④
魔道士から格闘家がいなくなった事を聞いた騎士は仲間を引き連れ、城内を探索した。
そして。
「ああ、彼もか・・・・・・」
格闘家も焼き殺された姿で発見されたのだ。
「彼も・・・・・・?」
「同じ方法で殺されていたよ」
王が用意した部屋で騎士は魔道士に格闘家の死を知らせると彼女は体をガクガクと震わせ、ストンと騎士に体を寄せた。
「あの強い彼が・・・・・・、私、怖いわ」
「大丈夫、君の命は守るよ」
騎士はそっと魔道士の肩に手を乗せ、微笑む。
その姿に魔道士は。
――ようやく彼は私を一人の女として意識してくれるのね!
歓喜した。
「隊長!」
「おっと、呼ばれたようだ。彼が亡くなって心細いかもしれないが此処から動かないでくれ、何かあったら護衛に告げて逃げてくれ、無理して戦うな」
「解ったわ」
騎士は魔道士にニコッと笑いかけると仲間の元へと向かう。
魔道士はその姿をうっとりとした表情で見つめている。魔道士の中では既に彼が自分のものになったと思っていた。
動くなと言われてしまっている以上、魔道士はメイド達に頼んで持ってこさせた本で時間を潰す。
集中して本を読んでいたからだろうか、肌寒く感じ、そこで暗くなっている事に気付き、本を読むのを止めた。そろそろ、メイドが明かりを灯しに来る、その時にメイドに暖かい飲み物でも頼もうと考えていた。
――ガチャリ。
「やあ、灯しに来たよ」
入ってきたのはメイドではなく騎士だった。
手に持っている蝋燭の火に照らされているせいか怪しげな雰囲気を出す騎士に魔道士は胸をときめかせるがそれを表に出さず普通に接する。
「まあ、それはメイドの仕事でしょ? わざわざどうして?」
「君の様子を見に来たんだ」
騎士はテーブルの上に置いてある燭台の蝋燭を灯していきながら。
「君に聞きたい事があるんだ」
そう魔道士に切り出した。
魔道士から背後しか見えないため、どんな表情をしているか解らないが少し深刻そうな声だった。
「聞きたいこと?」
「ああ、絶対に答えて欲しい」
「ええ、勿論、貴方の頼みなら、何が聞きたいの?」
「彼女、カエデをどうして殺した?」
騎士の質問に魔道士は氷のように固まるしかなかった。
あの時、楓を殺したとき気絶していた。楓を殺した事を知らない彼がどうしてそんな質問するのか魔道士には理解できなかった。
「な、なにをいって・・・・・・」
「どうして殺した?」
「うっ!」
騎士は魔道士の首を自身の手で締め上げる。
ギリギリと苦しませるように。
「あっ、く、くるしぃ」
「なぜ? お前の判断か? それとも命令されたのか?」
魔道士は必死に声を出そうとするが締め上げられているせいで上手く出ない。
意識が薄れゆく中、自分を締め上げている者が騎士でないことに気付く。
鋭く此方を睨む目は騎士の澄みきった空のような青色ではない、まるで月の思わせるような金色、髪は炎を彷彿とさせる赤い髪。
自身と同じ女である事しか解らない、だけど、何処か見覚えがあると思った。
――誰? コイツは誰なの?
絞め殺されそうな中、魔道士は必死に首を絞める女の正体を探る。
「ねえ、早く答えて。どうして私を殺した? 答えろ」
その言葉でようやく魔道士は女の正体に気付くと同時に戦慄した。
だって、彼女は。
「ねえ、早く答えてよ」
自らの手によって殺した女――勇者・楓だったからだ。
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