第32話 外伝A 容赦しなくていいからね!

「いい様だ。汚れたハイエルフの偽女王よ。」

 至る所傷だらけだけど、はりのある白い肌も、見事な銀髪も、魅力的な容姿も、整った顔だちも健在な美人であることは変わらない、憔悴しきっているけど、まだ気品を漂わせている、ハイエルフの若き女王、ベアトリーチェは、両手を鎖でつながれ、宙づりになっていたんだ。可哀想に…。

「な、なんの用があるのですか?早く殺せばいいでしょう?」

 力なく、でも、健気さを感じさせる口調で答えた。

「お前の聖騎士、最強のハイエルフの聖騎士が救いに来るのを待っていても無駄だ。彼女が、城の城門も、結界も開け、衛兵を殺し、情報を流し、そして、お前の隠れ家も伝えたんだよ。お前の夫を寝取ったのも、その聖騎士だよ。」

 男、ハイエルフの貴族と判る、人間なら30年初め、脂がのりきった感じ、は、彼女の見事な両脚を撫でながら、彼女の絶望を誘ことで快感を感じていた。

「そ、そうでしたか…。」

 それでも、乱れることなく、彼女は返した。

「そうだよ。そして、彼女はお前を陵辱した上で殺すように、進言したんだよ。あの美しい顔を歪めてな。だが、まだ、きれいなうちに私が可愛がってやろうと思ったのさ。優しい男だっただろう?明日になれば、何人、いや何十人の男達、オーガやオークも呼んである、に滅茶滅茶に犯された挙げ句に、八つ裂きにされるんだ。今日、一晩、たっぷり、女の喜びを味あわせてやるよ。感謝しな。」

 舌なめずりしながら、定番の場面、テッパンの陵辱場面だね。

「見事な脚だな。柔らかで…。そそりたつな。」

 彼は、その美しい両脚を撫でまわし、舌を這わせ、さらに…まで指を…。

「感じているようだな。淫乱な元女王陛下?さあ、これからが本番だ。」

 彼は、濡れた指を舐めながら、さらに、濡れた体液を彼女の両脚にすり込んだ。そうしているうちに、

「あれ?」

 突然、感覚がおかしいと思った直後、ドサっという音と何かが噴き出すような音が。それが、自分の腕が床に落ちた音で、噴き出す血の音だと気がついた時には、首が飛んでいたんだ。

「遅くなってすまん。」

 ロレンツィオ君、登場!

「ろ、ロレンツィオ様!」

 素早く、鎖を解いて床に降ろして、ロレンツィオ君が抱き締めると、ベアトリーチェちゃん、涙を流して、彼女からも抱き締めたんだ。

「…」

 もう声にならなかった。会いたかった、会いたかった…、それだけが頭の中を木霊していたんだけど、さっきまでのことが頭に蘇っちゃった。

「わ、私はもう…。」

「愛しいベアトリーチェしか、ここにはいない。」

 また、強く抱きしめて~。ベアトリーチェちゃんも感動して、また、強く抱きしめ返して~。幸せそうだね。

「とにかく、ここから出よう。」

「で、でも…。」

「大丈夫。この城の中の、お前の敵は全て殺し尽くした。今いるのは、私の仲間と少ないが、お前への忠誠心を忘れていない少数の家臣達、そして、奴隷が2人だけだ。」

「仲間?奴隷?」

 彼女は、一寸悪い予感がした。

 彼に、お姫さま抱っこされて入った王の間には、女魔王ラウラちゃんとマリエッタちゃんがいたんだ。ついでに勇者サルヴィアちゃんがいるのが目に入ったんだ。十数人のエルフ達の安堵の声も聞こえてきた。そして、跪いたマリエッタちゃんとサルヴィアちゃんの額に、奴隷紋が浮き出ているのが見えたんだ。


「また、あなたでしたか?」

 僕を見た、彼の第一声は、それだったんだ。ひどいだろう?

「前の世界と同じ設定の、しかも、もうヒロイン達が暴走している世界ができちゃったんだよ。ここにいる旧知の女神の担当する世界なんだよ。僕が応援に、というわけでさ、そうすると君を、というわけなんだ。だから、頼むよ。今回は、チート能力をふんだんに、好きなだけつけるし、ヒロイン達をハッピーエンドに、とか言わないから。もちろん、選択の自由はないからね!頼んだよ!」

 それでも、実に嫌な顔をしていたんだ。だから言ってやったんだ。

「このままだったら、ベアトリーチェちゃんも、ラウラちゃんも、クロランドちゃんも、彼女達に惨殺されちゃうけどいいのかな~?彼女達と結ばれるようにしてあげるよ?」

 ここまで言ったら、彼、大きなため息をついて、

「分かりましたよ。状況を、まず詳しく教えて下さい。」

と快く同意してくれたんだ。それで…。


「何故、あなたが…魔王…ラウラ様…がここに…。」

 とりあえず、一室でロレンツィオ君、ベアトリーチェちゃん、ラウラちゃん3人は、椅子に座り、テーブルを囲んで、今後のコトを話し合うことになったんだ。マリエッタちゃんとサルヴィアちゃんは、床にうずくまっていた。

「我も同じだ。あの糞魔王に、大敗して捕虜となり、処刑の前に陵辱されかけたところを、ロレンツィオ様に救われたのだ。敗因は、そこなる勇者があの糞に味方したことと我が夫にした男に裏切られたせいじゃ。ハイエルフの女王様と、あまりにも同じで恥ずかしいくらいだ。」

と、本当に情けないとロレンツィオ君への感謝というか会えて嬉しいという顔だったので、嫉妬はしたが、仲間意識に近いものも感じたベアトリーチェちゃんだけど、“私より先に…。”と皮肉の一つも言いたくなった、まあ、しかたがないけどね。でも、ロレンツィオ君はそれを言わさなかったんだ。

「トスカーナ王国を守ることも含めて、順番を選択したんだ。皆を救えるように、と思って…。」

 苦しそうなロレンツィオ君の顔を見て、ベアトリーチェちゃんは文句は言えなくなっちゃった。

「では、これからどうしたらよいでしょうか?この身を、我が国を救っていただいた恩を、微力ながらも報いたいと思います。」

とベアトリーチェちゃんが言えば、ラウラちゃんも、

「我も同じだ。」

と気持ちは同じ。

「でも、お国は…それにラウラ様の国も…。」

「そうじゃ。やはり、トスカーナ王国を救うのが先決であろう。だから…。」

とはいえ、女王としての責任上、自分の国を守ることを優先して欲しいとも思わざるを得なかった。

「そのことだけど、4つのことを同時、完全ではないけれど、に進めることを考えている。この二人も使うが、二人にも協力して欲しい、4つ目をとりあえず、救うために。」

 彼は、一寸、躊躇しがちな言い方で、勇者、聖騎士もチラっと見ながら言った。

「もちろん、ロレンツィオ様がご命じになるなら…。でも、4つ目とは…あ!」

「?…。あ、あの女騎士か?」

 分かりましたよ、と互を少し睨みながら、2人は首を縦に振ったんだ。

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