第11話 「やっぱ高学歴高収入のハイスペスパダリじゃないとだめ?」
静乃を無事送り届けた後、家に戻って部屋に入ると、かなり遅い時間だったのにもかかわらず竜崎は寝ておらず、机の上で小さいトランプタワーを作って遊んでいた。相当暇なんだな・・・なにか娯楽でも与えて、暇をつぶさせる手段を用意してやるか・・・
「国広君、結構遅かったね。怜から報告は受けているが・・・ひとまずお疲れ様といっておこう。」
「そういうアンタは、かなり暇してそうだな。」
「そうだね――――覚悟はしていたが、やはり君と話す以外の時間は結構持て余してしまう。ほかにもやることはあるけれど・・・」
「まあなんだ、今度こっちの世界の娯楽を教えてあげるよ。―――で、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ、今いい?恋人作りのゴールについてなんだけど。」
「なんだい?」
そこで、俺は静乃から聞かれたことをそのまま竜崎に聞いてみた。その他一般人が俺と誰かが恋人関係だって知っても、それが嘘か本当かを判断できない。だから、かりそめの関係であっても、他者の負の感情は均すことができるのではないか。ならば、怜に一時的に恋人になってもらえば、解決なんじゃないのかって。竜崎はその話をトランプタワーを作りながら聞いていた。―――俺は真面目に話してるんだけどな・・・。
「―――で、どうなの?」
「かりそめの関係に意味などない。真の恋人を作るまで、私のサポートは終わらないさ。もっとも、怜とかりそめでなくて、本当の恋人関係になるならそれでもいい。けれど、怜を落とすのは難しいからやめておいた方がいい。怜の理想は高いぞ~」
「え?あいつそんな理想高いの?やっぱ高学歴高収入のハイスペスパダリじゃないとだめ?」
「ああ、うんそんな感じ。」
「・・・ちなみに、あいつって若作りしてるだけで実は妙齢の女性とかいうオチはないよな?」
「そこは安心していい。彼女は正真正銘、君たちと同じ年だよ。――――で、ちょっとこっちからも聞きたいことあるんだが、いいかな?」
トランプタワー作成を中断して、竜崎はこちらに振り向いて、神妙な顔つきでそう問いかけてきた。
「まず、今日の勉強会をした中で、悩んだ瞬間ってあるかな?もちろん勉強内容についてじゃない。女性たちと関わるうえでの行動についてだ。」
そういわれて思い返すと、その場面はあった。俺が気絶から目覚めた後、女子たちの部屋に入るかどうかの場面だ。ギャルゲー脳だったから、頭の中に選択肢が浮かんだやつな。
「あったあった。ギャルゲーだったらセーブしてたところだ。選択肢出現してた。」
「なるほどね。ならば、ちょっと近いうちに別のサポートアイテムを用意しよう。」
「へえ、じゃあ楽しみにしとくけど、告白券みたいに使いづらいものだったらやだなあ。」
そう愚痴をこぼすと、竜崎はフンスと胸を張り、
「大丈夫、ギャルゲー脳の君にとっては手が離せないものさ。」
「え?」
さっきの話の流れから考えると・・・・・・え?この世界でセーブ&ロードができるアイテム?タイムリープマシン?さすがにwktkしてきたぞ???
「ふふふ、興奮しているね。けれど、今は黙っておこう。手にしてみてからのお楽しみだ。――――で、次が本題だが、遼はさっき私にかりそめの関係でもいいのかと尋ねてきたね?これまでの君を見る限り、恋人作りに積極的になっているわけでもないし、昨日のバイト中も蘇芳結衣ともフラットに接していた。勉強会もつつがなく行われたたと怜から聞いていたため、そんな発想にいたるとは思えない。きっかけがあるとすれば、萩原静乃を家に送っていく最中だ。―――――萩原静乃と何があった?」
どうしよう、かなり核心をついてきた。俺が竜崎たちのこと―――夢の内容を全部喋っているってことを、俺はばらしてしまっていいのか?俺が何かをもらしたことで、静乃に危害が及ぶとかであれば、俺は口をつぐむしかないが・・・
「・・・帰り道、怜って可愛いけどどう思ってるの?ってきかれたときにひらめいたんだ。」
嘘は言っていない。実際そんなやり取りはあった。
「なるほどね・・・まあそういうことにしておこう。」
「はあ――――ちなみにさ、俺らとの関係って門外不出?」
念のため、静乃の立場が危ういものかどうかを確かめよう。
「いや、そういうわけではないけど・・・。」
「え?ばらしていいの?」
まさかばらしていいとは思ってなかったので、拍子抜けしてしまった。でも、歯切れの悪い返答だったので、おそらく何かがネックなんだろう。心当たりが多すぎるが・・・。
「どうせ誰も信じてくれないから。」
「あーね。けど、もし信じちゃったら?」
「逆の立場で考えてみてほしい。もし目の前の女性が、年末までに彼氏を作らないととその子か君が死ぬって言ってきたら、どう思う?同情して付き合うか?そこに愛はあるのか?死にたくないからって理由が先行して恋人関係になるって、それこそ君がさっき質問してきたかりそめの関係になりかねない。だから、ばらすとしても、恋人づくりのサポートをしている神様ってところまでで、君に告げたリミットについては、伏せておいた方がいいだろう。―――――で、そんなことを聞いてくるってことは、どうやら君は萩原静乃に結構喋っているみたいだね・・・。」
まさに、俺が危惧していたことを竜崎は告げてきた。そして、俺の浅はかな質問の性で、静乃のことがばれてしまった。
「―――だって、あの晩俺にとってはただの夢だったんだ。翌日、俺は面白い夢の話を友人に喋っただけだった。まさか本当だったとは思わないよ。」
「まあ、口止めしなかった私も私か・・・。まあいい、この世界の協力者は確かに必要だ。その点では強い味方を得たといっていいだろう。それに、全部喋っていたとしても、リミットは年末だ。遠すぎる話だし、さっき言った懸念は、まだ心配しなくていい。恋愛の協力を続けているうちに、当の本人が好きになってしまうケースなんて山ほどあるし。昔から君のことを知っている人たちは、どうしても昔からのイメージに引っ張られてしまい、関係性をなかなか変えづらい。腐れ縁である萩原静乃との関係性にメスを入れるきっかけになったと思えば、悪くはない。ともあれ、今のところ柄谷栞と萩原静乃のフラグを着々と積み立てているね。この調子で励むように。」
ひとしきり話し終えて疲れたのか、竜崎は自室のベッドに戻っていった。トランプタワーを放置して。
静乃は恋人候補から外れたもんだと思い込んでいたけど、リミット考えればまだまだそうはならないのか・・・。とはいえ、いまのところ、両者と付き合う自分の姿が想像できないけど、時がたてば俺の気持ちも変わるのかな・・・。
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