ボク、ヒキニートになる まる
あの日から1週間が経った。彼女の「友達になりたい」発言は本当だったらしく、あれから一切敵対行動を取るどころか世話までしてもらっている。
「やばっ!なにこれうますぎじゃん!」
ちなみに今食べてるのは黒毛和牛。レイちゃんと一緒に焼き肉パーティーを楽しんでいる。
あ、レイちゃんっていうのは神崎玲子のことね。話してみると意外にも優しい女の子だったから、あだ名マスターと呼ばれているボクがあだ名をつけたのである。
「玲子さん。お届け物っすよ!にしても何スカこれ?炎天館スコッチ?」
「おお!!スコッチ届いたの!?やったぁ!!」
「よかったね。ユウ」
彼、
かくいうボクもめっちゃ遊んだ記憶がある。
「ユウ、スコッチって何?」
「簡単に言うと最新型ゲーム機」
未だに殺意マシマシな目で睨みつけてくる響さんを尻目に、ボクはウキウキな気分でダンボールを開封していく。
なんと約半年ぶり。とても楽しみなのだ。
「ゲーム……?花札とかには見えないけど……」
「花札って、機械知らない人?」
顔を見ると、冗談を言っている顔ではなかった。これは深刻だ。
ゲームイコール花札となっているレイちゃんの頭をアップデートすべく、ボクは早速ゲームを起動する。
コントローラーと繋げつつ、無料インストールできるゲームを入れる。
「はい、これ持って」
「? うん」
未だに不思議な顔を浮かべている彼女にコントローラーを渡してプレイを始める。
「まあ、習うより慣れろ、だよ!」
⭐︎⭐︎⭐︎
「え?強過ぎじゃない?」
「そう、かな?」
あれからやり方とかを教えながら数時間。たったの数時間でボクは敗北した。
「いやまあ確かに? このゲームは10時間ぐらいしかしてなかったからね。仕方ないよね」
本番はこれからである。ゲーム機と同時に注文していたカセットを入れて、起動する。
「900時間の経験ってものを見せてやるよぉ!」
「ん、期待してる」
すました顔を悔しさで歪めるのが楽しみである。
⭐︎⭐︎⭐︎
「あの、もうそろそろやめませんか?」
「もう一回」
「それ30回聞いた」
あれから数時間。よほどボクに負けてるのが悔しいのかめっちゃ再戦挑んでくる。正直精神的疲労がすごい。
断っても首チョンパとかはないだろうけど、年下にねだられたら流石にやめれない。そろそろわざと負けてやめようかな。
「わざと負けたら許さないよ」
「アッ、ハイ」
⭐︎⭐︎⭐︎
「玲子さん!そろそろ仕事の時間ッスヨ!」
「そう、わかった」
「やっと、やっと終わった……」
もう覚えていないほど再戦を繰り返して死にそうになっていたボクを助けてくれたのは響さんだった。
ありがとう
⭐︎⭐︎⭐︎
レイちゃんが帰ってきた後は、トランプから始まった。
____神経衰弱
「いやなんで最初のターンで全部合わせられるのさ」
「? これは霊力を使って裏の絵柄と数字を当てるゲームなんでしょ?」
「そんなわけあるかぁ!!」
_____ババ抜き
「一切顔動かないじゃん。え、もしかしてつまんないの?」
「ううん、楽しい。けど……。あ、こっちだね。上がり」
「嘘だろ……っ!?」
_____スピード
「そういえばスピードってはやぶさとも言うらしいよ」
「そうなんだ」
「そんなことよりも本当にやるの初めてなの?ボクまだ手元に18枚トランプ残ってるんだけど……」
______ポーカー
「ボク、ロイヤルストレートフラッシュ初めて見たわ」
「そう」
「イカサマとかは……。あ、してない。はい分かりました」
⭐︎⭐︎⭐︎
「さーて、全てに置いて負け越したボク怖いものなんてないよ!!今度は双六行ってみよー!!」
「そうね。でも、そろそろ寝ないと身体に障るわ。今日はもう寝ましょう」
「あ、はーい」
時間を見てみると、もうすでに夜の12時を回っていた。この時間帯は幽霊のボクならともかく彼女にとっては寝ないといけないのだろう。
「じゃあ、ボクのベッドはどこで?」
「? ここで一緒に寝るんじゃないの?」
「ココデ=イッショニネル?」
何だろう?どこかの国の宣言かなんかかな?ココデ=イッショニネル。
ココデイッショニネル。
ここで一緒に寝る。
「ここで一緒に寝る!?」
「? 何か不思議なこと?友達は一緒にお泊まり会するって本に書いてあったのだけれど」
「いやいやいやいや」
確かにボクの今の体は女の子の幽霊だけれど、流石にそれはいけない気がする。
「でも、他に寝るところなんてうちには無いわよ」
「いや、幽霊って別に寝なくても活動できるし」
そうなのだ。幽霊は寝なくても活動できる。ゲーム中では描写されていなかったが、半年間この姿でいて気づいたことだ。
「じゃあ、ボクは1人でトランプの練習でも……ちょちょちょ引っ張るな引っ張るな。分かったよ、一緒に寝るから!って力強!!」
⭐︎⭐︎⭐︎
「友達というのは休日にどこかに遊びに行くらしいわ」
「付き合えと?」
神経衰弱の最中、ある本を取り出しそんな言葉を吐く彼女。つまりは遊びに行きたいのだろう。まあボクに拒否権はないから付き合うしかないのだけれど。
「そう、目指すはエオン。クレーンゲームとかメダルゲームというのがあるらしいわ」
「メダルゲームにクレーンゲームか……」
どちらももう数年もプレイしていないゲームだ。やりたいかやりたくないかで言ったらやりたい部類だろう。
「じゃあいつ行くの?流石に今からとかは……」
「今からとかはどうかしら」
「無いわけないよね。よし!今から行こうか!!」
幽霊のボクに対する「日中一緒に出かけよう」宣言はなかなかに勇気があるな。
しかし、そうと決まればお金だけ持って……。いや、そうじゃん。金ないやん。
「お金なら私が出すわ。安心して」
「いや、これを換金してくればいいだけだから大丈夫だよ」
「? でも……」
「友達ならお金の貸し借りはあまりしないほうがいいからね。ちょっと待ってて」
そう言い捨てるとボクは、手にした霊昌を換金するために走り出した。
いつの日かここから離れて暮らすことになっても、あまり借りはない方がいいからね。
⭐︎⭐︎⭐︎
「このアーム、力が弱すぎると思うのは気のせい?」
「気のせいじゃないよ。こういう台は霊力でアームの力を強化すれば……」
「それはダメだと思うわ。ズルになってしまうじゃない」
「神経衰弱の時にズルしたのを貴様もう忘れたか?」
⭐︎⭐︎⭐︎
「このメダル。100円で20枚なのね。レートがすごく高いわ」
「普通の人はそこに目をつけないんだよなぁ」
「じゃあ、まずはあの台から始めるわよ」
「まずは、って全部制覇する気か?」
【女子中学生な幽霊としてts転生したボク、祓われたくないので戦います まるべー @marub
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