第10話
※
ショッピングモール内に時計はない。
デスゲームに時間制限がないのは不幸中の幸い。だが、これでは朝なのか夜なのか、目覚めてどれほど時がたったかも不明。とても不便だ。日頃病院で規則正しい生活する身では、余計にそう感じる。
正確には不明だが、恐らく三時間程過ぎただろう。資料を読んでトイレ休憩を終えた頃合いに、中央に位置する椅子の間に戻ってきた。
安路と恵流の二人が最後だったらしい。これにて全員集合となった。
薄暗い部屋の中、各々の面持ちは輪をかけて暗い。互いに顔を合わせず
だが、その一方で、ある程度の収穫もあったらしい。守は銀色の金属バットを手にしている。同様に、春明の手にも銀色に光る何かがあった。
「満茂さん。そのバットはどこで?」
「ペットショップだよ」
「はい?」
冗談にしか聞こえなかった。金属バットとペットショップ、繋がりが全く見えない組み合わせだ。
しかし、本当らしく、
「うるせーな。マジで籠の奥から出てきたんだよ」
守は鋭い怒気を放ってくる。彼曰く、ペット用の籠の裏にあったらしい。しかも、籠の中には、参加者全員の切り抜き写真が入っていたとこのこと。悪趣味である。
疑って申し訳ないと頭を下げ、安路は気になるもう一人へと向き直る。
「瀬部さんが持っているのは?」
「コレ、ナイフですよ」
チャキチャキ
切っ先を突きつけられ、安路は怯んで後ずさる。はっとした春明は「ごめんなさい、ですね」と、鮮やかな
「それで、ナイフは一体どこに?」
気を取り直し、発見場所について質問する。心臓の
「ワタシ、お腹空いた。だからご飯屋行きました」
空腹でフードコートを訪れると、並んでいるのは四つの看板。
「これまた変な場所に……」
「そ、それならオレも見つけたぞ」
続けて証言するのは織兵衛だ。
しかし彼は武器らしき物を持っていない。
「ピコピコの中に、ゆ、弓矢みたいな、鉄砲みたいなのがあった。け、景品だから取れなかったけどな」
どうやらゲーム
「それは多分ボウガン、正式名称はクロスボウね」
恵流が武器について補足を付け加えてくれる。
話によると、UFOキャッチャーの景品で、ぬいぐるみに混じってクロスボウがあるらしい。
安路の中で段々と、不安が細菌のように増殖していた。
話を纏めると、施設内には武器があり、わざわざ隠して置かれている。籠の裏、冷凍庫の中、UFOキャッチャーの景品。それらを用いて殺し合え、という主催者の思惑が見え隠れする。
殺し合いなんて、絶対に駄目だ。
安路は頭を
「このゲームについて、みなさんに聞いてほしいことがあります」
三時間強、情報を整理し導き出した、デスゲームについての考察だ。
まずは、そもそも本当にデスゲームかということ。これについては確実だろう。
突然の拉致監禁、作り込まれた会場、そして隠された武器。お膳立てからして、デスゲームなのは確定。施設内の監視カメラからして、主催者達は別室で様子を見ている可能性が大。その目的は苦しむ姿を鑑賞する
しかし、ある程度の推測は可能。
「まだ仮説ですが、二つほど可能性が考えられます」
安路は抱えた本を降ろし、左手を挙げ、手錠からぶら下がる
「まずはこのフィギュアについて。モニターにある通り、僕達それぞれに様々な生き物があてがわれていますが、これらは――」
空いた右手で拾い上げるのは“解説・七つの大罪”という本だ。題名の割に表紙はポップ、可愛らしいキャラクターが描かれている。擬人化された悪魔らしい。
「――キリスト教用語の“七つの大罪”を表しているのではないか、と」
恵流以外の反応は
照れ隠しに頭を一つ掻くと、安路はページを中程まで
それぞれの罪に対応する悪魔、幻獣、そして生物。
本の記述では諸説あるとしつつ、罪と生物について、以下のように載せられていた。
嫉妬――
強欲――
暴食――
怠惰――
憤怒――狼。
傲慢――
色欲――
「この“七つの大罪”が、モニターの一文とリンクしていると思われます」
“六名の罪を悔い改めし者が座する時、残されし最後の者が光を臨める”
この文の参加者を罪人扱いする
「次に、これらの生き物が毒、あるいは人に害なす生き物である点が気になります」
本では罪に対応する生物について、他の種類も列挙されている。犬や猫、豚や牛などとする説もある。
しかし、何故か選ばれたのは有毒、有害な動物ばかりなのだ。
「蛇や蜘蛛、蠍は毒を持つ生き物として有名ですし、蠅や蝸牛、蝙蝠は病原菌や寄生虫の媒介になります。狼は少し苦しいですが、おそらく獣害、もしくは狂犬病を表しているかと」
「前置きはいいから、はよ言えや」
中々結論に辿り着かず、守が催促してくる。
「ええと、つまりですね。これは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます