第3章 権威との戦い
第38話 味方
かくして、この世界初の“病院”はスタートした。
細々としたトラブルはありながらも、運営は順調に進んだ。
オラフを始め、発症からの日数が経っていた者は開院2,3日後にはほぼ治癒に至った。
4,5日目には、回復し動けるようになった者たちが、既感染者として自ら進んでボランティアスタッフとなってくれるようになった。
その頃には、リオとライナは現場のほとんどのことから手を放し、全体のマネジメントにのみ集中することができるようになった。
「そろそろ、次の手を打たないとね」
リオは病院の模式図や患者リストを見ながらそう呟いた。
「同じ方法で王都のあっちこっちに、この“ビョウイン”を増やしていくんスか?」
リオの隣に立つライナが問いかける。
「それはほとんど最終段階。その前にクリアしなければならない問題がある」
リオはそう言って、チラリと周囲を見回す。
すると、少し離れた家屋の傍に立っていた男が、リオの目を避けるように建物の影に隠れた。
「あー、アイツ等っスか?」
「気づいてたの?」
「そりゃまあ、お嬢よりは早く気づいてましたよ」
「だったら言いなさいよ」
「俺もお嬢も“ビョウイン”の業務でいっぱいいっぱいでしたからね。遠目に監視されてる分には害がないかと思って泳がしてました」
こういうところは抜け目がないなーとリオは感心する。
「で、どうするんスか? とっ捕まえます?」
「いえ、今こちらから手を出してもこちらの立場が悪くなるだけよ。今、私たちがやるべきは味方を増やすこと。それも強力な.........」
「強力な、味方?」
二人がそんなやり取りをしているところへ、長がやってくる。
長は「頼まれていた物です」と言って、リオに折りたたまれた紙を渡した。
「なにぶん我々下々には恐れ多いことですので時間がかかってしまいました。今日やっと宮殿に出入りしている侍女の関係者を見つけまして、なんとかコネクションをとりつけれました。遅くなってしまい申し訳ありません」
長はそう言って申し訳なさそうに頭を下げた。
「いいえ、こちらこそ無理なお願いをしてしまってすみませんでした」
リオは紙を開いて中身を確認し、長に「ありがとうございます」と礼を言った。
「すみませんが、今日このあと半日ほど留守にします」
リオはそう言ったあと、ボランティアスタッフの各チームリーダーにもその旨を伝えた。
「どこ行くんスか?」
ライナに問われ、リオはむふふと笑みを浮かべる。
「さっき言ったでしょ。強力な味方が必要だって」
「なるほど。で、当ては?」
「一人だけいるでしょ。偶然にも私たちがお近づきになったこの国の第一級の有力者が」
そう言われて、ライナは「あー」と手を打つ。
「早速お伺いしましょう」
リオはそう言って、王都の中心に聳え立つ巨大な宮殿を指さした。
「アンブロワーズ王国第一王女、パルス・アンブロワーズ殿下のところへ!!」
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