第40話 王宮
リオとライナは関所のそばの壁にもたれて座っていた。
「お嬢、いつまでこうやってるんスかー?」
ライナが背伸びをして、あくびを噛み殺しながらそう言った。
「パルス王女から何かしらの反応があるまでよ」
とっとと帰りたがっているライナとは対象的に、リオは暇潰しの本を開いてどっしりと構えていた。
「何贈ったか知りませんけど、スルーされたらどうするんスか?」
ライナの指摘にリオは反論しなかったが、内心は確信していた。
パルス王女は、必ずアレの価値に気づく.........
そうしたら、絶対贈り主から話を聞きたくなる.........
リオがそう思っていた矢先、リオが箱を託した兵士が走ってやってきた。
「白魔術師さま!! パルス王女殿下がお会いになるそうです!!」
その知らせに、リオは歓喜した。
そして、ライナに向かって「どう?」と得意気な顔をした。
二人は兵士に案内され、王族区画に入った。
王族区画は巨大な王宮と広大な庭園で占められていた。
平民区画と貴族区画の間で、街の様子はガラリとかわり、道、壁、建物、いずれも美しく変化していたが、王族区画は貴族区画よりもさらに洗練されていた。
庭園には美しい木々が整然と植えられており、木々を縫うように水路が張り巡らされ、水路には鑑賞用の魚が泳いでいた。
そんな美しい庭園を15分ほど歩き、王宮の正面入口に辿り着く。
入口の扉は大人の身長の2倍くらいの高さがあり、豪奢かつ繊細な装飾が施されていた。
扉をくぐり抜けると、王宮内部はさらに荘厳な造りだった。
リオとライナは、庭園から王宮内部に至るまで、その豪華さと美しさに目を奪われるばかりだった。
王宮の中からはパルス王女付きの侍女が二人を案内した。
くねくねと廊下や階段を通り、15分程してようやくパルス王女の部屋の前まで辿り着いた。
部屋の前に立った二人は声を揃えて同じ言葉を放った。
『遠ぉっ!!』
王宮区画の関所からここまでゆうに30分以上かかっていた。
庭園も王宮もかなりの広さであることに加えて、王宮内は侵入者対策でかなり複雑に作られており、右に曲がったかと思ったら左に、上に上がったかと思ったら下にと、かなりぐるぐると回ってようやく辿り着いたのだった。
侍女が王女の部屋の扉をノックし、先に中に入り王女に声をかける。
「姫様、白魔術師リオ・クラテス様とその従者の方をお連れ致しました」
「どうぞ中へ」
侍女は扉を大きく開き、リオとライナを室内へ招き入れた。
二人は中に入ってすぐ跪礼する。
「お止め下さい。先日も申し上げた通り、お二人は私の命の恩人。そのような礼は必要ありません」
二人は「では、恐れながら」と言って顔を上げた。
先日、山中で出会ったときのカジュアルなワンピースと違い、王族にふさわしい優雅なドレスに身を包んでいた。
ドレスはの色はロイヤルブルーで、パルス王女の銀髪と調和し、氷の妖精のような印象を放っていた。
そんな氷のような印象とは裏腹に、王女が二人に向ける笑顔はとても暖かだった。
「またお会いできてとても嬉しいです。リオ・クラテス様..........」
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