第8話 ヒロイン達の近況②

「ここを絶対通すな!カリフ様の妻妾様達のもとに近づけるな!」

と叫んでいるのは、うら若い、長身で凛々しいとは言っても、容姿も魅力的な黒髪の美人女騎士さんだ。

 1人で次々に、巨漢の海賊達を斬り倒し、蹴倒して、船の舷側から落としているよ、凄いな~。でも、他の戦士は倒れて、戦っている彼女だけ、最早孤立無援多勢に無勢状態で危機一髪絶対絶命状態だよ。

 その時、仮面の女戦士が長い太い木刀でもって、船上の海賊達を次々うち倒し始めました~。

「異国の騎士殿。ご助成いたします。」

 言わずともわかるよね、ヒロインの1人、女勇者様だよ~!

「どなたか存じませんが、ここは合力させていただきます。礼は後ほど。」

 でも、新手が次々登ってくるよ、あ、詠唱している魔道士が1、2、3…あれ1人は三位一体教会の魔法修道士じゃないか。身構える、女勇者と女騎士。その時、一陣の強い風、竜巻のように、詠唱ができなくなり、剣や槍をもった連中の足が乱れる。

「今です。お二方!」

 マストの上に、当然、ヒロインの1人、ハイエルフの女聖騎士ちゃんだよ!

「感謝する!」

と2人は斬り込む。たちまち圧倒。でも、いったんは引き上げたけど、後続と合流。かなりの人数で押し寄せてきたけど…。

「おや、どうしたのだ?足が止まった?あ、あの旗は、軍馬は?」

「トスカーナ王国の軍旗。そして、王太子のいることをを示す旗。」

「ま、まさか、トスカーナ王国王太子殿下自ら、救援に?」

「そうだ。」

 不機嫌そうな2人の助っ人を脇に、女騎士は感激し、神への感謝な祈りを捧げていた。

 ロレンツィオは、海賊達に身代金を払うが、少しでもカリフの妻妾達に手を触れたら、皆殺しにすると伝えていた。まあ、最初から力で解決するつもりだったんだけど、そう言うことで時間を少しでも稼ぐつもりだったのだ。案の定、これをビジネスにしていた彼らは、しばし迷った。ロレンツィオは、とにかく素早く集められる兵を率いて進軍してきたのだ、彼らが予想しないやり方で。それでも、間に合わないかもしれないから、勇者ちゃんとハイエルフ聖騎士ちゃんを送ったんだよね、頼みこんで。勇者ちゃんは、人間の争いに関わりたくないから、殺さない、顔を見せないという条件、ハイエルフの聖騎士ちゃんも似たような条件で納得したんだよね。

勇者ちゃんは親友で、幼馴染みで、彼女は、気づいていないけど想いを寄せてくれている賢者君に説得されて、ハイエルフの聖騎士ちゃんは主人であるハイエルフの女王に命じられてのことだけどね。

 海賊達は、迷った挙げ句、イスタンブル帝国皇帝、カリフのハーレム船を略奪、妃達を陵辱、その後に奴隷に売ることに決めたんだ。これは、異教徒を憎む三位一体教会だけでなく、聖典唯一派等の働きかけもあってだけど、船に襲いかかった。本当に、身代金をもらうことで丁重に引き渡していたら、ロレンツィオ君も身代金は払うつもりだったんだけどね。

 2,000少しの兵だったけど、海賊達を蹴散らして、その砦、小さなやくざなものだけどを、次々に落として、船を解放した、ロレンツィオ君は陣頭指揮で大活躍、、剣も、銃も、魔法も一年間で目に見えて上達してるね、惚れ惚れするよ、僕のおかげとはいえ、彼の努力もあるしね。

「遅くなり申し訳ありません。」

「このように早く、とは思ってもおりませんでした。しかし、このお二人がおられなければ、それでも間に合わなかったかもしれません。」

と女騎士ちゃん、クロランドって言う名なんだ。ああ、そうそう彼女は、若いけど、あちらのカリフ、スレイマン大帝のお覚えも高い精鋭の黒髪が似合う美人騎士ちゃんなんだ。彼女は、勇者ちゃんとハイエルフの聖騎士ちゃんを、目で指し示した。それにロレンツィオ君は、軽く頷いて、2人の方に顔を向け、深々と頭を下げて、

「お二方のご助力のおかげで、我が国の名誉が守られました。国を代表してお礼申し上げる。」

 2人は、軽く頭を下げただけ、その上、“屑男だとはいえ、これだけちゃんと礼をしているのに、なんだ、この礼儀知らずの女は?”と互いを心の中で罵っているんだよね。それを知ってか知らずか、クロランドちゃんは、

「陛下も、お二方も、妃様方がお礼を申し上げたいとお待ちになっておられます。どうぞ。」

と船内に招くのはいいけれど、なんだい?そのロレンツィオ君を見る顔は?まるで恋して、はにかむのを必死に堪えているようじゃないか?彼を誘惑しちゃだめだぞ~!あ、ロレンツィオ君も、そ、その顔は?必死に隠しても分かるぞ、僕には。女魔王に続いて…、この浮気者!2人とも、君たちの夫が寝取られかけてるぞ、何とか…ああ~、全然関心がないんだよね…。君たちは、誰に誤魔化されて、誘惑されるのかな?だれだっかかな?ああ、あいつらだった…。

「わが国は、文化も低く、貧しいため、十分なことはできないかと思いますが、ベネツア共和国から物質が提供されることになっておりますし、職人や侍女達も来るとのことですから、しばし忍耐をお願いします。」

 ベネツア共和国大使を同席させているんだけど、彼を感激させてしまったよ、ロレンツィオ君。大商業国家で豊かなベネツア共和国は、スレイマン大帝をお得意様にしているんだ。宗教的に対立する相手でも構わないし、時として海洋支配を巡って戦う相手でも構わない。それが、聖地巡礼の彼のハーレム一行の船が三位一体教会派の海賊に拿捕されて、それがベネツア共和国に立ち寄っていたことから、立場が苦しくなっているんだ。彼が、ベネツア共和国の貢献を声を大にして言ってくれて、喜んでいるんだよ。トスカーナ大使も、スレイマン大帝の前で、自国の功績とともにベネツア共和国の貢献を云うことになっているんだ。

 彼らはロレンツィオ君が功績を、当然なことに独り占めすると思っていたんだ。

 まあ、それでもロレンツィオ君のためになんかはなにもしてくれない、甘いことをするほどお人好しではないけど、反感を持たれないことは重要だからね。

 あらゆる美人が続々、侍女達ですら…。ロレンツィオ君、ため息なんてついてちゃダメだよ。君の妻は、ふて腐れている勇者ちゃんとハイエルフの聖騎士ちゃんなんですからね!

 妃の方々は、流石に判ってくれているようだけど、侍女達やお付き奴隷達からは文句がいっぱいだね、まあ、彼等も主のためと思ってのことだから、我慢してあげて。まずは、陸路でトスカーナへ。頑張ってね、ロレンツィオ君。

 さてと、他のヒロインさん達の様子を見に行くか。

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