第3話
図書館から消防署は割と近いはずだが、それでもどうしたって数分は掛かるだろう。バルコニーに火の手が回る方が圧倒的に速い。
トリが居るのは四階だから凡そ十二メートルか。そんな高さから飛び降りたら無事で済む訳がない。命を落とす。
落ちてくるのを仮に運良く下で受け止める事が出来たとしても、二人揃って死亡するのがオチだ。
どうしたらいいんだ? どうすればトリを助けられるんだ? クソっ、俺が鳥だったら、飛んで助けに行くのに。
んんんんんんんんん!?
脳内で自分の言葉を反芻する。
俺が鳥だったら、飛んで助けに行くのに。俺が鳥だったら、飛んで助けに行くのに。俺が鳥だったら、飛んで助けに行くのに。俺が鳥だったら、飛んで助けに行くのに………………俺、鳥だ!!! 冷静に考えたら、飛べるじゃねーかよ。
鞄を地面に置き、しゃがんでから反動を付けて飛び上がった。翼をはためかせて、あっと言う間にバルコニーに到着した。
安心と驚きの表情を浮かべるトリを、お姫様抱っこした。
なんだコイツの体は、鳥みたいに軽いぞ。
「話しは後だ。しっかりと捕まってろよ」
トリが頷いたのを確認して、バルコニーから飛び降りた。
自由落下運動中に羽根をゆっくりと動かして、無事に地上に下りたった。
トリはよっぽど怖かったんだろうな、俺にしがみついたままで降りようとはしない。
そりゃそうだよな、一歩間違ってたら死んでてもおかしくない状況だったんだからな。この場所居たのがたまたま俺で、たまたま俺が鳥で飛べたから助かっだけだしな。いや、たまたまじゃなく、必然なのかもな。俺がトリを救い出すって、方程式においては。
でも冷静なってみると、トリも鳥なんだから、自力で飛べたよな……ま、野暮な事は言いっこなしだ。
トリの体重の問題は鳥みたいに軽いどころか、トリは実際に鳥だ。
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