彼女は僕の推し、僕は彼女の推しに。

駿貝 太陽

第1話、

それは一目惚れだった。

吸い込まれるような瞳、太陽のように眩しい笑顔、そして何よりもステージ上で魅せている完璧なパフォーマンス。

むしろ好きにならない方がおかしな話だ。

中学3年生の春、一人の少年は同い年のアイドルに恋をした。


人気アイドル松永ゆかり。

中学3年生にしてアイドルグループ、ストロベリーガールズの不動のセンター。

俺だけでは無くかなりの数の人間の推しであろう。

この話を聞くとよくあるアイドルオタクのガチ恋勢みたいだって?

まぁ、その通りではあるけど恐らく僕は少し違うと思う。。。



というかそう思いたい。


何故かって?僕が他のガチ恋勢と違うのかというと、そこからの行動だった。

初めて見に行った彼女のライブが終わって自宅に帰って直ぐに、芸能プロダクションのオーディションサイトを開き応募したのである、

彼女と対等な立場になれるようにと。



我ながら中々の行動力だったと今でもよく思う。

因みにその時のオーデションの流れとしては、一時審査が書類審査。

まずこれを通過しないと話にならない。

連絡が来るまでの数日間ドキドキだった。

________

プルルルル、プルルルル。。


『私、アリシア事務所のものですが倉本大河さんのお電話でお間違えないでしょうか?』

その時がついにきた。

はい、と僕は答えた。

『この度はご応募して頂きありがとうございました。 審査の結果一次審査通過のご連絡をさせて頂きました。。』

その時俺は小さくガッツポーズをした。

あまり自信は無かったが通過する事が出来た。


その後二次審査は対面での面接を経て

何とか合格する事が出来た。。。



そしてあれから時は経ち2年後、俺は高校2年生になり今もアリシア芸能事務所の所属として有名になれるように切磋琢磨している。

昼は高校に通いながら夕方からレッスン、そして最近ではcmなどのちょい役など少しずつ仕事が貰えるようになった。


『はい!オッケーです!これでクランクアップです、皆さんお疲れ様でした。』


『『『お疲れ様でしたー!』』』

今日も仕事を無事に終え帰路に着く。


『ようやく仕事が貰えるようになって来たな、あれから2年やってcmのちょい役か。。』

そう思いながら日課である俺の推しチェックをする為スマホを開く。

実際のところ2年でちょい役でも貰えるのはかなりありがたい話である。

4年、5年やっても一切仕事を貰えない人だっているこの世界、とても厳しい世界である。

『まぁ、今はとり取り敢えず俺の推しのニュースをっと、、、、え?』


いつものようにニュース記事を見ていると目を疑うような記事が見つかった。


"人気アイドル松永ゆかり、電撃引退を発表!

今度のライブでラストステージか?"


『嘘だ。。。俺のゆかりんが。。』

俺はショックでその場に立ち尽くした。

_________


ゆかりんはその後芸能会を引退し、テレビから姿を消した。。

俺はと言うと、その事があまりにも衝撃的過ぎて暫くの間レッスンと仕事もろとも休んでいた。。


あれから数日後、俺は学校にいた。

『おい、倉本いい加減に元気だせって、最近ようやく仕事貰えるようになったのにそんなんじゃ何処かにいるゆかりんに顔向け出来ないんじゃないのか?』


そう言って来たのは中学からの親友である鳥宮雄二。

俺がゆかりんを好きになるきっかけになった男である。

『そう言われても、、頭では分かってはいるんだよ、、でもな気持ちが追いつかなくって。。』

あれから一週間たった今日、俺はまだその事を引きずっていた。

何とか仕事には復帰したものの気持ちが入らず上の空。

現場でも怒られてばかりだった。

『はぁ〜、俺何の為に頑張ればいいんだろう。』

『まぁそう言うなって、ゆかりんが引退したとしてもこの2年間お前が頑張って来たのは間違いないんだからここで辞めるのは勿体無いって、頑張れよ!』

『うん。。。』

俺は小さく頷いた。

『こんな事男の俺に言われても嬉しく無いだろうけど、俺は好きだぜお前の事!お前は俺の推したがらな!』


『うわぁ〜ん!とりえも〜ん!』

俺はそう言って鳥宮に抱きついた。


そのタイミングで丁度HRの始まりを告げるチャイムが鳴った。


『はいそこの二人、毎日のように男の同士でイチャイチャするのは構わないが早く席に着けー』


『『へーい』』


担任教師である宮下先生が俺達にそう言うとクラスから笑いが起きた。

ここ最近では定番の流れである。

宮下先生は若めの女性でノリもいい事もあり生徒達から宮ちゃんの愛称で呼ばれている。


『よし、皆んな席に着いたないきなりだか今日から新しい仲間が増えるぞー』


宮ちゃんがそう言うとクラス中が騒めいた。


『宮ちゃーん転校生は男子?女子?どっちー?』

一人の男子生徒が興味本意でそう言った。


『喜べ男子ども、女子だ。』

宮ちゃんがそう言うと男子生徒からの歓喜の声が上がった。


俺はと言うとゆかりんにしか興味がない事もあり冷静に前の席に座っている鳥宮に話しかけた。

『なぁ鳥宮、この時期に転校生って珍しいよな、しかも夏休み前のこの時期に。』


『確かにな、まぁ何かわけありなんじゃね?』


などと話していると宮ちゃんが外にいるらしい生徒に声を掛けていた。


ガラガラガラ________

扉が開く音がしたのでクラス全員が扉に注目していた。


俺も一応どんな子なのかは気になってはいたのでクラスメイト同様視線をそちらに向けた、、、のだか次の瞬間信じられない事が起きたのである。


『え、、あれって、、、嘘、、』

『絶対そうだよね?』


クラスメイト達がさっきとは違った感じにざわつきだした。


俺はと言うと、、、

『ゆかりん、、、、』

『えっ!!ゆかりん!?』


俺は思わず立ち上がった。

そうそこには一週前、芸能界から姿を消した筈のゆかりんが居たのであった。。。

























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼女は僕の推し、僕は彼女の推しに。 駿貝 太陽 @tsuinz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ