第28話 最終戦前夜
「ボルジア閣下。勇者様、。聖女様をお連れ致しました。」
さすがに地方貴族ながら、名門の元悪役令嬢。礼儀作法が様になっているね。庶民出身の勇者様、聖女様だとこうはいかないね。彼女に先導、紹介されて勇者ちゃんも聖女ちゃん達も跪く。なかなか堂にいってるよ。
「遠路はるばるおいでいただき、ご苦労でした。」
海の魔王との戦いの準備の全てを一任され、同盟国との外交、調整、艦船の整備、魔王軍の侵攻の撃退に活躍していたチューザレ・ボルジア将軍は、立ち上がり深々と頭を下げた。それは、彼の隣に立つ、彼の妹のルクレチアも同様だった。
"ついに、ロレンツィオ殿下自ら参陣なさるということか。"兄妹は目でハーモニーしていた。
"しかし、本当にあの方はどこまで・・・。"
宰相コルベール、マキァベリの推薦した人材、はロレンツィオの指示により、産業振興策を進め、トスカーナ王国の国力を高めてきたが、海軍力、多数の軍艦の建造も進めてきた。もちろん、ロレンツィオ君の指示だよ。二人には、このことも予想していたのかとも思えて、少し怖くなるほどだった。まあ、そうだけどね。"いや、その先があるかもしれないな。""さらにおそろしいお方・・・。"え?そうなの?後でよく聞いておこ~と。
艦船は出来上がっても、経験を積んだ船員なしには猫に小判、張子の虎でしかない。その育成にボルジア兄妹は任されていた。これには、大海上貿易かつ大海軍国ベニス共和国からの人材の提供、訓練の協力を受けた。
「これも殿下のおかげですね。」
「まるで、このことも、このための手立てだったとはな。」
ロレンツィオ君が、イスタンブル帝国のハーレム救出の際に、ベニス共和国の功績を、自分の功績にせずに正直にカリフに伝えたことへの礼でもあった。
海千山千の連中の共和国の幹部の連中は、しかし、それだけで動く者はいない、もちろん礼には礼を支払うことは心得ていたが、ロレンツィオ君が彼と共に行動することの、同盟することが共和国の利益になる、好ましい交渉相手とみているんだよね。この兄妹にも、美男美女の、彼らはみているんだよね、その主である・・・良き循環だね。その上、この二人、そのこともよくわかっているんだ。感心、感心。
とっころ~でー、最初のヒロインにしてく、最後のヒロイン、オルシーナちゃんはどうしているかな?
「お嬢様。諦めてはいけません。ロレンツィオ殿下が、お助けに参られます。」
「そうです。殿下は、オルシーナ様を婚約者と、今でも思っているし、結婚する意志は全く変わっていない、今後も変わらないと私達に言われました。」
執事君と侍女ちゃんが、必死に彼女を勇気づけようと、力づけようとしている、忠義の鏡だね。すっかり生気を失っているオルシーナちゃんは、小さく、自虐的な笑いを浮かべて、
「ありがとう。でも、ロレンツィオ殿下にあれだけのことをした私が…。あなた方だけでも生きのびて…。」
と、やはり力なく言った。
「お嬢様!」
二人の目には涙が流れるしかなかった。実際、彼女達は二人を助けるために、海の魔王デューク・フリードの機嫌をとるために、御菓子を一生懸命作り、夜はベットの上でのご奉仕をし、ロレンツィオ君への悪口雑言での人間、亜人の諸国、部族への檄を飛ばしていたし、魔王の利益、魔軍の強化になる前世知識、本当は違うけどね、を提供してきていたんだ。
それに、彼女には二人の語るロレンツィオ君が信じられないんだ。彼女にとって彼は、どうしても好色で、自分勝手の、軽薄で、愚かな、嗜虐趣味の、無能、横暴、早漏、インポ男でしかなかったから、彼の助けなど怖気を感じるものでしかなかったんだ。彼の傍に行くくらいだったら、魔王デューク・フリードの方がいいと思っているんだ。ただ、この魔王の正体や野望、真意を知ってしまっているから、人々への厄災に心を痛めてもいたんだけどね。海賊王の妻になり、誰にも支配されない海賊女王として、海の魔王の妻として自由な海を守る守護する女王となると小説ではなっているんだ、矛盾や突っ込みどころは、めちゃ多いけどね。最も、強きを挫き、弱気を助ける海賊なんて存在しないけどね。
ロレンツィオ君の艦隊には、唯一神教徒の海賊達も混じっていた。クロランドちゃんが連れてきた連中。彼らも、船の扱いや海になれていたからね。トスカーナ海軍は、普段は対立するベニス共和国と唯一神教徒により訓練を受け、彼らとともに船を動かしていたんだよ。対立や争いにならないように、上手く配置したこともあるけど、血の気の多い海賊達をクロランドちゃんが、見事で、厳しい統率をしていた結果でもあるんだよ。ボルシア兄妹とも肝胆相照らせる仲になったし、ギケイ君とも…あれ、寄りそう女が、また一人増えていない?ベンケイ君の悩める顔…。まあ、惚れられた結果だしね、新人さん頑張って、戦ってね。
「ロレンツィオ殿下が、出陣なされるそうだ。ついに決戦・・・いや、海の魔王の殲滅の開始だ。」
チューザレ君は、ルクレチアちゃんに手紙を手渡しながら言った。いよいよ最終段階だね。
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