三の二

オックスは、あの大きな牛の形をした琴を指差した。


闘「あいつが?」


闘は、思わず叫んだ。


オックス「そうだ。あの牛琴は良い曲を聞くと目が光る。ヤツの目がより光った方が勝ちだ!」


闘「そんなんで分かるのかよ?」


然「とにかく、始めてみましょう」


闘「然、お前がそれでいいならいいけど…始めの合図は俺が出すぞ!いいだろ?」


闘は、オックスに尋ねた。


オックス「構わん、好きにしろ」


闘「1、2、3、ハイッ!」


♪タンタンタン タンタンタン タンタンタンタンタンタタタン…


室内に琴の音だけが鳴り響いている。


♪…タンタンタタタタン


音が鳴り止んだ直後に闘は叫んだ。


闘「おい、どっちが勝ったんだ?」


オックス「無論、私のハズ…」


オックスは、そう言った直後驚いた顔をして、叫んだ。


オックス「そんなバカな!」


闘「どうした?」


オックス「アイツの勝ちを意味する右目の方が光っている…なぜ…なぜなんだ?」


然「どうやら、私が勝ったみたいです」


闘「こんなんでいいのか?」


ガクッとうなだれているオックス。


然「しかし、どうして勝ったんでしょう?」


闘「何か理由とか訊けないのか?」


闘は、オックスに尋ねた。


オックス「そうだ!こいつは話せない代わりに、背中のモニターに文字が表示されるんだった!」


三人が背中を覗き込むと、次のような文字が表示されていた。


「こいつの演奏は上手い…が、ワンパターンでもう飽きた。たまには別の奴の弾いた曲を聞いてみたかった。これを機会に私はこの宮を出る!」


そして、その文字を闘が読み終わるやいなや、猛スピードで、闘たちが入って来た入り口の方から出ていった。


ガタン


闘「あの牛、何か落として行ったぞ」


オックス「何て速いんだ!アイツ、あんなに速く走れたのかよ!?」


オックスは、闘の質問には応えず、呟いた。


そして入り口に向かって少し走った所で振り返ると闘たちに向かってこう言った。


オックス「それは、木の 素(ソウル)だ。これからの戦いで役に立つだろうぜ…」


オックス「うぉー!アイツが俺の事をそんな風に思っていたとは…待て、このヤロー!俺を置いて行くなー!!」


そう叫びながらオックスは、牛琴を追って、走って部屋を出ていった。


闘「何だったんだ、アレ?」


然「とにかく、先を急ぎましょう」


闘「次は確か…」


然「『双児宮』、ふたご座のはずです」




第四章 に続く


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る