第19話 聖女は待ち構えて

「淫乱女魔王に唆されているトスカーナ王国王太子に、勇者が籠絡?ハイエルフ王国最強の聖騎士も?何たる淫乱女でしょう?まあ、そんな淫乱女がいくら加わっても、ものの数ではありませんわ。第一、カエル、カエルが怒りますわね、あんな奇怪な、魔王に身を委ねて、涎を流して喘いだような女勇者ですから。」

“私とは違って!”と聖女トルナちゃんは、うっとりと傍らのイケメン、彼女にはそう見えるんだけどね、の魔王リアーリオを、うっとり見上げなが、吠えまくった訳だ。

「そんな奴らでも、まとまってくると厄介だからね。君の力、手だすけが必要だ。」

 魔王様は、にっこり笑って、彼女を抱き寄せた。

「もちろんですわ。戦う聖女としての力をお見せしますわ。」

“その前には、本来の聖女の役割、浄化魔法を駆使して、国力をさらに充実させておかないと。私達を慕ってやって来る人魔の民衆のために!”聖女ちゃん、君が瘴気の地方を、浄化したからといってね…。瘴気にしろ、魔樹、魔草なども生態系を作っていて、それなりの意味があるんだ、そこにとってわね。それを、浄化して消滅させたら、単純に良いことづくめになんかならないんだよ。まあ、この魔王様の目的は、そんなことになく、対立する魔族に対しては聖なる防御結界を作り、人間側の聖結界の破壊のためにしか、聖女様の力の占める割合が、そ

の頭の中身は大部分をしめていたからね。

 2人の国の両域は、既にロレンツィオ君とその同盟国に包囲されているんだけどね、。ロレンツィオ君は、要所要所に砦が築かせているんだよ。もちろん同盟魔族軍もだよ。わかっていないんだよね、その魔王様は。

 あ、それから、君達を慕ってくる人魔の民は、作りごとなんだよ、君に歓呼の声を上げたのは、誘拐、略奪で連行された捕虜、奴隷だからね。決して、この魔王様は悪逆非道な魔王様じゃないし、国=部族のことをそれなりに考えているのは確かだし、この部族としては平均的な行動だからね。

 でも、決して素晴らしいお方ではないんだよ。

「全てお前のせいだ!この屑聖女が!」

「リアーリオ!と、取り乱している時ではないのに。な、何を…まだ諦める時では…は?…誰?…えー?きゃー!」

 同志愛を語り、勝利を囁かれながら、喘ぎ声をあげ、腰を痙攣させていた聖女トルナちゃんは、魔王様ことリアーリオから剣を振り下ろされ、彼の顔を見て、絶句し、途惑ことになったのは、戦いが始まって半月もたたない時だったんだ。毛むくじゃらの猿だったからね。それが彼の正体だよ。モフモフで、かえって良かったじゃない?いやいや、皮肉を言ってごめんね、失禁しちゃっている聖女トルナちゃん。

 その剣は、彼女には届かなかった。受け止めた者が、いたんだよ、ハイエルフ聖騎士マルガリッタちゃんが、身体強化を目いっぱいにして。そして、そのすぐ後、リアーリオ君は、壁に激突していたんだ。勇者サルヴィアちゃんが、衝撃魔法を込めた蹴りで、蹴り飛ばしたんだ。

「聖女様。ロレンツィオ殿下の命でお助けに参りました。」

「へ?」

 ロレンツィオ君~、どこ~?親衛隊を率いて突入してきたね、遅いよ、まあ、主人公は遅れて来るものだけどね!

 ようやく自分が完璧に包囲されていることに気がついた魔王アーリオ君は、塹壕を掘り進め、銃砲、大弓、石弓、焼夷弾、そして魔法で援護されながら、切り込み隊が目の前の相手を押し返し、占領し、すかさず塹壕を堀り、陣地を構築する…じわじわ陣地進ませてくるロレンツィオ君達に兵力を集中して、その一角に来襲したんだ。トルナちゃんに、対立する魔族軍に対する聖防御結界を張らせて、人間側の軍の防御結界を消滅させて、準備をした上での攻撃のはずだったんだけど、準備の中身が違い過ぎるんだよ!

 トルナちゃんの力を見越して、力が劣る、その他聖女さん達に、加工した聖石を核に、所々に小さな結界を集中して張らせて、それにぶつかりながら、迷路を進むような魔王軍に銃砲石弓魔法の攻撃が集中。待ち受けての攻撃だ。トルナちゃんが、一瞬で消した防御結界は、フェイントだったんだ。防御結界だけでも、これだけの違いがあるんだよ?ああ、それから対魔の防御結界も、トルナちゃんのを一気に破壊、無効化、中和なんか出来ないけど、聖女さん達や魔族の魔道士が協力すれば、穴はつくれるんだよ~!と言うわけで、返り討ちで大敗!後は兵力不足で、崩される速度が次第に速まる、遂には壊走。王城に逃げ込むも、あっというまに、レオナルド君設計の包囲陣地が、本当にあっという間に周りを取り囲んでいたんだよ。

 もうこうなると、魔王アーリオ君は、心身とも正体を現して、トルナちゃんに八つ当たり。これを唆す魔族女、美人ですよ、薄気味悪いサル顔のモフモフちゃんだけど。

「このような時に…。全く、目先が効かない奴。自分の恨みをはらすことしか考えない、馬鹿ものね、全く…え?何か私の顔に?ギケイ様?わ、私はちがいますよ~!」

 ギケイに、ジト目で見られた元女海賊は、この女も乙女だった、と改めて感じるくらいにオロオロしていたんだ。ブーメラン発言の自業自得だよ~!

 とにかく大勝利、まあ、僕の情報が大きかったけどね、いつものことだけど…誰か褒めてくれない?

「こうなったら、聖女を殺して。」

 魔王リアーリオ君が立ち上がった!

 ダーン!すかさず短銃の引き金を引いたロレンツィオ君、偉い!発射~、命中~…チー…てね。大して効果は、ないけどね。勇者サルヴィアちゃんとハイエルフ聖騎士マリエッタちゃんが飛び出した魔王様の魔法が無効化、腕が落ちた、胸が切り裂かれた、首が飛んだ!そして、止めに黒焦げに。合掌、魔王様の魂は遠くに旅立ちました、僕が放り投げたから。

「聖女様ー!」

 かつての従者、侍女が駆け寄ってきた。危うく、魔王リアーリオに、殺されかけたのをロレンツィオ君の部下が助けたんだ。

 失禁したトルナちゃんを、そんなことは気にすることもなく、背に負って歩く従者君。

「魔王の情報を伝えるために、自らこのような…。」

 従者君を支える侍女ちゃんの後ろに、かつての彼女の下にいた聖女さん達が、いつの間にか並んで、涙涙…。

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