19

「鈴野さん、鈴野さん大丈夫?」

「‥‥‥え?」

「何と言うか、心ここにあらずって感じよ。最近忙しい?」

「‥‥‥あ、まあそうかもしれないです」

「ごめんなさいね。忙しいのに、いつも私つまらないことでラインばっかりして」

「いえ」

 いつもの非常階段で、梨々花が眉尻を下げていた。以前なら事もあろうに梨々花の前でぼんやりするなんて、得体の知れない存在の前で眠る行為に等しかったから絶対にやらなかったし、出来なかったが、今はそういうことを邪推している余裕も無かった。ここ数日、なぜか寝不足だった。カフェインを抜くために白湯を何杯も飲んでベッドに入っても、決まって早朝に目が覚めてしまう。だから思考を節約しようと思ったのだ。さっきの梨々花の心配は演技ではなく、本気で心配している顔だった。梨々花の建て前は本音が濃縮還元されたもので、その先には純度1%であれ本気の心配がある。これまでの関わりで、そう思わないと、私の気が晴れないという事情はあれど、そう思うことが今は得策のように思えた。


 あの夢は現実でもしばらく醒めなかった。身を起こした時に、自分が汗びっしょりであることに気づき、樹の腕からもう一度逃れるために身体を捻って、枕元の間接照明を付けた。夏の網戸に群がる小虫のように蠢く光の点滅のバグに得体の知れない恐れを感じながら、息を整えた。この小虫は実在すると思った。私にしか見えない小虫が、樹の身体中にびっしりと這っていた。発光する小虫の巣になった樹の肌はなぜか汗ばんでいた。今日はセックスをしなかったのにこんなに汗ばんでいるのはなぜなのか。誰にも分からなかった。少し動く度にお互いの汗が混ざるのか。二人分の汗の臭いが漂った。驚くべきことに樹は、闇の中でもう起きていた。眉間に皺を寄せて心配そうな顔をしていた。

 しばらくして、「お前うなされてたぞ」と樹が言った。揺すっても起きないし、悲鳴まで上げたからどうしようかと思った。うなされてた? 私はごめん、と詫びて、彼と更に距離を取った。ああいう夢の後だったから、一人で眠りたかった。

 大丈夫よ、と言って、樹に背を向けようとした。率直に言うと、あれが夢だということを差し引いても、樹の顔を見ると夢の中のフラッシュバックが自動的に始まりそうだったから、それが嫌で、もう直視したくなかったのだ。寝返りを打ちながら思った。あの子供が起きる前に先手を打っていれば私はもっと楽に逃げられただろうかと。そしたら関わらなくても良かっただろうかと。

「あのさあ、芙由」

 樹が私に声を掛けた。目を閉じて聞こえない振りをしたつもりだったが、樹は独り言でもいいと思ったのだろう。そのままこう続けた。

「俺お前の子供が欲しいわ」

 今、私の頬にある傷は、その後の会話で出来た傷だ。後に私が酷い言葉で樹に抵抗し、樹がそれをでたらめな罵詈雑言と受け取った結果、この傷が出来た。あの時の樹は理由を求めていた。なぜ自分がこの状況でこんな立場に追い込まれるのか、全然分からない。寝ている所を夜中に私に起こされて、逆に私を励ますために、一世一代の最高にらしくないことを言った自分が上滑りした理由を、今すぐに納得出来る形で知りたい。樹は仕事で疲れていたのだろう。それをすぐに聞かないと眠れないと思ったのだろう。だから私が、樹の発言を肯定する態度を取らないのがなぜか。その場で全部正確に知りたがった。明日理由を話すから寝かせてと、言うのは彼にとってはごまかしで、答えにはならなかった。何度もしつこく答えを求められて、私は背中を向けたまま声を荒げた。いつもだったらちょっとびっくりした後で、呆れたようにお前はガキかと笑って引くのに、あの時の樹は絶対に引かなかった。こっちぐらい見ろよ、と両肩を掴んで、暴れて抵抗する私を力任せに向かい合わせにさせた。

 樹の眼の奥に、自尊心の高ぶりのような光を見た。それは見覚えのある光で、私が昼間、必死で関わりを避けてきた人間達が持っていたのと同じもので、それを見た途端に何もかもが嫌、率直に言えば生理的に無理になった。だから私は全てを教えた。そうしなければこの人が心の底から納得して、私を永遠に解放してくれないと思ったからだ。

 結論として、全てを話す前に終わった。颯真の存在。彼との出会い。そして現在進行形のセフレとしての関係までを話した所で、樹の怒りは頂点を迎えた。樹は私の頬を発作的に張り飛ばした。私の身体に増えた傷。初めての頬の傷が出来た。

正直、ほとんど痛くは無かった。殴った樹も、殴られた私もしばらく放心状態になって黙っていた。先に口を開いたのは樹だった。すぐに別れたいということ。必然的に同棲も解消したいということ。ここは元々俺の部屋だから出て行って欲しい、最低限の温情として、出ていくまでの猶予期間は設けてやるから、以後の関わりは必要最低限にしたいということ。

 樹は床を見ながら話していた。不意に目が合うと、血走った目で睨まれた。何で俺がこんなことを言わなきゃいけないんだと、目が言っていた。理不尽だが、その理不尽がなぜ起こったのか、私にも説明が出来ないと言ったら、樹はまた私を殴るだろうか。ならそれでもいいと思い、実行して、また殴られた。

 翌朝、一言もしゃべらずに向かい合って、買い置きしていたコンビニのパンで最後の晩餐のような朝食を取った。樹は玄関のドアを閉める寸前に、狂人を見るような目で私を下から上まで嘗め回すように観察した。そしてはん、と鼻白んだ笑みを浮かべると、一秒も同じ空気を吸いたくないと言うように、もう一度鼻で笑った。「お前には心底失望した」と言って、乱暴に鉄のドアを閉めた。隔離された刑務所の扉のような響きが、私達を永遠に隔てた。

 あの朝も会社に行かないという選択肢は私には無かった。いつもと同じようにいつもと同じ仕事を淡々とこなしていれば、日常に開いた穴は塞がる、もしくは新しい日常が向こうからやってくるというのが私の処世術だった。

 樹と約束した期限は一ヵ月後だった。同棲生活で増えた貯金はこの日に使うためにあったのだということを、私は当たり前のように受け入れた。

 私の傷を初めて見た時の、はすみさんと二葉ちゃんの見開いた目が今でも忘れられない。そんなに驚くほどのことではないのに、スケボーで派手に転んだようなものなのに。いつものことなのにあんなに驚くというのは、やっぱりうちの部署の仕事が暇だからなのか。

 現に梨々花は何も言わない。思えば梨々花は最初に私と会った時から、心の一部で私の相手をしている所があった。心ここにあらずで意識をどこかに飛ばしている。私が会話しているのは梨々花の抜け殻で、だからこそ気後れせずに友達もどきのように話せているのかもしれない。


「‥‥‥仕事、大変?」

「え?」

「総務の仕事、大変?」

「‥‥‥まあそれなりに」

 そう、と言って、梨々花は黙ってしまった。俯いて、何事かしばらく考えていた。また心をどこかに飛ばしている。顔に垂れたダークアッシュの髪を思い出したように耳に掛けた。この前のものと同じ、みずみずしいフローラルの香りが私の鼻先をくすぐった。

「総務の仕事は好き?」

「あまり好きじゃないですけど、仕事ですから」

「‥‥‥じゃあ別の仕事してみる?」

 梨々花は顔を上げると、秘書の仕事に興味はないかと言った。能面のように無表情な顔が私を見た。職業人としての梨々花の顔をこの時初めて間近で見たように思う。それは役員達が使役する式神的な、至近距離で見ることが出来たらそれなりの情を解せるであろう顔ではなく、社員を鼓舞する顔の裏側の、冷酷な心を持った、本物のアンドロイドとしての梨々花の顔だった。見開いた眼差しの奥には、愛玩という言葉を寄せ付けないほどの冷ややかな闇があった。己のその姿を肯定しているのか、その本当はどこを見ているのか不明確な、義眼のような眼差しからは分かりかねた。

私は誰彼にでも声を掛けているわけではない、と梨々花は続けた。一段低い声で、私を一応は建設的な話をするに値する対象と認識して、事務的に言い含めるように話す梨々花の姿には、何かが帰依したような、重々しい雰囲気があった。その言葉自身が、梨々花の見ることが出来ないプライドの核のように思えた。梨々花はまた床に目を落として、私の知らない神からの預言を話すようにして語った。興味がなかったら断って構わない。でも総務の仕事が好きじゃないのなら、秘書の仕事は今のあなたのスキルを活かせるし、確実にステップアップになる仕事よ。

 それに、あなたは私達と根底では似ている所があると思う。意味が分からなかったから顔を上げると、大真面目な顔で言葉を繋ぐ梨々花と目が合った。数日前の樹の、蔑むような眼差しが頭に浮かんだ。ああされて当然だと思うのに、あれが職場の人間もどきの眼差しと同じだと認識して冷めていく私の思考を、誰にも言葉で説明出来ないのが気持ち悪く、ふがいなかった。この痛みの根源の、どこにあるのか自分では分からない傷跡のことを思った。もうこれ以上傷つけないで欲しい。無気力な目を向けて対抗したが、効果がない。梨々花は正気なのだろうか。もし正気だとしても、その正気は間違っている。

 答えがイエスなら、再来週からでも先行で私の下に付いてOJTを受けて欲しい。人事異動は月初に後出しで出す。

 梨々花が見た夢の話をされているようで、語られていること全てに実感が無かった。「そんなことが可能なのですか」と他人事のように私は口走った。

 梨々花はその言い草が気に障ったのか鼻で笑った。「私、秘書課のトップ」と言ってけん制するのもバカらしいと思ったのか。「あの総務部に未練でもあるの?」と言いたげな様子で私の目を、ペットにするのを決めた野生動物を眺めるようにじっと見た。

 目の前に食べられない果物をたくさんぶら下げられて、おいしいから食べな、と言われている気分だった。それは本当はすごくリアルな果物の形をした蠟燭で、口に入れたらまずくて吐き出すのだ。断るしかない。だって出来る気がしないし、あの人間関係の中で自分の居場所を構築出来るとも思わない。たとえ梨々花がフォローするようなことがあったとしても、自分がそれに感謝して努力出来るとも思わなかった。出来ないのが分かった時点であがきにあがいて出来るようになりたいとも思わないし、そうすれば出来るようになるとも思えない。

 例えるなら、夜空に輝く星を一つ、手のひらにあげると言われても、扱いに困るというようなもの。絶対に火傷しないから、と言われても、全く信用出来ない。

「自分でも分かってますが、根が華やかなタイプではないので、仕事自体に馴染めないと思います」

 梨々花はくすりと笑った。

「秘書のイメージに怯んでるの? それなら秘書課の中で秘書的な働き方をするのはどう? 例えば秘書課の中の内勤扱いで、他の秘書の子達の依頼事を引き受ける、事務みたいな働き方だったらどう? 現にうちの課でもリモートでそういう働き方をしてる再雇用の方もいるわよ」

「今の秘書の人達と仲良く出来る気がしません」と私は言った。

「皆さん気が強そうなので」

「そんなことないわよ。例えば誰が?」

「花梨さんとか」

「‥‥‥‥ああ、あの子は大丈夫」

 大丈夫な訳ないじゃん。自分がチートの立場だからって言って、そんな風に断言するのは無責任だ。花梨のあの性格を知らないはずないだろうに。あるものをない、と断言するのは究極の無責任だ。私は梨々花の感受性を買い被っていたと思った。やはり梨々花は鈍い。庶民の前で現実逃避の魂飛ばしをやりすぎて、本当の人の痛みが分からなくなっている。

「あの子のことが怖い?」

「‥‥‥別に」

「‥‥‥凛ちゃんはね」

 梨々花は何かを思い出したように、またくすりと笑って自分のスマホを取り出した。先週発売されたばかりの最新型のiphoneが、血色の良い細指の中で弄ばれた。限定色のプロダクトレッドは、梨々花の口紅の色に似ていた。

「こういう子よ」

 見せられたのはスマホのカメラで撮影したと思われる写真だった。視界の隅に入った時から、不吉な予感がしていた。妙に生白い写真。視界に入る度にその違和感が強まっていき、最後にピントが合った時にそれは瞬時に臨界に達した。脳が濁流に流されるような違和感を覚えた。何が映っているかを認識した途端に、心が悲鳴を上げ、吐き気がこみ上げた。

 端的に言えば、それは乱交の現場写真だった。いかがわしい週刊誌に載っているあの白黒写真のオリジナルカラー版。異界の入り口を思わせる不吉なポラノイドは、撮影者自身も参加していたからか、若干手ブレしていた。が、それでもそのブレがモザイクにはなり得なかったし、むしろそのブレが人間的なリアリティを与えていた。それを視界に入れた人間の好奇心を例外なく剥き出しにして吸い寄せて、養分にしているかのよう。その意味で、それ自体が一個の生き物のようだった。限りなく醜悪な汚物のように見える生き物。

 どこかのホテルのキングサイズのベッドの上で、全裸の人間が複数、絡み合っている。咄嗟に視線を逸らした後で落ち着いて数えてみたら四人だった。こちらに顔を向けているのは一人だけ。女。それを認識した段階で、戦慄を覚えた。まるで梨々花に頭からゆっくりと氷水を掛けられているような。気が付いた時にはその顔を凝視していた。花梨だった。

 反射的に視線を下げた。グラビアのように美しい下半身が、そこにはあった。

 皮肉なほどきれいな身体だった。色白で、巨乳で、くびれがくっきりとある。肌には一点の痣も傷もない。顔と身体のバランスだけが、素人じみていた。その身体のバランスが私は間違いなくあの花梨です、と言っていた。彼女の味方はどこにもいなかった。自分の身体にすら、自分が感知し得ない所で完全に裏切られている。余りにも残酷過ぎる現実に悪寒が走った。

 昼間の光の下では誰もが憧れる身体。なのに場所が、終わっていた。

 なぜ? と聞いても、答えてくれる人なんていない。

 もう見たくない。でも、梨々花の方を見たら終わりだと思ったから、内心必死で瞬きを繰り返して写真を凝視した。こういう写真を初めて見るけど動揺していない、サイコパスに見える不気味な人間を装おうとした。私と同じように、花梨の身体も写真の中で藻掻き続けていた。身体だけが瀕死の虫みたいに、永遠に足掻き続けていた。バカな頭をここに残して、自分達だけテレポートして逃げたかったのに、出来なかった。この身体は本当は死にたいのに死ねないんじゃないか。死にたいのに、写真に撮られたことで逆に不死身にさせられた。他人の視線に切り刻まれては生き返る運命が生まれた。他人に見られる度に、母体の花梨が生き延びるためにその存在を忘れたとしても、逃げ遅れた身体だけ何度も何度も。

 実際花梨のこの身体のために私は涙を流せると思った。だってひどすぎる。明らかに無駄なのに、もう誰も助けられないのに。こんな所で終わりたくないと、断末魔みたいに。

 原因不明の頭痛を覚えた。たぶん心身性のものだろう。スマホを少し離して画面を俯瞰するように見た。自衛のために、もっと批判的な観察が必要だと自分に言い聞かせ、瞬きを意識的にすることで画面から出る完全な異物の身体の情念を抑えつけた。しばらくすると、花梨の身体の叫びのノイズが弱まった。これも一種のセカンドレイプだった。が、ようやく、やっとこちら側に、もっとちゃんと細かく観察する余裕が生まれた。

 意志を捻じ曲げられた花梨の身体は、薄暗い照明の中で、自らの性行為をカメラに見せて金を稼ぐことを安易に選んだAV女優のような、淫靡だが白痴で、それゆえに絶望的に哀しい雰囲気をまとわされていた。だが、スタイルは最高に良いが、素性を知った後では女が憧れることはけしてないという意味で、概念上はもう死体だった。きっと、私の良心が助かるために情けを掛けて、これを生きながら弔ったのだろう。

 全体的に色素の薄い両胸が、画面の中央にある。その両胸のすぐ下に、白いTシャツを着た二人の男の背中があった。長い紐付きの首輪をした筋肉質な男二人。その首輪の紐の先は花梨の両手にそれぞれ巻き付いていた。どういう関係性なのか。二人とも酷く日焼けをしていて、うち一人は体毛が濃かった。建て前の隙間から本音が覗いているようで、その上から絶望的な性差に基づくSとⅯがいたずらに混線していた。花梨の華奢な白い両手は自分の身体を隠そうとする素振りをみせていたが、男達は二人がかりでそれを阻止していた。花梨の二倍はあろうかという浅黒い両手が、右手と左手にそれぞれ拘束具のように絡みつき、その手を無理やりベッド脇に押し付けていた。折れてないのに折れているように、見えてしまう。手が使えないのなら身体全体を逸らしてカメラから逃げようとしたのだろうか、花梨の腰は変な方向に曲がっていた。

 ベッド脇には酒瓶が数個転がっていた。暖色の照明の光を受けて鉱石のような輝きを放つそれらは、対価、あるいは都合の良い言い訳としてばら撒かれた宝石のように、見えなくもなかった。銘柄は不明だが、いずれもアルコール度数が高いものだと、容易に想像出来た。花梨は会社で、自分で酒豪だと豪語していた。梨々花は、確か一滴も飲めないと言っていた。

 個々のパーツを噛み砕くように眺めた後で、改めて顔を見た。顔全体を不自然に真っ赤に染めた花梨は奇妙な表情をしていた。口元は笑っているのに、目の奥には怯えの光が宿っている。自分のなけなしの尊厳を守るために強がっている。楽しんでいるように偽っている、ように見えた。他の人間は意図的にカメラから視線を外していた。そうすることが初めから、当たり前に許されているように。

「自分から『撮って』、って言ったのに、あんまり笑ってくれなかった」

 なんでだろ、という顔で、梨々花は私を見た。あの子供特有の、眼前で起こっているものを真っすぐに見据えて、その意味を大人に気が済むまで問いかけるような、邪気もないが容赦もない顔つきをしていた。現に梨々花は花梨の所作の意味が心底分からないという感じで首を傾げていた。その表情には大人の傲慢さは無く、ただ不思議でしょうがないという純粋な疑問だけが乗っていた。普通の傲慢な大人なら、嬉々として、「ひどくない? ねえ」と合意を求めるシチュエーション。梨々花であってもさすがにそう言うと思っていたのに、彼女は一言もそんなことは言わなかった。ただ同意だけ求めるように私の肩を静かに抱いた。

 これが今の自分に出来る一番効果的な攻撃だと知っているのか。いつもの天使のような微笑みで、ショックで声が出なくなっている私の肩を抱く。限りなく透明に近い暴力。私は梨々花のその暴力に身を委ねた。もしこれが男だったら、どんな風に映るだろうか。

 梨々花は何も言わなかった。どんな形であれ、私の返事を待っているのだったら、無駄だ。私はこんな写真を見せられて冗談を言えるほど図太くないし、擦れてもいない。

 本当に今思っていることを言おうか。でも梨々花はまたバカにしたように笑うだろう。なら、皮肉屋を気取ってみるか。こんな写真、週刊誌のヤラセに決まってると思ってたけど、本当に撮られることってあるんですね、とか。

 結局何も言えなかった。烏合の動揺をあざ笑うかのように梨々花の香水が甘く、清らかに香った。それが梨々花の行為の正当性を裏付けているようで、私はその香りを浴びながら、ただ俯くしかなかった。この時に私が感じていたのは無だった。それしか感じられなかった。怒りも、恨みも、やるせなさも、そしてあの颯真と感じたぬるま湯の中の、心地の良い衝動さえも。あれがあればあそこで一矢報いることが出来ただろうに、私は見失った。どこか別の空間に光速で飛んで行ってしまっていた。

「びっくりしてる?」梨々花は私の両手を取った。私のリアクションが余りに薄いから痺れを切らしたんだと思った。梨々花は両手の暖かさで私の視線を誘導した。私の顔を自分の方に無理やり向かせた。口元はよそ行きの笑みを浮かべているが、そのまま視線を上に挙げると、爛々と輝いた目があった。好奇心ではない。そんなに低俗なものではなかった。でもそれは、獲物を認めた捕食者の目そのものだった。異形の天使は、私を獲物として気に入っていた。

「でもその写真、裸なのは女の子だけでしょう」

 私はスマホを覗き込んだ。確かに裸の男は一人もいない。

「私がレズビアンだから、まあ凛ちゃんもそうなんだけど」

 写真はショックだった。けど、梨々花がレズビアンということ自体には驚かなかった。花梨もそうというのは、まあ、それは想定外だったが。

レズビアンと言った後で、梨々花は自嘲の笑みを浮かべた。これは意外だった。梨々花は、明らかに自分がレズビアンであることを恥じていた。そして自分の恥と同列に、花梨のことも、嘲るように言った。

「凛ちゃんは私に出会ってから目覚めたんだって。今はバイセクシャルらしいわ」

「‥‥‥」

「本人がそう言ってたの。だからその写真も、本当は男の人も裸だった方が、あの子的には良かったんじゃないかしら」

「‥‥‥」

 梨々花の言い方には突き放すような明るさがあった。頼んでもないのに、あの子がなぜあんな行動を取ったのか心底分からない、と苦笑しているようだった。私も分からない。花梨の野心が病的な理由がまず分からない。それが強迫観念に変わった理由も分からない。私が分かるのは、花梨が自分の性癖を偽ったという事実、それだけだ。出世のために嘘を吐いたけど、梨々花が信じたから嘘が本当になって、もう戻れなくなった。

 ここで話すということは、梨々花はこの情報にさほど価値を感じていないということだ。つまり花梨のいつもの自虐ネタの延長として、処理したいということ。ごめんなさいね私ばっかりしゃべって。梨々花は仕切り直しをするように膝を叩くと、スマホをしまった後で、私の目を見た。あの何に由来するのか分からない目のぎらつきはもうなかった。幻のように消えていた。でも監視は止めていない。梨々花はいつもの天女のような、あの世を儚むような眼差しで私をひたと見つめていた。

「何でこんなこと教えるんだって、思ってるでしょう」

「‥‥‥」

「簡単よ。あなたが私の仲間だと思ったからよ。同じレズとかじゃなくて、置かれている心の状態が私達と似ているからよ。あなたも裏切らないと思ったから、教えたの」

 裏切らないではなくて、裏切れないではないのか。

「その顔の傷、男の人にやられたの?」

「‥‥‥」

「どうしてやられたの?」

「‥‥‥喧嘩をしたからです」

「そう、やっぱりそうなのね」

 そして私のこともどうでもいい。断崖絶壁の上で、後ろからゆっくりと背中を押すような声が響いた。あんたの承認欲求を満たすための芝居も、打算も全てお見通しだと言われた気がした。断崖から落ちながら飛ぶような未知の感覚に震えた。これはたまたま彼氏と喧嘩をしただけだと、言い返すことは出来た。でも恥の上塗りになる分、余計に傷つきはしないか。だから言わなかった。言おうとしてもどうせ無理だっただろう。実際に唇が動かなかったから、言い返す気力を奪われていたのだ。ここでまた隙が出来たのだろう。私はまた梨々花の顔を見ることが出来なくなった。  

 不穏な空気を再び肌で感じた。私の中の梨々花の理解出来ない部分がまた増えていく。梨々花に優位な風がまた吹いてきた。それは梨々花を再生させる風か。知らない。でも今、絶対に顔を見てはいけない。きっとその目は三日月型になっていて、耳まで裂けた口で微笑んでいるに違いない。見たら取り込まれる。

「私あなたのことをずっと見ていたのよ」

 私の妄想を跳ね除けるように、梨々花の声はどこまでも穏やかだった。

「私と似てるけど、正反対の行動をする子だなと思ったから何となく目で追ってたの。一度も話さないまま辞められるのは嫌だから、ちょっと声を掛けてみたのよ」

 高みから気にするのは勝手だが、何で今さら。

「仕事柄、そういうことにも目を配らなきゃいけないの。あの称号を取ってから、ますますそうなったわ」

 あの働きがいのある会社の称号のことか。称号というものは厄介だ。取るためには社内外の根回しが必須。取った後は、その称号が正しいことを証明し続ける義務が、それを返上するか、はく奪されるまで生じる。梨々花の新しい仕事はイメージの保全のようだ。称号取得に関する、根も葉もない噂潰しの仕事はもう、終わったのだろうか。

「これ、今まで気づいてはいたけど、なあなあで、誰も真剣にやって来なかったことだと思うのね。鈴野さん‥‥‥自分でももう分かってるんじゃないかと思うけど、本当に総務課で働き続けたいと思う? 言い方悪いけど、今ちょっと孤立してる状態だよね」

「‥‥‥」

「誤解ないように言っておくけど、私はあなたに辞めてもらいたいわけじゃない。逆よ。同じ環境で一緒に働きたいと思ってる」

「私はこのまま総務がいいです」

「どうして?」

「何だかんだ言っても、環境面で慣れている仕事ですから」

「…‥‥そう。悪いけど私はそうは思わないわ。あの環境でずっといたら、あなたは今以上に体調を崩してしまうと思う。私助けたいからはっきり教えるけど、あなたの傷のこと、陰で何て言われてるか知ってる? 今までの身体の傷のこともあるから、みんなからかわいそうかわいそうって、好き放題に噂されてるよ」

「‥‥‥」

「‥‥‥辛くないの? 好き放題言われて。あと悔しいでしょう」

 辛いに決まってる。辛いけど、自分で招いたことなんだから仕方ない。もちろん悔しいが、悔しいと思ったら負けだと思っている。それにこれは、あなたに頼るようなことでもない。だからこう言った。

「別に。相手にしてませんから」

「そう。それならいいけど。…‥‥ね、どうしたらそんなに強くいられるの?」

 梨々花の声が好奇心で弾んだ。梨々花の目は光の加減で爛々と輝いて灰色になっている。大衆の好奇と、純粋な選民の良心から生まれたであろう願いがブレンドされたそれを見て、異様に美しいと想った。想いながら、私は梨々花が案外噂に弱い性格であることを知った。

「相手を人間だと思わなければいいです。私はあの人達に対してはそれが出来ます」

 模範解答だと思った。梨々花は今、自分のことを棚に上げている。だからこれは最高の皮肉にもなり得るのだった。

 だが梨々花は、「そうなんだ」と言って、そういう心境に至れるのがなぜか分からないという態で、愛想笑いを浮かべただけだった。本当に分からないのだろう。これには地味に傷ついた。そしてもちろん、私を諭すのを止めなかった。

「‥‥‥あのね、私も最初に見た時はびっくりしたわ。かわいそうだと思った。でも今は心配してる。だからそこまで追い詰められた原因が会社にあるのなら、会社に来るの、嫌になっちゃうでしょう? だからそれを取り除いてあげたいのよ」

「‥‥‥私が異動したとしたら、はすみさんは?」

「あの人は大丈夫よ」

「‥‥‥どうしてですか」

 梨々花が社員の下の名前をよく覚えていることに一抹の恐怖を覚えた。どうしても、という言葉が階下の巨大な穴のような空間に響いた。梨々花は両手を合わせるような仕草をすると、「鈴野さん総務何年だっけ?」と聞いた。答えを期待しているのではなく、そういうけん制だった。その話題は梨々花の重ねた手の中でぎりぎりと握りつぶされ、後には気まずい沈黙だけが残った。

「二葉ちゃんは?」

「あの人は、しばらくはあなたのフォローなしで、一人で仕事をしてもらう。私の認識が間違いじゃないなら、あの程度の業務量だと、普通の人ならたぶん楽にこなせると思うから」

 普通の人、ねえ。でもあの子ではなく、あの人か。そう言えば梨々花と二葉ちゃんも、同い年だった。私と同い年なんだから当たり前だが。梨々花は何ともない調子で続ける。それは演出プランの共有だった。

「その後は、あなたの分も引き継いでもらって、しばらくしたらアウトソーシングに異動かな。総務よりも明らかにリソースが足りないみたいだから。確か経理経験が、あるみたいよね?」

 二葉ちゃんも奈緒ちゃんと同じ道を辿るのか。はすみさんに結婚の報告をした直後に異動させられた奈緒ちゃん。いつか行使するかもしれなかった産休取得の権利と引き換えに人事考案の離職率を内側から強制的に下げる施策の犠牲になった。表向きは総務で磨いた人当たりの良さを買われての異動ということだった。が、その愛想の良さに社内外で付け込まれたのか、最期はクマのある目で、口元だけでもう限界、と寂し気に笑って、当たり障りのないお礼を言って辞めていった。

 奈緒ちゃんに比べて二葉ちゃんは、ここの総務の才能にさっさと目覚めろ、という猶予付きなんだから、まだましだ。奈緒ちゃんは何の落ち度も無かったのに、履歴書に書いた三か月の経理経験を目ざとく見つけられて、最初の生贄にされた。

梨々花は目を細めて続ける。

「情報が古かったら遠慮せずに指摘してね。私も優先順位を付けて仕事をしている身だから」

 その方が助かるわ、と穏やかな口調で断言した。梨々花が異形だったのは束の間だった。馬脚など初めからないのだろう。審判の女神のような物言いには、一切の迷いがなかった。社長の娘。秘書課のトップ。高嶺の花。彼女の性格を属性に基づいてどれか一つに固定しようとする寸前で踵を返すように別の顔が現れる。踊るように人格を変えながら、いくつもの役割を同時並行でこなす梨々花の姿は、神の恵みから生まれた精巧な光のゆらめきのようだった。誰もがめまいを感じる正体不明の光。身体を乗っ取って内側から心を操る光。自然由来か人工由来なのかさえを判断する余裕もなく、それを見た者は憑かれたように、自分の心の鍵を自分で開ける。

 でも梨々花は光ではなくて人なのだ。だって、心のない無機物の光はこんな風に笑ったりしない。ならば人の仮面を被った人でなしか。サイコパスと断言出来れば楽になれるのに、けしてそうさせない隙がいつもある。梨々花の胸をメスで切り開いて、そこに何が入っているか見てみたい。そこにあるのは人の心のなれの果てか、仄暗い虚無の空洞に違いない。でもそれが出来ないのなら。

「レズビアンなんですね」

梨々花を内側から傷つけて、ひるませるに違いない話題を召喚した。

「ええ」

「びっくりしました」

 梨々花は案の定ふふ、と笑うと、しばらく間を置いて、「どうして?」と尋ねた。

「梨々花さんのことを好きな男の人って会社の中にたくさんいるから」

 言った後で表現が生々しくて気持ち悪いと思った。

「そうみたいね」

「みんながっかりしちゃいますね」

 お世辞を言っているうちに平静を取り戻した。梨々花は笑いながら、そうね、と言った。そうね、ご期待に沿えなくて申し訳ございませんって感じ。

 またこれも自虐にするのか。社内で囁かれている自分のレズ疑惑も。どうせ流すなら近親相姦の噂を流す位の根性を見せて欲しいが、内弁慶の社員達にそんな芸当、望むべくもない。 

 でもここで自虐で包んで逃げるつもりなら、花梨の上位互換だとしても、真似に過ぎない。

「だから仕事で挽回するつもり。当事者の立場から多様化を目指してジェンダーレスを進めるの。いいでしょ」

「そうなんですね」

「そういうのもこれからやってかないといけないから」

「‥‥‥うちだと広報部はもう出来てるんじゃないですか」

「あああれ? 全然よ」

「あれじゃ満足できないですか」

「もっと出来ると思うし、やらなきゃいけないと思うわ」

間髪入れずに、「鈴野さんもそう思わない?」と振られた。私は答えに窮して、困惑の笑みを浮かべてかわした。かわしながら、梨々花の失言をその言葉から引き出したいと思った。じゃないと、私の鳥肌の説明が付かないし、今夜は違和感で眠れないだろう。だから、私レズビアン、から始まる失言をもっと引き出したかった。

梨々花は中々ぼろを出さない。作り物なのに、それを作り物と実証することが出来ないなんて、苦痛すぎる。頭を押さえつけられたような状況に私は苛立った。所々危うい箇所はあるにせよ、一本筋が通っている。通しで聞けば筋が通っていることが分かる。だから真っ当なことを言っているように聞こえるのだ。どこを切ってもその筋が判を押したように出てくるから、異常なのに真っ当なことを言っているように聞こえるのだ。

やっぱり梨々花はおかしい。でもこれで梨々花も人間だということは分かった。梨々花も社内の上司達と同じように上から目線の洗脳を使う。梨々花の洗脳は他の洗脳よりも派手で、耳触りがいい分白くて柔らかいだけだ。

「花梨ちゃんは、向こうからカミングアウトしてくれたのよ」

「‥‥‥へえ」

「私を見ていたら自分もそういう気があるのかなって。それは別にいいんだけど」

「そうなんですね」

 もうそうなんですねとしか言えない。だからそう言いながら観察させてもらう。マイノリティの社会貢献という正義を、どんな風に自分に都合良く料理するのか。

「この前ラインでもちょっと話したけど、最近、LGBTQ+が世間で注目を浴びてるわよね。それは別にいいんだけど、ファッション感覚でそういうのを名乗る人も、いるのよ。たくさん。その場のノリやフィーリングだけでレズになったり、ゲイになったり、バイになったり、トランスになったり、するの」

「そうなんですね」

「そういうの見ると堪らなくなるの。でも、会う度に違っていることもあるけど、本人にしか分からない所だから違うとは言えないじゃない? クィアかもしれないし。クィアの先のプラス、全く新しい性かもしれないし。判断するためにちょっと突っ込んだ話をしたら、やっぱりアセクシャルかもしれないって言われたこともあるし。でも当事者側としてはそんな風にファッション感覚で性自認をころころ変えられるのは、ものすごい違和感があるの。だから同胞を見分けるリトマス紙が必要なの」

「そうなんですね」

「言わば私達の盾ね。こっちも大変なのよ。必死なの。向こうを否定することは絶対にしてはいけない。それをすることは私達のコミュニティの否定になる。私自身の否定にも直結することだから。でも何もしない状態を続けているだけでも心は傷つくし、嘘つかれたら余計に傷を抉られるじゃない。だから自衛は必要なの。本物のマイノリティを名乗る立場としてね」

「‥‥‥」

「嘘吐かれるのって、悲しくない?」

「‥‥‥どうでしょう」

「私は悲しい。友達に嘘を吐かれるのは、特に悲しいわ。そもそも相手を小馬鹿にしてないと、嘘って、吐けないでしょう。いくら友達でも、そんなひどいことされる言われなんてないわ。嘘吐かれる位なら、何も欲しくない。だから凛ちゃんの時はね、本物かどうか見分けるためにソドムとゴモラを見せてあげた」

 梨々花の眼がまたぎらりと、銀色に光った。

「‥‥‥ソドムがゲイで、ゴモラがレズですか」

「ふふ、そう思われること多いけどね。でも違うの。聖書で語られているのはソドムの罪だけで、それが同性愛と言うだけ。ゴモラの罪は分からない。ゴモライコールゲイって言うのも、後にソドムの同性愛の言い伝えがゲイのイメージの語源になったというだけよ。でも、その観点で言うと、ソドムも見せたけどね‥‥‥凛ちゃん、何を見せてもすごく驚きはしてたみたいだけど、嫌だとは言わなかったから。私に気を遣ってレズだって言ってたけど、もう最初からバイに目覚めてたのかもね。だから私はあの子の告白を本物だと思って、尊重したのよ。‥‥‥ねえ、これって悪いことだと思う?」

 私は首を振った。ならしょうがないですね、と笑った。

 梨々花の微笑みが深くなった。それはあらかじめ約束された微笑みのように思えた。

何でも持っている女神のような人間が、偽物なら欲しくないと言う微笑みは、不穏であるがゆえに畏れ多いのだ。

「ねえ鈴野さん、美術鑑賞好きよね? モローの『ソドムの天使』は観たことある?」

「一年位前に、上野の美術館で観ました」

 確かあれは、ソドムを滅ぼした直後の二人の天使を描いた作品。燃え盛るソドムの街を覆うほどの巨大な身体の天使が、ぼんやりとした影として描かれている。モローは象徴主義の画家だから、夢や幻想を作品の中に意識的に混ぜる。だからどの作品でも、天使は天使のように見えない。現にあの時の天使も巨大な影の塊のように見えた。解説では「天使は冷然とした顔付きだ」と書かれていたが、そこに物理的な表情はなかった。

「私あの絵が気になるの。好きとは言わないけど気になるの。気になって気になって夢の中まで出てきたことがあるの」

 あれを地獄の光景だと思っていない梨々花はどんな言葉を喜ぶか。

「あの天使は、むしろ今の梨々花さんそのものだと思いますけど」

 本音を引き延ばしてお世辞と混ぜた。その伸ばしたもので嘘を包んだ。私にしては良い機転だった。巨大な天使の、実存が危ぶまれる魂に思いを重ねていた梨々花は私の嘘に気づかず、その形骸化された言葉だけを、飴を舐めるみたいにおいしそうに反芻していた。






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