は封印の短剣に手をかけた。力任せに引き抜こうとしたがビクともしない。
次にありたっけの魔力を込めてみた。
「バチバチバチ……」
すさまじい音と光が生じる。
一瞬、トバチランド王族の女以外はダメかとあきらめかけた時……短剣は抜けた。
トバチランド国王が
「まさか信じられん。トバチランド王家の女以外にも封印の短剣を抜くことができるとは……」
俺は封印の短剣を次々引き抜き、5本の短剣を引き抜いた。俺の魔力レベルは99で、魔力量(MP)は無限だ。どうやら俺のチート魔力ならば、トバチランド王族の女とか1週間に1本とかのしばりは無関係らしい。
6本目を抜いたところで、王が悲鳴のような声を上げる。
「何をする気じゃ、やめろ!龍王が目覚めるぞ。何百万人もの命が奪われる!」
俺は国王に向き直り、端整な顔にきれいな微笑みを浮かべて言った。
「大丈夫ですよ、龍王を復活させる気はありません。私でも封印を解除できることが分かれば十分です」
俺は剣を抜き振りかざす。
そして残酷な笑みを浮かべて王を見下ろし言った。
「あなた方はもう用済みだ」
王を斬りつける。
「うがっ……ぐっ…………呪われろ……悪党め……」
トバチランド国王は死んだ。
俺は命令を下す。
「お前たち、
王妃が叫んだ。
「こんなことをして許されると思って言うのですか!あなたたち!」
「トバチランド王妃、お命を頂戴します!」
王妃はブタイッシュ兵に斬り殺された。
王太子も叫んだ。
「今ならまだ間に合う、トバチランドとブタイッシュは……」
「寝言は寝てから言え、平和の敵め!」
王太子も兵士に殺された。
小隊長格の男が怒声を上げた。
「王女と王子も将来の災いの種だ。女子供だからといって容赦するな!全員殺せ!一人残らず抹殺しろ!」
神殿は怒声と悲鳴と断末魔の地獄と化した。
神殿の床は赤く染まった。
トバチランド王家は全滅した。
俺は声を張り上げた。
「トバチランド国王は愚かな策略を立てた。我らをこの場所に誘い出したうえで龍王を復活させ我々を葬ろうとしたのだ。そしてトバチランドの民ごと占領軍を焼き払おうと企んだ。だが我々はそれを阻止した。平和は守られたのだ!」
兵士たちが血濡られた剣をかざして
「ブタイッシュ王国万歳!」
「エリンドン大公閣下万歳!」
トバチランド王家の抹消は終わった。
神殿を退去しながら俺は誰にも聞こえないよう独り言を言った。
「まもなくこの惨劇はブタイッシュ王家にも……いや、この世界のすべての王家に降りかかることになる」
さらに、俺は
「俺はもうクズなどというものは
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