第5話:入部、存続の危機
「どうっすかな~」
体験入部を終えて、帰り道。
入部することは決めたものの、俺は創活で何を創作するかで頭を悩ませていた。
「色々提案はもらったけど、絵は描けないし、ストーリーも創れる気がしない……音楽制作は難しそうだし、うーん」
一応部長から提案はもらっているが、自分に務まる気がしない。
「映画に出る、か……面白そうだけど俺に演技なんかできるのか?」
棒読みのセリフで視聴者から叩かれる想像しかできない。 部長の映画がどんなものか知らないが、部室に映画コンクールの賞状が飾られていたからハイレベルなものなのだろう。
それを壊すのも申し訳なく、迷っていた。
「まあスタント的に使ってもらえばいけるか? 後は適当に裏方手伝ってればいいもんな」
俺は一人納得して、迷いが消えた。
ヒーローの次は、
「映画製作! 頑張ってみますか!」
俺は一人意気込んで、鼻歌を歌いながら歩くのであった。
○
「
他の部活も覗いてみたものの、ピンとくるものはなく結局俺は創作活動部に入部することになった。
「よろしく! 君が来てくれて、ほんっと心強い!」
「よっ! 用心棒!」
「いや……普通に活動したいんですが……」
「ははは、ごめんごめん! でも本当に入部してくれて嬉しいよ」
後日、担任から聞いた話だがあれから何度か不良どもにちょっかいを掛けられていたらしい。 俺が実際に入部を決めたと知ってからはそれもパッタリ止んだそうだ。
一般人相手に対してにしては強めに脅したつもりだったが、足りなかったのだろうか。
(今度教室に遊びに行ってやろう)
俺は悪い企みをしながら、歓迎してくれる部員たちを見渡した。
「というか思ったより部員少ないですね……水増しですか?」
部活紹介の冊子には数十人などと書かれていたような気がするのだが、欠席だろうか。 現在、部室にいるのは部長と先輩がもう一人、そして新入生が俺一人である。
確かに創作するタイプの人間は協調性は薄そうではあるが、それにしても酷い。
「いやあ、それがさ」
部長は疲れたような表情で笑って言った。
「みんな辞めちゃったり、幽霊になっちゃった」
「それは」
「不良たちがさ」
「ああ」
「みんな怯えちゃって来なくなっちゃった。 もう大丈夫とは伝えてあるんだけど、戻って来てくれるかなあ? まだ撮影中の映画もあったのにさー」
空元気なのだろう、どこか部長の笑みはどこか悲し気に見えた。
「戻ってくるといいですねー」
「
もう一人の、ぱっと見影の薄そうな女生徒が囁くように喋った。
「なに?
「ここはもう部活じゃない。 創作活動同人クラブとでも言うべきです。 そして新入生には正しく伝えた方がいいと思う」
「うっ」
「どういうことですか?」
音量は小さいが思ったよりも淀みなく耳心地のよい声で雪と呼ばれた女生徒は、聞き捨てならないことを言った。
「そ、それは……えー」
部長が言い淀む中、部室の扉が開かれる。
入ってきたのは
(まあそりゃ恐怖はすぐには消えないよな)
「新入部員は……彼だけですか、残念です」
「先生! まだ入って来るかもしれないから! 私は諦めないよ!」
とりあえず辞める選択肢はないとしても、俺には話が全く読めない。
「なんにしてもルールはルールです。 今週中に部員が規定の人数に達しなかった場合ーーーー
ーーーーこの部活は解散とします」
「えええええええ?!」
思いもよらない言葉に俺は頭が混乱した。
学生生活といえば部活。 部活は青春であり、ここでの活動はきっと楽しくなると期待に膨らんでいた胸がしぼんでいくようだった。
「ちなみに私に友人はいない。 氷雨さんはすでに勧誘して断られている」
俺は雪先輩に肩を掴まれ、力強い瞳で見つめられ、
「全ては君の肩にかかっている。 頼んだぞ」
「丸投げかよ?!」
「もう本当に後がないの。 私はこの部活を失くしたくない……
「俺は藁かよ……」
雪先輩の藁発言は冗談だろうが、実際事実はそれに近い。
なぜなら、
「すんません、俺もまだ友達いないっす」
「氷雨さん、もう終わったみたい」
「おい、こら先輩こら」
とはいえやらずに諦めるのはもったいないだろう。
ヒーローの時に培った折れない心がこんな時に役立つとは思わなかった。
「まあやるだけやってみます」
「
「頼んだぞ、後輩」
「雪……先輩のその態度はどうにかなりませんかねぇ?」
しかし期待はしないで欲しい。
戦闘力はMAXだが、その分一般的に学ぶはずだったことに関して赤子のようなものなのだから。
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