第14話 宣言

「死を望まれている.........」


 物騒な王女の言葉をリオは反芻した。


「何をおっしゃいますか、姫様!?」


「姫様を亡き者にしようしているのはごく一部の者たちだけです!!」


「そうです!! 我々のように姫様に命を救われた者は皆、姫様を何よりも尊くかけがえのないお方と思っております!!」


 騎士たちが口々に叫ぶが、王女は首を振る。


「みんなの気持ちは嬉しいけれど、一方で私がしてきたことが兄上を追い詰めているのよ.........」


 リオは王女たちのやり取り聞きながら、想像を巡らせた。


 これは、要は王位の跡目争いだな.........

 もしかすると、さっきの野盗も敵対する王子の差し金.........

 いや、滅多なことは考えるのはやめておこう.........

 興味がないわけではないけど、私が首を突っ込むことじゃない.........

 それに、私にはやるべきことがある.........


「込み入ったことをお聞きしてしまったようで、大変失礼致しました。先を急ぎますので私どもはこれにて失礼致します」


 リオはそう言って頭を下げた。


「王都へ行かれるのですか? もし先に伸ばせる御用ならば、今はやめておいたほうが.........」


「伝染病のことならば、ご心配には及びません。私たちはそのためにここまで来たのです」


 王女の助言に、リオは胸を張ってそう答えた。


「そうですか。リオ殿は白魔術師とおっしゃっておりましたね。ですが、此度の病は魔法省も宮廷魔術師達も手も足も出ない有様です。仮にリオ殿がどれほどご高名な白魔術師であっても.........」


「魔法省.........宮廷魔術師.........」


 リオはその2つの名を反芻し、クククッと含み笑いをした。


「どうせ、焼け石に水の回復魔術と薬草、それから効きもしない護符を病人の家に貼って回っているのでしょう.........」


 リオの乱暴な物言いに王女はたじろぐ。


「た、たしかに、効果が得られていないのは事実ですが.........」


 リオは右の人差し指をぴっと立てて、高く掲げた。


「こと病から人を救うという一点において、魔術はまもなく時代遅れになります!!」


「じ、時代遅れ.........」


 リオの発言に、王女と騎士たちはざわつく。

 この世界において、魔術は人々の生活を支える根幹であり、権威でもある。

 それをこともあろうに白魔術師であるリオが“時代遅れ”と宣ったのだ。

 普通であれば、正気の沙汰とは思えない発言である。


 リオはばっと両手を広げ、不敵な笑みを浮かべて宣言した。


「 なぜならば、このリオ・クラテスが世界を変えるからですっ!!」



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