第31話 伯爵
ヘルメス伯爵とは、リオの医療器具作成や薬剤調合に協力してくれているこの世界のクラフターの一人である。
このアンブロワーズ王国の伯爵位を持つ地方貴族であり、同時に趣味で錬金術の研究に勤しんでいる錬金術師でもあるのだ。
リオの医療器具や薬の半分以上がヘルメス伯爵の協力によって実用化に至っており、リオの協力者の中でも最も重要な人物なのである。
リオは王都の伝染病を治療していくにあたって、点滴や薬が大量に必要になると考えて、事前にヘルメス伯爵に協力を依頼していていたのだ。
「今回の伝染病の流行を鎮めるには、彼の力が不可欠よ。今頃、数千人分の医療器材と薬を詰め込んだ馬車を連れて、この王都に向かっている」
「数千人分!? そんなデカい頼み事したら、お嬢があの変態にどんな目に遭わされるか!?」
「そんな、大げさな.........」
ヘルメス伯爵はリオへの協力に対して、金銭的見返りを求めず、それどころかリオの旅の費用も融資している。
早い話が、ヘルメス伯爵はリオのパトロンなのである。
だが、ここで一つ問題がある。
ヘルメス伯爵は50過ぎの男性である。
金持ちの中年男が若い娘に何の下心もなく、莫大な資金を注入するであろうか。
答えは否だ。
ヘルメス伯爵はリオへの協力に対して、一つだけ見返りを求めた。
それは、ヘルメス伯爵が求めたときにリオの時間が空いている限り、一緒に食事を食べるというものだった。
本当に一緒に食事を食べるだけで、ヘルメス伯爵はリオに対していかがわしいことは一切していない。
それについてライナは、変態伯爵がいつか必ず本性を現すと危惧しており、一方で当のリオは、必ず高級な食事が食べられるので大喜びでついていっていた。
ちなみにリオはヘルメス伯爵のことを影でパパ活伯爵と呼んでいた。
「よく考えてくださいよ!! 確かにヘルメス伯爵は地方貴族の中でも有数の資産家ですけど、軽く見積もっても総資産の半分近くをお嬢につぎ込んでます!! きっと今回の協力の見返りにお嬢の〇△×を.........」
露骨に下品な妄想を膨らませるライナに、リオはジャンプして後頭部にげんこつを喰らわせた。
「何考えてんのよ!? 伯爵はそんな人じゃないから!!」
リオは顔を真っ赤にして否定する。
「俺は、お嬢を心配してるんスよ!!」
ライナは涙目で頭をさすりながらも、真剣なまなざしでそう言った。
その様にリオはふと首を傾げた。
ライナ.........
もしかして嫉妬してる.........
と一瞬思ったが、まさかそんなはずはないかと浮かんだ考えをかき消したのだった。
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