第12話 海賊退治②

 オルシーナちゃん自ら、スレイマン大帝のもとに駆け付けて、その御前で、トスカーナ王国とロレンツィオ君の背信行為を激しくせめたてたんだよ。しかも、大帝のハーレム一行を乗せた船がトスカーナ王国の港を出港、安全圏に入った頃を見計らって、自らの船団で護衛として付き添ってやって来たんだ。効果は二乗!

「陛下の同盟国であるわが国縁の公国に攻撃をし、あまっさえ非礼な行為、さらには住民の拉致、拘束、人質など陛下の臣民がなすことでは、ありません。彼奴らは、陛下の家臣を騙る者であり、よって、陛下の名誉のために成敗したものです。」

とトスカーナ王国の在イスタンブル帝国大使が強弁、彼女の主観だけどね、するのにたいして、

「アリ様が、陛下の海軍大将であることは世界の誰もが知っていることです!この期に及んで、そのような詭弁を陛下の前で騙る非礼、即刻退きなさい!」

と一括、あくまで彼女主観だけどね。

 スレイマン大帝から、労いの言葉と下賜品を与えられ、オルシーナちゃんは、意気揚々帯出。

「へ、陛下。ロレンツィオ殿下が陛下に背信行為などと…。」

 ハーレム一行の到着を報告し、功績を認められ、お褒めの言葉を受けたクロランドちゃんは真っ青になって訴えようとしたんだけど、

「全く、ロレンツィオめは、けしからん奴じゃ、はっはは…。」

と主君は、愉快そうに笑いはじめた。彼女は、主君がロレンツィオに怒りを感じるどころか、好感しら抱いていることを何となく感じたが、真意を測りかねているんだよ。

 大帝は、ロレンツィオ君の真意、計画はお見通し、それでも彼が誠実な同盟者で必要不可欠だということはわかっているから、その上で、アリと天秤にかけてロレンツィオ君を選んでいるんだ。そして、その油断ならない彼に、かえって好感を、感じているんだ。あの小僧、なかなかやるわい、けしからんことに、とね。まあ、純情な武人の彼女には分からないけど、ロレンツィオ君に危機がないことでホットしちゃって~、もう完全に恋してるというか、気分は恋人だね。だめだよ~、彼を誘惑しちゃ~!

 スレイマン大帝は、実は、トスカーナ王国を含む西方地域への侵攻作戦をいくつもの考えているんだな、これが。もちろん、トスカーナ王国と矛を交えることは考えていない。だから、オルシーナちゃん、君にはリップサービスと下賜品、凄い量で高価なものばかりだけど、だけなんだよ。あ、あとしいていえば、君に勝っ手に海賊女公爵なんて称号を与えたことと君の船の航行のイスタンブル帝国での安全保証を与えて、終わり。アリ君の戦いは、海賊アリ達が勝手にやった戦いで関与しない、ロレンツィオ君に情報すら流す、だよ。まあ、彼には僕から詳細な情報が流れているけどね。

 アリ君達の大船団は、いたる所にできた櫓からの砲撃、火矢、投石との打ち合いに苦戦、迂回して兵を上陸、大軍の正攻法、奇襲、夜襲なども組み込んだ考えられる全ての作戦を実行したけど、全て大敗。日頃は、行動の鈍い、バラバラな各国も、そうそうに出撃を宣言したベネツア共和国艦隊に、慌てるように、大人しく加わったんだ。僅か5隻ながら、トスカーナ王国の5隻の船がいたるところで大活躍が、それを後押ししたんだね。その指揮官は、ギケイ・ミナモト、え、あまり深く考えないでー!

 実際の指揮官はベニス共和国の海軍大将、形式的な総大将がトスカーナ王国チューザレ・ボルジア将軍、傍らの美人ちゃんは妹のルくれチアちゃん。お兄ちゃんの副官、行政官として有能で大活躍中。

 海上でも、一大海戦に、まさに壇ノ浦の決戦、全く様相は違うけどね。

「ふん。寄せ集めの艦隊が。」

とアリ君達は豪語したけど、自分達もいくつもの海賊集団の寄せ集めなんだよね、五十歩百歩。

 それに対して、ベニス共和国海軍大将のジュリアーノに、形式的な総大将のトスカーナ王国のチューザレ・ボルジア将軍は、

「トスカーナ王国王太子殿下より全権をいただいており、貴公を信頼している。」

と言って、作戦、戦略について、ジュリアーノを助けること以外は、口を出さないという態度だから、国益などで作戦会議で右往左往はしていないんだよ。最大の数のガレー船を提供しているのはベネツア共和国だけど、トスカーナ王国も、10隻を提供していて、それはすくなくない数なのに、この態度、他の国がわがままを言えずにいたんだよ。ちなみに、ロレンツィオ君は政治をまかされると、海軍の整備に努力義務しているんたよね。まだ、10隻程度しか手持ちがないけどね。

「レオナルド。お前の大砲のおかげだ。お前の設計の櫓にも助けられた。間に合うかの心配は旧だった。」

「私もお兄様も、まにあわないと思ってましたわよ。あなたの絵画は、なかなか進まないと聞いてましたから。」

 ボルジア兄妹に指摘されて、

「絵画は、全く次元が異なるますから。」

 彼は、不満そうに弁解を呟いた。だけどね、確かにレオナルド・ダ・ヴィンチ、ビンチ村のレオナルド君は、絵の完成品は少ないし、未完成品、さらになげだしたようなのが山のようにあるし、精巧細密正確なデッサンの段階が彼の仕事の完成と考えていた面もあるけどね。でも、数多いイベントや演奏会では、それをちゃんと大成功させているし、そのために新規な、独創的楽器、設備も製作して、間に合わせてだよ、しかも。屋敷のリフォームだとかの依頼など多数の仕事も、ちゃんとこなして評価を得ている。あのピサ攻略のための運河建設の設計図もちゃんと完成させて提出しているんだ。まあ、その運河建設は失敗するけど、建設担当者のミスで、レオナルド君の設計図には問題がなかったというのが後世の研究結果なんだよね。彼は、やるときはやる人なんだよ。仕事の性格を選んで、期日どおりに完成させる物とそうでなく、自分の最高の物を求めることを区別していたんだよ。ちなみに、彼がちゃんと期日どおりに完成させたものって、何を求めているかがはっきりしているものだよね。だから、ここでは完成したんだよ。あ、ちゃんとロレンツィオ君は、なかなか完成しない絵画の注文もして、何時までも待つ気になっているけどね、しかも、自分が生きている間にひれを見ることはないと覚悟してね。

 レオナルド君達の作った砦や大砲が、まあ大活躍、一応はするんだよ、アリ君達の海賊さん達を相手にして。オルシーナちゃんには悪いけどね。

 あ、オルシーナちゃん、彼に平和の尊さを説いて、裏切らせよう、軍事関与を止めさせようとしても無駄だからね。まあ、手紙を一生懸命書いているけどね、彼の心は動かないよ~だ。まあ、君の考える万能の天才が作りだすと心配している超兵器は作らないけど、それとは異なる本当の天才レオナルド君は、どちらかというと改良、改善レベルだけど、立派に役に立つ、威力を増して、アリ君達を困らせる物を作っているんだよ。君は、多分、確実…彼が君の手紙を読んで、平和主義に目覚めて、その超兵器を破壊した、放棄した、屑馬鹿変態無能ろくでなしロレンツィオ君への引き渡しを拒否したと思うんだろうね、いや、思うんだよね、仕方がないけど。

 さあ、大海戦の開始だ。

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