第3話

またその日も鼻先をくすぐる優しい感触と、爽やかな匂いで起きた。


「あなたはわたしのことを何も聞かないのね?」


椎葉先輩は相変わらず本から視線を上げずに質問をしてくる。


「本を読んでいるところを邪魔したら悪いですから」


そう、と椎葉先輩はそっけなく答えた。自分から聞いてきた質問への返事なのに、まったく興味が無さそうだった。


「わたしは気持ちよくお昼寝ができる場所が見つけられたらそれでいいので」


わたしが答えを追加しても、椎葉先輩は同じように、興味なさそうに相槌をうった。ゆっくりと捲られるページの音とともに、わたしはまた眠った。

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