第23話 モフモフだけが真実でした。
銃砲の、これでもかの射撃、手投げ弾を持った兵士を先頭にして、遮二無二に砦を石鎚、しかも機械仕掛けので、で突破口を作って雪崩込むトスカーナ王国軍に、砦は次々に陥落、炎上。無茶な攻撃には、意外に砦は弱いんだよね。まあ、攻撃用の堅固な野戦陣地が周囲に幾重にも築かれ、攻城道具も、火力も質量ともに充実、罠や防御策を無効にする装備、それらが圧倒的だしね。ダビンチ村のレオナルド君、ロレンツィオ君にまた褒められるね。彼、多数の人間を使って進めることも得意、いや、本当はこっちの方が得意だったかも。彼と彼のチームが作った銃砲から弁当箱まで大活躍!
「あの馬鹿女。陽動ぐらいにはなると思ったのに。」
と愚痴を言ってしまったイッポリートちゃんだけど、
「トスカーナ王国軍のアキレス腱は、時間よ。1日でも早く私達を攻め落とさなければならない。ここに数万の大軍を集中できないわ。国境の砦も手薄になっているはず。私達が粘れば、東西ゴート神聖帝国も動き出すわ。だから、遮二無二に攻め寄せるけど、砦内に侵入されても、後続を断てば、孤立無援の罠にかかった獲物、慌てずに対処すれば守りきれるわ。」
流石にイッポリートちゃん、よく分かっているね。でもね、ロレンツィオ君はそんなに簡単に行かないよ。それに、君の周囲はもう聞いてないよ。
「どうでもいい!お前の講釈は、時間の無駄だ。お前の父親はいつ寝返るんだ!早く寝返りをさせろ!」
「今は、無理よ。蜂起しても、周囲を取り囲まれるだけ。攻めあぐねて、動揺した時じゃないと…。」
その通りなんだけど、
「五月蝿い!早く奴らの後ろを突かせろ!明日、動かなければお前を八つ裂きにすると伝えてやる!」
「え?一寸おちつ…い…て…え?…誰?…何?」
震えるイッポリートちゃん。それは次第に怯えたように震え始めることになった。今までも、時々見えていたよね?無理やり否定して、忘れてきた、すぐにそれは見えなくなっていたからそのままにしていたけどね、ことなんだよ。そして、彼女は両手を後ろからねじ曲げられて、押さえつけられちゃった。
「い、痛い!や、止めて!」
何とかそれだけは言えたイッポリートちゃん、ピンチ~!
「まずは、こいつの指を…小指を切り取って、父親の陣地に送りつけてやれ!次は耳、そして、目、それでも行動を起こさなければ、首を送るとな!」
叫ぶように命じると、何故か彼は笑いだした。残酷な表情、嗜虐的な笑みといったらいいかな。周囲の連中も、それに和して笑った。特に、何人かの女達は、本当に良かったというように笑った。その彼女達を見守るように、ほっとした表情をみせる連中もいた。
“女よね?だ、だから、彼女達よね?その侍女達?メス?区別つかない…。”イッポリートちゃんは、混乱と恐怖の中で、そんなことを思っていたんだ。
「早く、誰か、このクソ女の指を切り落としなさいよ!」
今度は、腕をとられ、テーブルの上に手を押さえ込まれて、指を開かせられたちゃった。短剣を逆手に握った男?オス?。狼顔の獣人、彼女の知るはずの彼らではない、一般にいう獣人ではない、男が、いやらしい笑い顔をして近付いてきちゃった。
「この女、漏らしちゃった?」
仕方ないよ、そんなに恥ずかしがらないでね、イッポリートちゃん。
「へへ…。一寸の我慢だぜ。」
大砲の発射音、砲弾が建物を砕く音が聞こえている中で、彼らは、僅かな間の楽しい時間を過ごしていた。でも、それは突然終わったんだ。
「させるかー!」
「イッポリート様。ご安心を!」
「イッポリート様から、汚い手をどかしなさい!」
現れたのは、勇者様、ハイエルフの聖騎士様、そして聖女様が、イッポリートちゃんの前に、たちふさがった。あ、もちろんその前に、勇者様と聖騎士様が、イッポリートちゃんを押さえつけていた男…雄?達を蹴り、殴り、投げ飛ばして、イッポリートちゃんを解放したんだけど、一瞬のことで周囲の者達でも、いや本人すらも何が起こったのが分からなかったんだよね。
「安心して下さい!」
聖女様が、自分とイッポリートちゃんの周囲に防御結界を張ったんだ。
「一寸ばかり、悪いワンコ達に厳しい躾をなさって下さい、お二人とも。」
「う~ん?こんな性悪ワンコは、かなりお仕置きしないとダメだね?」
「そのくらいでは、足りないのではありませんか?動けないくらいにした方がいいのでは?」
3人は、イッポリートちゃんが目を白黒させている前で、余裕で軽口を叩いてちゃった。
でも、彼女達が誰か分からない彼らは、
「な、何だお前たちは?押さえ込め!」
「何やっているの?この売女共を皆殺しにしなさい。」
「火球で焼き殺せ!矢だ!銃はないのか?槍だ、矛を持て!」
勇者様と聖騎士様は、不敵な笑いを浮かべて飛び出しちゃった。ああ、聖女様もやる気満々の顔。
勇者様の斬撃で、数人が真っ二つ、その倍の人数が倒された、飛んでくる銃弾も、矢も、槍も斬撃の襲撃破て弾かき飛ばされちゃった。火球、衝撃波など複数の魔法を飛ばしながら、次々に斬り倒していく。槍を揃えて突進する1隊も、火球も、拳に込めた一撃も、防御結界に弾かれ、跳ね返るような衝撃で吹き飛ばされちゃった。
数分で、大広間には、首領と彼と守る、守られるようにして周りに立つ…メス?達、その他十数人だけになっていたんだ。軍勢、味方ではない、の足音が聞こえてきちゃった。彼らは、慌てて消えちゃった。
「お、お嬢様~!」
声をハーモニーさせて、兵士姿のかつてのイッポリートちゃんの執事と甲斐甲斐しく、やはり兵士姿の侍女が駈け込んできた。
「あ、あなた達、戻ってきてくれたの?」
涙目のイッポリートちゃん。
「申し訳ありません。私に力がなく…お嬢様を助けられず…。」
となく2人。
「え?私を置いていったのではないの?」
勇者様、聖騎士様、聖女様はうなずき合って、彼女に、彼らが瀕死の重傷の身を崖から落とされたこと、レイプの上奴隷に売られたこと、それをロレンツィオ君が助けたことを、順序立てて、分担して説明した、いいチームワーク、コンビネーションだよ!
イッポリートちゃんは、
「ごめんなさい。私は、あなた方が私を残して帰ったとばかり…。私が家出さえしなければ…。」
と号泣。2人は、彼女を優しく抱き締めて、やはり涙、涙。
3人は、またうなずき合うと、
「ここで、泣いてばかりいても仕方がありません。」
「残党が残っているかもしれず、危険です。」
「イッポリート様を連れて、殿下とお父上の下に。私達が護衛しますから。」
と。
3人が周囲を囲む中を、2人に肩を借りて、とぼとぼ進むイッポリートちゃん、自分の臭いが気になるには、まだ時間がかかりそうだね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます