第29話 決戦・・・いや殲滅だ

「ボルジア。今日までの八面六臂の活躍ご苦労だった。」

 ロレンツィオ君、跪くボルジア兄妹に、言葉をかけた直後、この方面の総司令官の任を解任し、別の年配の将軍をつけることを明らかにした。

 ひど~い、これまで軍事に、外交に、政治(駐留地管理等)に奮闘してきた二人にそんな仕打ちはないんじゃない?見損なったよ!な~んてね。

 これまでの功績から、チューザレ君の実績は十分だということで、正式な将軍として位を昇進、主力軍の司令官として改めて任命したんだ。ロレンツィオ君が来た以上、陣頭指揮しているわけだから、方面軍指揮官は飾り物、名誉職みたいなもの。チューザレ君が、戦いで功績をあげることで、さらに昇進させるというのが、ロレンツィオ君の目論見なんだ。ちなみに、チューザレ君の後任のおっちゃんには、そのことを実感させないように、リップサービス、褒章も授ける予定になっている。虚飾より、実質を望む兄妹の希望も満足させているんだ。彼らが嫉妬されないように、というのがロレンツィオ。ギケイ君は、ロレンツィオ君の予備隊。予備隊といっても、ここはと言う時に投入する部隊という意味だよ。元海賊、元魔族騎士、元狼系獣人義賊、元海人騎士が闘志満々控えて・・・と、あれ?ギケイ君、一人増えていない?ベンケイ君、彼は大丈夫~?

 戦列艦を主力とした艦隊と同盟軍艦隊、それに各島の拠点を攻撃する又は拠点を防衛する陸兵、今までにない銃砲、銃砲・・・。レオナルド君達が開発、改良した統一され、威力を増したものばかりなんだ。魔族、エルフ、獣人たち、オーガやらも加わっている。しかも、兵器だけでなく・・・。


 ちなみに、この最中、スレイマン大帝のロードス島攻略は続いていたんだよ。圧倒的大軍を相手に、ロードス島騎士団は大奮闘。各国の援助、時には空手形が多かったけど、もあって、ひとつまたひとつと砦を失いながらも、想像以上各砦は持ち堪え、多大の損害を与えていたんだ。その中で、実はトスカーナ王国の微々たる援助が大いに役立っていた。色々と理由をつけて、イスタンブル帝国への言い訳で、送られる物資は、空手形ではなく、確実に送られるものだったんだ。しかも、トスカーナ王国軍騎士さん達は、華やかな戦いではなく、持久戦、剣や槍よりツルハシ、シャベルを使うことを嫌がらず、黙々と務めていたからなおさらだったんだ。スレイマン大帝は、大いに怒って、笑ったんだ。


 そういう中だから、海の魔王デュークは、自分へ向けられる兵力を過小視していたんだ。また、時期も、行動も遅くなると考えていた。そして、ゆっくりとオルシーナちゃんを弄んでいたんだよ、可哀想に。彼女は、淡々と応じるしかなかった、執事君と侍女ちゃんを守るために、人間・亜人の捕虜や奴隷の取り扱いを緩やかなものにするために、喘ぎ声をだし、快感を感じなければならなかったんだ。その意味では、彼女は色々な人々の役にたっていたんだよ。彼が侵攻の報を聞いたのは、まさにその時だったんだ。弄んでいたオルシーナちゃんを振り飛ばして、飛び出していったんだ。力なく座り込むしかないオルシーナちゃんは、可哀想だったね、実に。直ぐに、執事君と侍女ちゃんが駆け付けて来たけどね。

 前哨戦は、トスカーナ王国海軍の戦列艦を中心にした艦隊、もちろん先遣部隊だよ、と魔族の船団との激突からだった。

 その艦隊の前衛を率いていたのは、ギケイ君で…、あれ、ひいふいみいよう…、4人?また、一人増えていない?…、さらにその先頭には勇者ちゃんがいた、がんばってね~。

 魔法攻撃だ、矢だ、投石だ、斬り込みだの前に、レオナルド君達の銃砲の威力と数で魔族船も魔海獣も圧倒。船上は負傷者の山、崩れるマストや砕かれる船体、燃え上がる帆、船上、血を流しのたうつ魔海獣…。それを巧みに指揮するギケイ君。

「まあ、待っていて。」

「勇者様。今少し、お待ち下さい。」

と傍らの4人に、そして勇者ちゃんに。

 海戦は、トスカーナ王国海軍側が、完全に押し気味に展開していた。

「殿。魔軍の援軍の船団が。」

とベンケイ君が望遠鏡で見ながら、報告。

「あ、あれ、小魔王クラスの旗よ!ギケイ様!」

 ベンケイ君から望遠鏡を借りて目を接眼して、叫ぶ…あれ?君だれかね?魔族…でも、一寸、お姫様っぽいけど…。

「そろそろ、肩慣らしお願いします。」

 彼は、そう言うと、艦隊の陣形を変えた。この当たりの指揮も巧み何だよね。お~、東郷ターン!来援した敵艦隊の魔法攻撃が先頭の旗艦に注がれるけど、勇者ちゃん達が乗りこんで行く、ギケイ君もベンケイさんら精鋭を連れて続く!小なりとも艦隊の指揮をしながら、自分も斬り込んで…本当に大したものだよ。

 勇者ちゃんの活躍もあって、魔王軍船団の前衛は、壊滅。姿を現したトスカーナ王国海軍主力の前に、魔王様はおのれの船団に退却を命じたんだ。

 その後は、追撃だよ。魔王軍の防御の拠点への攻撃、そのひとつづつを潰していかなければならない。でも、それを見事に行ったんだ。

 要の拠点に押し寄せた艦隊が砲撃と魔法攻撃する中を、レオナルドの作り上げた上陸用船が勇者を先頭とした上陸部隊が、やはりレオナルド君の改良した小型、軽量砲を小銃等とともに携えて上陸した。堅固なはずの、守るのは精鋭たちのはずなのに、簡単に落ちてしまった。他の拠点は、ギケイの軍がいくつかを攻め落とし、他は無視して進んだ。兵力を集中しようと、各拠点の兵力を撤収、移動しようとしても、次々に途中で船が撃ち沈められてしまった。さらに、策が全て先手を取られてしまった。あ、それ僕がロレンツィオ君に教えていることだからね。


あー、ロレンツィオくん、危ない!次々に拠点を陥落され、救援の船団、魔獣も途中で壊滅。さらに、支配下の魔族の一部族も、前々から、その支配に不満を持っていた、ギケイ君の新米妻ちゃんの部族、ロレンツィオ君についちゃって、焦っていた海の魔王フリート君は、精鋭による本陣への奇襲に打って出たんだ。

「スドーン!」

 ロレンツィオ君の短銃が火を噴いた。迫ってきた魔族騎士の一人が倒れた。レオナルド君、グッジョブ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る