第9話 ヒロイン達の近況③

 まずは、ジハード教徒の大海賊ウルグ・アイに、処女を奪われた、捧げたオルシーナちゃんだ。

「みんな~、お待たせ!」

 でっかいお盆に、自慢のドーナッツを山積みにして、豪華な絨毯の上に座る、アイとその幹部達にもってきて…。

「姐さん。ありがとうございます。」

「がっつくんじゃないのよ、この食欲馬鹿!」

「うるせい、二つまとめて口にくわえたくそ女にだけは、言われたくないぞ。」

「こらこら、争うんじゃないぞ。数は十分あるんだからな。しかし、実に美味いな。」

 ニッコリ微笑むアリに、嬉し恥ずかしそうに頷くオルシーナちゃん。僅か数日で、ラブラブ新妻ちゃんしているんだから。

 アリは、その場で、オルシーナちゃんを横に座らせて、サヴォィア公国、トスカーナ王国の南にある、襲撃の計画を話し出した。勇猛で有名な現サヴォイア公は、度々不当にも、アリの海賊船を拿捕している、住民に圧制を敷いている、海の自由、海賊の自由を侵害しているから、懲罰に行く…かなり身勝手な理由だけど、オルシーナちゃん、すっかり信じちゃって~。

「でも、公妃はトスカーナ王国国王の妹よ。トスカーナ王国が救援に来ないかしら?」

 情勢を理解してくれる妻?に頼もしく思ったアリは、

「兵を率いて来るには時間がかかるさ。その間に、イスタンブル帝国の海軍大将の私は、義務として帝国の同盟国であるトスカーナ王国国王の妹様であるサヴォイア公妃に表敬訪問しようと思っているところさ。」

「まあ、それは道理にかなっているわ。屑変態弱虫無能無教養穀潰しのロレンツィオが、悔しがる顔が目に浮かぶわ。」

 頼もしい男、なんて思っている、首に手を回して抱きついちゃって~。まあ、美男美女の構図だけどね。部下達に冷やかされて、流石に顔を赤くしている二人だけどね。でも、この計画、しっかりロレンツィオ君には伝えておくからね。思っているようには、いかないよ~。

 さあ、次だ。イッポリートちゃ~ん。こっちもハンバーガーなんかを、いっぱいだしている。肉汁がしたたるハンバーガーにかぶりついて感動しているのは、狼系獣人ビアーニョ族族長と配下の幹部の男女達。彼らは、獣人とは言っても、特にね…モフモフは確かだけど、そのイケメンの顔と姿は、イッポリートちゃんに見えているのとは異なって…。 

 すっかり亜人達の人間の支配からの脱却、平等な世を作るんだという言葉を信じちゃって~。いくら激しい夜を重ねたからって…まあ、こっちも同じなんだ、それだけのこと。

 同じといえば、聖女様ことトルナちゃんもだね。魔王リアーリオとねっとりと愛し合って、すっかり彼を信じ切っているね。

「魔界は、我々にとっても住みにくいところなんだ。魔樹の瘴気の中には、我々でも危険なものもある。それ程ではないが、浄化すれば役立つものになる。もし、そなたが協力してくれれば、魔界を豊かに、我が、臣民を寄り添幸せに出来るのだ。協力してもらえないだろうか?」

 真剣そうな顔。だからといって、“あの馬鹿くそ暴君で無能変態弱虫の暗君、ロレンツィオとは大違いだわ!”なんて感心してたらだめだよ。まあ、すべて嘘ではないし、本心と言えないこともないけど、魔王様の本当の姿と同じなんだよね。魔樹の利用と本質、女魔王ちゃんとロレンツィオ君の方が知っているんだよ、実は。

 それから、それから~と…。

「す、すまない。か、彼女を恨まないでくれ。彼女を愛してしまった私に罪があるんだ。償いをしたい…だ、だから、ゆ、許して欲しい。」

「ち、違います。わ、悪いのは私です。彼を怨まないで下さい。どうしようもなかったんです、愛する気持が大きくなるのを。」

 涙ぐんで、土下座せんばかり、謝る婚約者と義妹を見下ろしながら、彼女ったら、“来たわね!婚約破棄イベントが!”違うよう~、こんな怖い婚約者、義姉を前にしていたら、寄りそっちゃうよ~。と言っても分からないだろうな、あ~あ。

「赦す?冤罪でも、弾劾でもなさい!私は、もうでてゆくから、勝手になさい!」

 出ていくとは言っても、全てもっていくのと同様なことをしているんだよね。本当は、追い出されたのは、二人の方なんだ。よ、悪役令嬢、最初のざまあ展開!流石に悪役令嬢を極めた!まあ、二人とも、これを罰だと思って、かえってホッとしているけどね。彼女は、究極のざまあの対象は、ロレンツィオだと…、彼、この世界で君に何もしてないんだけどね。

 さっそく、彼女に近付いてきたイケメン君がいた~!相思相愛の同志、君とともに強きを挫き弱きを助けてきた謎の騎士、その実体は~、革命軍首領ブルゴーニュ公シャルル、ああ、まだブルゴーニュ公ではなかったね、ブルゴーニュ公の次男シャルルだったね。ヴァーナちゃんと出会って、革命軍を起ち上げて、彼女の悪役令嬢を極めることの、頼もし~頼もし~仲間、同士。“さあ、二人で暗君ロレンツィオを打倒して、民衆の王国を作りましょう!”彼女の主観は突きすすんでいるんだけど、彼氏の頭の中は、ブルゴーニュ公家の乗っ取り、兄や姉、妹を排除して…なんだけどね。そして、彼の後ろには西神聖ゴート帝国がいるんだけどね。彼女は、知らない…。ヒロイン達は、ロレンツィオ君打倒に起ち上がった、起ち上がるルートに来た…、あっと、あの二人はまだだった。そうだ、そろそろ…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る