14.タイムリープでした。
2018年:12月2日
はい。
なんとか落ち着いた状態に戻れたから、とりあえず日記をつけることにする。
兎にも角にも情報整理が第一だ。
一軒家の廃墟の中でほぼ丸一日、訳が分からなくて狼狽したり泣いたり一人で逆ギレして暴れたり眠ったりボーっとしたりまた泣いたりして過ごしていたのだ。
そして今は深夜でそろそろ日付が切り替わる頃だし、ここまできて冷静にならない方がおかしい。
まず一番大切な事実として挙げられることは、俺が『時を遡った』ということだ。
正確に言えば2018年の12月8日の夕方から、その6日前である12月2日の早朝まで戻ってきた。
これは手元にあったスマホの日付を確認して分かったことだ。
日記を確認してみても12月2日以降は記載されていないことから、やはり俺は6日後の記憶を保有したまま6日前にタイムリープしてきた、と考えて間違いない。
そして問題の12月8日に何があったのか、だが。
あの日は俺のいる河川敷に闇神が現れた。
かなり怒りを露わにしていて、俺を庇おうとしてくれたおじいちゃんを『よくも夜奈美をそんな汚ぇ手で!』と言いながら刀で斬り殺してしまった。
彼の眼にはおじいちゃんが誘拐犯にでも映っていたのかもしれない。
その惨状を目の当たりにして俺は腰を抜かして動けなくなり、そんな俺に歩み寄ってくる血塗れの闇神を止めようと、現場に駆け付けた零矢が乱入。
二人はそこから戦闘になり、最初は互角だったものの次第に零矢が優勢になったのだが、顔をひきつらせた闇神が懐からナイフを取り出してそれを零矢の肩に刺した途端に零矢のガントレットが消滅してしまい、身体能力もなぜか一般人並みに下がってしまった零矢の心臓に、日本刀の鋒を突き刺した闇神が勝利。
そのまま息絶えてしまった零矢を足蹴にした闇神に笑顔で詰め寄られた俺は、嫌悪感と恐怖で錯乱し叫喚した。
すると俺のスマホが光ったので咄嗟に手に持ってみたら──あら不思議、いつの間にか6日前に寝床にしていた廃墟の中にいるではありませんか。
ということでタイムリープしました。不思議だね。
……うん。
いや、自分でも今の俺が相当頭のおかしなことを言っている自覚はあるんだ。
でもタイムリープしちゃったのは変えようのない事実なんだよな。
まだ闇神臨十とは出会ってないし、河川敷でホームレス生活もしていない、まだ髪がフワフワな逃亡生活初日にまで戻ってきちゃったんだわ。
なんかもう超常現象とか意味不明な事態に巻き込まれすぎて、一周回って逆に冷静になっちゃったよね。
これ多分あの地下室で投与された『時空獣の遺伝子サンプル』とか言われてたアレが原因だろ。
時空獣ってやつが名前の通り時空を超えられる力を持っているとして、その遺伝子の一端を得た俺も限定的なタイムリープができるようになった、とかそんな感じだ。たぶん。
あと、スマホにはいつの間にか知らないアプリが一つ増えていた。
アプリの形はしているけど全部真っ黒で、押してもスマホがちょっと震えるだけで反応がないので調べるのは無理そうだ。
ともかく、せっかく戻れたのならば目的は二つ。
まずは両親と悪の組織に見つからないこと。
それから闇神に零矢(とついでにホームレスのおじいちゃん)を殺させないこと、だ。
戦闘を見た限り闇神は驚異的な身体能力と鋭い日本刀の他にも、他人の能力を消せる不思議なナイフを隠し持っているため、アレを使われてはさすがの零矢でも勝ち目はない。
ならば最初から彼らが戦う場を作らなければいいのだ。
その第一歩として、まずは明日邂逅するはずの闇神に見つからないように頑張る。
零矢の傍にいない、且つ闇神とも行動を共にしていなければ、二人が戦う理由もない。
あと闇神のことはもう生理的に無理なのでアイツに従順に従う、なんて選択肢も無い。
よし、とりあえず明日は全力で逃走して
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