第4話
俺がトリを救出する姿は誰にも目撃されてない。
次の日のニュースで知ったが、幸いな事に負傷者はゼロだったが、図書館は火災により一年程度は休館になるらしい。
その代わりに、毎週土曜日は俺の家でトリと勉強をすることになった。
コレは、アレだ。俗に言うフラグが立ったってヤツじゃないのか。方程式的に言うならば、アリだな。
季節は移ろい、九月になり、文化祭の出し物を決めるから案を考えるようにと、朝のホームルームで担任から指示が出た。
昼休みにトリと飯を食いながら話をする。
「模擬店で接客できるのが良いんだけどね」
そういえばトリは前は週七日で接客のバイトしてたから、得意なんだよな。じゃあそっちの方向でアイデアを出してみるか。
ロングホームルームで話し合いと投票と意見の合成の結果、『ぬいぐるみと合コン』と言う訳の分からない企画が採用された。
客はぬいぐるみを一体レンタルして、ぬいぐるみを持って椅子に座り、ぬいぐるみ役になりきる。俺達は司会として話が膨らむように誘導する。
後日に配られたプリントを読み返したが、理解は出来るが意味が分からない。方程式が整わない。
所がどっこい、文化祭で、一日目と二日目の両日とも、『ぬいぐるみと合コン』は大盛況で、最優秀クラス賞を受賞した。
何が功を成すのか分からないもんだな。
後夜祭のキャンプファイヤーをトリと一緒に、校舎の四階から眺めている。トリが図書館での火災を思い出さないように帰宅を促したのだが、遠くからなら平気だと強く言うので、この場所に二人で居る。
「ワガママ言ってゴメンね。ブッコロー君は後夜祭の伝説って知ってる?」
「イヤ、聞いたことがないな。どんな伝説何だ?」
「後夜祭のキャンプファイヤーを見ながら告白して、誕生したカップルは幸せになるって、伝説だよ。私と恋人になってください」
トリが頭を下げて、右手を差し出してきた。
脊髄反射で右手を握り返す。
「こちらこそ宜しくお願いします」
そんな伝説を知ってたら、こっちから先に告白したんだけどな。俺から告白すべきだったか。いや、今となっては全部言い訳か。まぁ良いか、両思いなのが判明したんだから。
恋の方程式が成立した。
恋人になってからのトリはクーデレだった。即ち人前ではクールだが、俺と二人きりになるとデレデレに甘えてくる。
※※※甘々な彼女トリとイチャイチャするだけの話は割愛。※※※
市内の同じ大学へ、俺は特待生で、トリは推薦で合格した。
四月になり、大学生となった俺達は、サークル勧誘に顔を出している。
その中で、あるサークルの活動紹介のDVDに目が釘付けになった。
その場を離れて、トリに相談する。
「今の映像、凄かったな。でもあそこに所属するんじゃ面白みが半減しちゃうだろうんな。だから俺と一緒に、新しくあれと同じサークルを立ち上げてくれないか?」
数年ぶりにやる気概が高まっている。
「うん、もちろんイイヨ。お金が必要ならアルバイトを増やすし」
確かにお金が掛かるのは否定できない。
だが今の時代は、クラウドファンディングで寄付を募る事が可能な世の中なんだ。
新サークルを結成し、部員も二十名ほど集まった。クラウドファンディングでの寄付も充分に集まり準備は整った。
締切の一ヶ月前に、大会の主催者へ出場応募のメールを送信した。
一次合否の結果は、締切の一ヶ月と記載されている。
トリと一緒に部室に居ると、例の大会の主催者からノートパソコンにメールが届いた。締切前だったので、出場申請書類に不備があったのかと思い、急いでメールを開いた。
『この度は人力飛行機大会に御応募頂きまして真に有難う御座います。しかしながら、ブッコロー様は鳥類なので応募基準を満たしていない為、落選とさせていただきました事を御連絡いたします』
冷静になって大局的に考えたら当たり前か。方程式を使うまでもなく。
〈完〉
ブッコローの青春 桃月兎 @momotukiusagi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます