第51話 支援
割って入ってきたパルスを、ルイス王子は「ほう……」と睨みつける。
「必要がないとはどういうことかな? パルス……」
「つい先程、リオさんの治療施設は私の第一王女としての権限の全てをもって、全力で支援するとお約束致しました!! ゆえに魔法省の協力も宮廷魔術師の協力も必要ありません!!」
パルスは力強い口調でそう言い放ち、それに対してルイスは淡々と反論する。
「お前は魔術師ではないだろう。お前が支援するからいって、魔法省や宮廷魔術師の協力が要らぬことにはならないだろう」
「であったとしても、協力の申し出は私を通して頂きます!! 白魔術師リオ・クラテス殿の治療施設は、私の直轄事業とさせて頂くよう本日中に父上に進言致します!!」
パルスにとっての父上、つまりこの国の王に進言するということだ。
もし、パルスの進言を国王が承認すれば、リオの病院は第一王女の直轄事業ということになり、魔法省や宮廷魔術師はおろか、王位継承順位第一位であるルイス王子すらもおいそれと口出しをできなくなる。
「本気か?」
「本気です!!」
王子と王女、互いに一歩も引かず、二人の間には重々しく緊迫した空気が立ち込める。
その凄まじい圧に、リオもライナも、王子の取り巻き達も、猛獣の前の小動物のように萎縮している。
数十秒ほどの無言の攻防のあと、一歩引いたのはルイス王子のほうだった。
「お前がそこまで言うのであれば、おそらく父上も承認されることだろう。民のためになることだ。頑張るといい」
ルイス王子はパルスからリオの方に視線を移した。
「リオ・クラテス殿。妹だけでは至らぬこともあるかもしれぬが、どうかよろしくお頼みする。かけがえのない我が民たちの生活と命がかかっているのだからな」
この人の言葉はやはりどこか嘘くささを感じるなと思いつつも、リオは威勢よく返答する。
「は、この命を賭して治療にあたります!!」
そして、ルイス王子と取り巻き達は、パルスたちの横をすり抜け、王宮の奥へと去っていった。
話し声も聞こえないくらい距離が離れたところで、リオはふぅと息をつき、ぺたりとその場に座り込む。
張り詰めていた緊張が音をたてて緩んでいくような気がした。
「すみません、リオさん。勝手に話を進めてしまって……」
「いえ、助かりました。パルス様があのように仰ってくださらなければ、魔法省の役人と宮廷魔術師たちが私たちの病院に出入りすることになっていたでしょう。本当にありがとうございます」
申し訳なさそうに謝ってくるパルスに、リオは逆に感謝を述べた。
それに……
パルス王女は私達を支援してくれると約束してくれていたけど、このまま話が進んで第一王女の直轄事業になれば、パルス王女が私達の後ろ楯であることを広く公にできる……
そうなれば、今後の活動もよりやりやすくなる……
そう思いながらも、リオは言い知れぬ不安を感じ、ルイス王子たちが去って行った方をみた。
あの王子、なんか嫌な感じがするのよねー……
そうして、ふと横に立つパルスを見る。
パルスはもう小さくなっているルイス王子の背中を見つめているが、その顔はどこかせつなそうだった。
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