第27話 女子会?
ロレンツィオ君の妹のベロニカちゃんは、兄の5人妻をため息混じりに見ながら、お茶を一緒に、大海戦が間近な午後の、動くと少し汗ばむくらいの陽気だが、木陰で風が通るところに座っていると心地良い、王宮の中庭の一つで、御菓子を食べながら座っていた。
「3人が羨ましいと思いましたわ。ロレンツィオ様に、戦場までついていけるのですもの。」
「私は、後方陣地にいることがさ多かったですわ。お二人は、陣頭指揮に立つロレンツィオ様と一緒で…。野営のテントの中でも、お側に…。」
「本当に羨ましいので、この御菓子に毒でもいれようかと思ったくらいですわ。」
マリエッタちゃんの手が止まった、ドーナツを口に入れかけたところで。
「冗談ですよ。今、そんなことをするくらいなら、前線に送ったものにいれてますわ。」
イッポリートちゃんが邪気のない笑顔を浮かべたので、マリエッタちゃんは、ドーナツを一口かじりった。口の中に甘い、甘美な世界が現れた。
「それだけ、お二人が羨ましいということですわ。」
ヴァーナちゃんが、バトンを受ける様に言った。それに、マリエッタちゃんとサルヴィアちゃんは、表情を曇らせた。
「ロレンツィオ様の心には、別のお方達が・・・。」
サルヴィアちゃんが呟くように言って、マリエッタちゃんはもぐもぐしながら頷いた。
「オルシーナ様?」
トルナちゃんが問うと、二人は首を振った。
"あらあら、私が助けてあげないと。もう~、ロレンツィオ兄さま、貸し一つよ。"
「あなた方。ロレンツィオお兄様と、あの方々との関係は、いわば大人の恋ですのよ。妻として愛されているあなた方とは、異なるのですよ。」
“まあ、どちらがどう違うかは、分からないけど、本当は。ただ、立場からは、結婚しない方がいいのは確かなのよね。勢いよ、ここはもう一押し!”
「だから、あなたがたがロレンツィオお兄様を愛するなら、お兄様を助けることね。お願いよ!」
厳しい表情から、できるだけのとっておきの優しいお姉様の笑顔。さっすが、ロレンツィオ君の妹。役者!詐欺師!嘘つき!こらこら油断してると、“お兄様を殺そうとしていたくそ女達が~!”なんて顔に出るぞ~。まあ、五人とも、そんなことに気がつかないで、力強くうなずき合っているけどね。
「後はオルシーナ嬢を助けるだけですわね。」
そうそう、彼女がそもそもの始まりなんだよね、成り行きの形から言えばね。かならずしもそうでないけどね。
「オルシーナ様は、どうしてロレンツィオ様を嫌って、家出などしたのでしょうか?」
イッポリートちゃんが呟いた。もともとオルシーナちゃんから、ロレンツィオ君を寝取ることを、悪い表現でいえば、父親に命じられていたわけだから。複雑な気持ちになった。"そして、私も続いて家出したわけだったっけ?"
「私も、わからない。どうして、ロレンツィオ殿下をあんなにも憎んだのか?」
「同じよ。私も、今思うと分からないけど。」
ハイエルフの聖騎士ちゃんと勇者様が、ぼそりと言った、少し苦しそうな顔で。
「みんな同じですよ。過去を後悔するより、これからロレンツィオ様にいっぱい甘えて、いっぱい尽くしましょう!」
悪女を極めただけのことはあるね、その場の沈鬱になりかけた空気を一掃しちゃった、感心、感心。
「そうですよ~。まずは、御菓子を食べて、これからのこと…、海の魔王を倒し、オルシーナ様を救い、私達の中に入れることに知恵を搾りましょう!御菓子は、頭を働かせる力になるんですから。」
聖女様も、いいことをいうね。みんな、御菓子に手を伸ばした。糖類を採って、頭を働かせてね。
“全く、全員本妻のつもりで…。まあ、役に立つけど…、今まで自分達がやったことを…。”あ~あ、そんなこと考えないの。甘い物を食べて、そんなことは忘れなさい!それが、ロレンツィオお兄様のためになるんだからね。
「私は先行して、ゲンジ様、チューザレ将軍のところに赴いて情報の収集をします。ゲンシ様の愛人は、元海賊や魔族ですから、いろいろ分かるし、現地でちまたの情報も集められると思いますし。」
「魔王相手なら、私が先頭に立つ必要がありますから、私も同行します。マリエッタ殿、殿下の護衛、よろしくお願いします。」
「分かりました。心配はいりません。」
「私は、聖女として勇者様に同行した方がいいと思います。」
「では、これから必要になるものを準備いたしますわ。」
「オルシーナ様を無事助けるために。」
「この身に代えても、なんて騎士的な気持ちは持ってはいけないぞ。」
「代わりにあなたが死んだら、ロレンツィオ殿下は悲しみますし、オルシーナ様も後で苦しみますよ。」
「あの方は、気が付いてからも、魔王に捕らえられ・・・私などよりずっと長く苦しまれているのね・・・。」
「私達5人で、あの方を本当に救う手助けをいたしましょう。」
頷きあう5人。いいね。そして、両手を載せあって誓う5人。さらに、
「お願いね。」
と両手を置いて。ロレンツィオ君、お兄様にグッドジョブだよ。
さあ、忙しくなるよ。あっと、残ったお菓子貰っていくね。お茶もね。このくらい、最高神様の役得で許してよね。トレナちゃん、イッポリートちゃん、美味しいよ。だ・・・だから、もうちょっと、あ、お茶もね。がんばってね~。
これが終われば、とりあえず一段落なんだよね。え?どこから・・・、あっちは大丈夫かな、また、新たなにたような世界が生まれたようだけど。まあ、こっちにも、僕にも関係ないか。ん~、また、押し付けられるかな?え?同じ…考えるのはよそう!押し付けられから悩もう。今を解決だ!ロレンツィオ君!
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