第4話 残りのイベントに向けて

 まずは、家出した婚約者である悪役令嬢の後始末だね。まあ、どうして彼女が悪役令嬢なのかということは、考えないでね。あくまで、この世界を生み出すきっかけになったラノベの一つが、悪役令嬢と、乙女ゲームの悪役令嬢としているというだけなんだから、それだけなの!彼女のどこがやねん悪役令嬢か、なんか考えないでね、どうしようもないことだから。

「婚約者の見舞いに来るのは、当然ではないかね?」

 相変わらずのいけず~、ロレンツィオ殿下~。公爵が汗をしたたり流して困っているよー!

「お気持ち、娘も嬉しく思っておりましょう。しかしながら、病気のことで…殿下の身に…。」

「だからこそ、宮廷医長を、さらに呪いかもしれないから、神官長にもおいでいただいたのだ。だから大丈夫だ。しかし、もしかすると、私と会いたくないと思っているのではないかのかな、我が婚約者は?それとも、私を嫌うあまり、家出をし、既にここにはいないということはないだろうね?」

 ワー、公爵さん、真っ青、もう死にそうだよ、虐めすぎだよ、ロレンツィオ殿下、面白いけど。

「公爵殿。私が言うのも何だが、そこの椅子に座ってくれないか?」

 屋敷の主が、客に言われたら立場が、逆だよね。でも、スフォルツア公爵は黙って座ったんだ。彼の前には、王太子ロレンツィオ、その弟のジュリアーノ、宮廷筆頭医師長、神官長、さらには大司祭、宰相が並んで座っている。公爵は、その立派な、体を恐縮させている。

「皆には、証人になってもらおうと、同席願ったんだよ、実は。私が、この婚約のことに関して、公爵殿に怒りをもたないことを、婚約を破棄しないことを約束するということを。」

とのロレンツィオの言葉に、公爵だけでなく、一同、

「は?」

 彼は皆に言ってなかったんだよね、今日の真の目的を何一つ。

「色々と情報を持ってくる者がいてね。彼女は、お気に入りの侍女と執事を連れて、昨日、卒業式が終わった直後、この屋敷から出奔したのだろう?ここには、彼女はいない、そうだろう?」

 公爵は、黙ることしかできなかった。

「な、なんと。」

「あ、兄上。公爵殿、これはいったいどういうことだ?」

 ジュリアーノが、そのイケメンの顔がわ真っ赤になっていた。そりゃそうだよね、それに真っ赤にならなければいけないからね。

「まあ、落ち着け、弟よ。」

 ロレンツィオが、割って入る。

「ことをこじらせては、国益にはならないばかりか、大変な損害を与える。だから、婚約破棄はしないし、公爵家を罪に問うことはしない。まあ、本当のところは、私が彼女のことを愛しているからだ。だから、公爵殿、このことでは、婚約破棄はしない、彼女の病気が治るまで、結婚は先延ばしするということで納得して欲しい。」

とロレンツィオ、頭を皆に下げたね、さすが!ここまですれば、ロレンツィオは婚約破棄をしなくてもすむということになるわけ。何故かって?スフォルツア公爵令嬢のことは、何時かは分かってしまう。そうなると、スフォルツア公爵家への風当たり、非難は大きくなる。そうなると、王家としてはそのまま捨て置くわけにはいかなくなるもんね。だから、ロレンツィオは先手を打って、婚約者を愛していると言って、そうなることを阻止したわけ、彼自身、王太子自身の意思として。公爵、弟のジュリアーノ王子達5人は、婚約破棄を言い出せない、止めようと努力せざるを得なくなる。彼らの影響力は大きいからね、誰も強く言い出せない。

 ロレンツィオは、公爵を慰めて、次の目的地にGoだよ!

「ご息女は、私を嫌って出奔されたのではないかね?」

「そ、そ…その、そのようなこと…は…。」

 パッツィ伯爵は、ロレンツィオが訪問して、昨日はご令嬢に失礼した、謝罪のためにやって来たと言ったら、もう我を忘れて、右往左往してしまっていた。

 結局、公爵家で言ったことと同じことを言ったんだよね。まあ、でも婚約者ではないから、

「私が余程醜かったのだろう。だから、父上のためにも逃げ出したのであろう。しかし、原因は私にあるから、彼女のことは許すし、戻ってきたら支援しよう。良い所に嫁に行けるように協力するし、どうしても、それがなければ…まあ、考えよう…。」

 言うことが、きざになってしまう~。超イケメンの弟が呆れているよ。宰相達も右に同じだよ。

「兄上。あまりにも甘すぎるご措置ではありませんか?」

 さすがに、帰りの馬車の中でジュリアーノ王子が言うと、皆頷いているよ。ロレンツィオ、大きなため息をついて、なんて弁解するのかな?

「公爵は、保守派の重鎮だが、国の利益は分かっている。伯爵は、新興貴族、市民側のバックについている。ここで恩を打っておきたい。まあ、大したことはないがな。」

 何となく、分かったような顔をしているジュリアーノ王子以下の面々である。

「た、大変です。」

 王宮に帰ってきたロレンツィオ殿下を待っていたのは、聖女が出奔したという知らせだった。

 聖女教会の首席神父と次席聖女が報告のためにやってきていた。

「全く、訳が分かりません。侍女や修道女の話では、何と…わ、私が…その…殿下と愛人関係で、二人して無実の罪を着せた上、偽聖女だとして追放、処刑するから、その前にでていくのだと…。聖女としてひ弱な私が、そのような大それたことをするはずが…、まして、ロレンツィオ王太子殿下が…さらに私と…、全く訳が、分からなくて…。」

 小柄で、可憐な金髪の美少女の準聖女さんは、涙目で震えている、可哀想だよね。同情しちゃう。この世界、聖女は、聖女の力で色々とやらなければならないから、相当自信がなければ、能力がなければ、自分がとって代わろうとなんて思わないよね。よしんば、取って代わったとしても、直ぐに正体ばれて、バットエンドだもんね。ロレンツィオ君の後ろ盾があったとしてもね。でも、まあ、そういう設定があって、彼女はそこから離れられないんだよね。彼女は前世で、偽聖女の汚名と冤罪を着せられて、追放、最後は処刑された、でも、その前の過去に蘇ったと思い込んでいて、かつ絶対にその考えを変えることはできないんだよ。あ、ロレンツィオ君、彼女を思い浮かべているね、目の前の準聖女さんと比較して。失礼だぞ。まあ、ずっと長身で、大人びて、胸も大きくて、巨乳じゃないけどね、ウエストもくびれた、ちょっときつそうな感じだけど、それでいて優しい微笑みを浮かべる金髪の美人さんだったけどね。

「聖女様のことは、内々に捜そう。きっと誤解を解いて戻ってこられよう。連絡がつければ、そのように、説明申し上げよう。準聖女様には、それまでの間代理として頑張っていただきたい。修道院では、準聖女様を助け、さらに聖女様がいつ帰ってこられてもよいようにしておくよう努めてもらいたい。」

 最後は、準聖女様と神父様の手を握って、励ましてら。

 マキャベリ君が傍にきたよ。最後のイベントの始まりだね。

「かの令嬢がお待ちです、随分と。かなり…。」

「そうか、分かった。直ぐに行こう。全く最近は、予想していないことが次々起こるな。」

 全部知っているくせに、ロレンツィオ王太子殿下の嘘つき~!

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