第58話 死路
「国王陛下の勅命……」
その言葉にリオは混乱した。
「そんなはずは……だって、国王陛下がこの施設をパルス王女の直轄事業にするとお認めになったのよ!! それがなんで今になって国王陛下は査察なんて命じられたの!?」
リオの問いに、フランク・バロットはにやにやしながら答える。
「直轄事業の話が決まるときに、パルス殿下は国王陛下にこうお話になられたのだ。リオ・クラテスという稀代の天才白魔術師がいる。そして、その人物が平民の居住区で治療施設を開設し、民の治療にあたっている。治療成績は極めて素晴らしい。ぜひとも、第一王女として支援したい。と」
その内容を聞いて、リオは「しまった!!」と痛感した。
リオとリオの治療施設のことをどのように国王に説明するか、パルスと全く話を詰めていなかった。
相手が国王とはいえ実の親子であり、パルス王女が国王の信頼を得られるようにうまく話してくれると楽観してしまっていたのだ。
「国王陛下はパルス王女殿下の言葉通り君のことを稀代の天才白魔術師であるとご認識なされた。無論、その治療施設で行われている治療も白魔術であると思われていた」
フランク・バロットは事の経緯を淡々と語っていく。
「ところが、数日もしないうちに、不審な報告が国王陛下のお耳に入った。白魔術師リオ・クラテスが行っているのは白魔術などではない。得体の知れない異端の技だと。国王陛下はその話をお聞きになり大変ご立腹なされた。もし、その話が本当であれば、パルス王女殿下はそのリオ・クラテスなるニセ白魔術師に謀られていると」
「そんな!? ちが……」
リオは否定しようとするが、フランク・バロットは強い口調でたたみかける。
「違うというのならば、査察を受け入れ、身の潔白を証明されよ!!」
「くっ……」
リオは反論に窮した。
どうする……
国王の勅命となると、さすがに拒否できない……
拒否すれば、国家反逆罪に問われかねない……
だが、査察を受け入れて、この施設での治療内容を見られたら、今度は異端者として逮捕される……
どちらを選んでも死路じゃないか……
リオは必死に考えた。
何かこの場を切り抜ける方法はないか?
せめて、しばらくでも時間稼ぎができないか?
考えあぐねた末、リオは一つ時間稼ぎの方法を思いついた。
「査察はお受けします!!」
リオのその言葉に住民たちはどよめくが、リオは一点の迷いもなく毅然としている。
今は、これしかない!!
リオは意を決し、フランク・バロットに言葉を放った。
「ただし、パルス王女殿下にご同席を求めます!!」
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