第20話 聖女はまずお風呂で体を洗います

 聖女トルナちゃんは、浴槽につかっていた。ようやく呆然とした状態から、ひたすら涙を流すところまで、感情が回復?していた。

「私の体は、あんな奴に体の外も中も汚されてしまったのよ…聖女なんかじゃない…。」

 ひたすら、詠唱を唱えるように言い続けていた。

「何を言っているの?ロレンツィオ殿下がおっしゃったでしょう?この世に洗って落ちない汚れなんかないと。」

 勇者サルヴィアちゃんは、わざとキツメに言ったんだよ。こういう場合は、その方がいいと考えたんだ。ロレンツィオ君は、長々と彼女を慰めたんだ、かなり嘘を、彼女が分かっているにもかかわらず、入れて。彼女が敢えて、人間と魔族の和解、平和のために、それに反対する魔王の元に、体を犠牲にしても潜り込み、信頼させて情報を流していたとかを。彼女も、心の底から信じたくなるほどに。

 マリエッタちゃんとサルヴィアちゃんに託されて、魔王城を囲む砦の中に急造した浴室で聖女ちゃんの体を優しく洗い、少しきついけど、3人で入っているんだよ。

 トルナちゃん、とにかく体を早く洗わないといけない状態だったからね。そのままだと、本当に臭ってきそうだったんだよ。

 ロレンツィオ君は、もちろん、そんなことは口にしないし、マリエッタちゃんもサルヴィアちゃんも口にすることなく、

「肌。なめらかで柔らかくて、きれいですよ…。」

「きれいな、健康的な髪ですよ、本当に…。」

 あ~、この2人、こんな優しい言葉を、口調で、語りかけられるなんて~、手先も優しく、労っている感じ~、最高神様としてうれしいよ、本当に!彼女達を変えたのは、ロレンツィオ君だけどね…まあ、ひいては僕の功績かな、最高神としての仕事してるよ~、誰か僕を褒めてよー!

 すっかり洗ったトレアちゃんを連れて、薄い上衣を着せ、2人も同じような上衣を着て、ロレンツィオ君の待つ部屋に連れて行く。“聖女の心を救えるのは、ロレンツィオ様しかいない。”2人の心はハーモニーしてる。ロレンツィオ君!ため息なんかしちゃダメ、自己嫌悪なんかしてはダメだよ。君しか救えないんだからね!戦勝の祝宴は後日、ということになっているけど、夕食には、少々の酒やいつもはでない料理が、さらに量も多くだされて、皆はささやかな祝宴を上げている。ロレンツィオ君の部屋にも、少々の酒、ワインとビールかな、とつまみになるものが、小さなテーブルに置かれていた。そのテーブルを囲んで、酒を、マリエッタちゃんとトレアちゃんはワイン?ロレンツィオ君とサルヴィアちゃんはビールを飲みながら、長い話しが続いたんだ。

 トルナちゃんが、ロレンツィオ君の下で、肢体を絡みつかせて、快感の余韻を楽しんでいるのを、マリエッタちゃんとサルヴィアちゃんが羨ましそうに、同時に慈愛のこもった表情で見つめることになるのは、深夜になっていたかな?ロレンツィオ君、さあ、もうひと頑張りだよ!マリエッタちゃんとサルヴィアちゃんを、愛でてあげてね!

 まあ、結局、一生懸命、トルナちゃんの体や顔を褒め、感度の良さなどをしきりに賞賛してロレンツィオは、涙を流すトルナちゃんを、その涙が歓喜の涙に変わるまで、トルナちゃんを抱いたんだ、優しく。マリエッタちゃんとサルヴィアちゃんもそれに協力してね。2人とも、ナイスフォロー!でも、涎を流してぐったりと横たわっているトルナちゃんの横で、ご褒美をおねだりして~、2人とも意外に…。まあ、ロレンツィオ君、引き続き頑張ってあげてね。

 翌日、静にロレンツィオ君に従う、晴れ晴れしたような、何かが肩から落ちたりような表情のトルナちゃん、聖女様を見た、元従者君、ホットした顔をしている。彼は侍女ちゃんと結ばれちゃっているし、ずっと前から心配していた彼女の中の重荷のような物がなくなっていることに気がついて、純粋に従者として喜んでいるんだけどね。2人には、しかるべき地位と恩賞も与えられているしね。

「私は。」

 トルナちゃんは、ロレンツィオ君に囁いた。

「ず~と、みんなを恨んでました、ロレンツィオ殿下を含めて。前世の記憶…今では、何故か単なる悪い夢の記憶になったような…。それ以上に、聖女だから、聖女だから、何かしなければならない、するんだ、という気持ちに脅迫されるように…。だから、かえって、あの化け物の、今考えれば、辻褄の合わない話を信じて、使命感のように…なってしまったのです。今は、全てがわだかまりなく見えて、全く違う世界が見えて、皆の言葉を聞き、受け入れることができるようになりました。全てを失いましたが、勇者様、聖騎士様とともに、殿下について行きたいと心から思っています。」

 そのトルナちゃんの両手を、サルヴィアちゃんとマリエッタちゃんが優しく握って…ちょっと、3人とも百合に走っちゃダメだよ、仲がいいのは良いことだけど、あー、ロレンツィオ君、その解決法なんて許さないからね!君の奥様達は、この3人とあの3人なんだからね、浮気は認めないよ。ちゃんと、彼女達が死ぬまで愛でてあげるんだよ!

 そうそう、その顔を、今3人を見る顔、慈しみ、愛情深い、そして彼女達の体も愛でる、その顔を彼女達に常に向けていなさい。

「これからも、私のことを助けてほしい。そして、何時までもともにいてくれ。」

 その後、女魔王様、別れ際、3人に、

「ロレンツィオ殿下のことは、頼んだぞ。そして、睦み合え。」

囁いた。

 そばにいたハイエルフの女王様、耳敏く聞いて、微笑みながら、頷いた。2人の心の内、その2人を少し離れたところでチラっと見て理解したロレンツィオ君の思い、痛いくらいに分かるけど、耐えてちょうだいね、一生。ごめんね~。

 トルナちゃんは、情報を王太子ロレンツィオ殿下に情報を伝えるために…ということが伝えられていたから、彼に従う彼女の姿は、そうした目で見ていた。でも、それだけなら、愛国者とか、聖女の務めを果たしたというふうにしか見えなかったろうね。

 でも、祝勝会でロレンツィオ君や女魔王様、ハイエルフの女王様達の前に立ち、神に勝利のお礼を述べる姿は、まさに聖女、輝くように見えたんだ。その後に飲んだ酒の味は、特別に感じたんだよ、一生の思い出になるくらいに。ロレンツィオ君、よくやったね!あと、3人だよ。

 その前に、クロランドちゃんが来ていた。

 

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