第8話 邂逅
老人に水と食事を用意し薬を渡したあと、リオとライナは店を出た。
店の前には伝染病を危惧している住民たちが待ち構えており、リオは伝染病ではないことを説明して住民たちを安心させた。
それから宿に戻って支払いを済ませ、リオとライナは街を出て一路王都に向かった。
道すがら、リオはライナに老人から聞いた話を伝えた。
「死体が.........消える.........」
ライナはその話を聞いて身震いした。
「そんなことありうるんスか?」
「ありえないわよ」
元の世界で、全身が壊死する病気、全身から出血する病気というものは極めて希少ではあるが存在した。
だが、それがどんなに激しくても死体が消えるなどということはあり得ない。
リオがこの十数年間調べてきた限り、この世界に存在する病気は、元の世界ですでに発見されているものばかりであった。
だが、ここはやはり異世界であり、魔法など元の世界の理論で説明のつかない現象も起こり得ている世界である。
元の世界の医学が通用しない病気が、とうとう現れたのかもしれない。
リオはそんなことを考えつつも、武者震いしていた。
望むところよ!!
未知の病気も、迷信も、古臭い体制も、このわたしが全部まとめて治してやる!!
それから三日後、二人は王都の間近までやってきた。
王都の手前に横たわる小高い山脈の峠を越え、ようやくその姿が見えた。
王都は長径10kmはあり、まるで中世ヨーロッパの絵画から飛び出してきたかのように美しく、迫力があった。
都市は城壁に囲まれており、城壁の上には塔や櫓が立ち並び、兵士たちが見張りをしている。
城壁の中には、石畳の道が縦横に張り巡らされ、市場や教会、住宅が建ち並んでおり、都市の中心には王城がそびえ立っていた。
あれが.........
アンブロワーズ王国首都..........
ヴァリスティア.........
リオがヴァリスティアに来るのはこれが初めてで、その威風に鳥肌がたった。
リオとライナは城壁外側の関所を目指し、山を下っていったが、その途中で異変がおきた。
二人が向かう先の彼方から怒号が響いてきたのだ。
何らかのトラブルが起きている。
「いくわよ、ライナ!!」
「えー、マジすかー!?」
嫌がるライナを引っ張りながら、リオは走った。
しばらく走って、怒号の出所へたどり着く。
そこでは、10人ほどの野盗のような荒々しい身なりの集団が、5人ほどの下級騎士のような服装の集団を包囲していた。
そして、下級騎士たちはリオと同い年くらいの少女を守るように取り囲んでいた。
リオはその少女の姿を見て、息を呑んだ。
白い肌に艶やかな銀髪をなびかせ、瞳は瑠璃色に輝いていた。
とても優しそうな美しい顔立ちだが、暴漢に囲まれたこの状況で臆することなく、毅然とした表情をしていた。
衣服は淡い青色のワンピースに白いジャケットを羽織っており、それらはかなり高級な作りで、おそらく貴族の令嬢ではないかと推測された。
そして、手には今しがたつんできたばかりと思しき白い花を何十本も抱えていた。
リオは、その少女の姿がまるで氷の宮殿に佇む妖精のように見えた。
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