第3話 僕が召喚したんだよね。
「久しぶりですね。神様。最高神様。」
ロレンツィオ君は、僕に気がついて頭を下げた。それからあらためて周囲を見た、気づくのが遅すぎるんだよね。
「大丈夫だよ。僕と君は時間と空間の狭間にいるんだ。皆の時間的は進んでいないし、僕らは見えないし、僕らのやり取りは聞こえないよ。」
彼は大きなため息をついて、
「どうしてまた、ここに?」
「昨日から、色々とイベントがあるじゃないか?最高神として、責任者として、見に来るのは当然だろう?まあ、楽しいと思ったことは認めるけどね。」
「はあ、そうですか。」
いかにも嫌な顔で、大きなため息をついたけど、酷いなあ、死んだ君に第二の人生をあげた上、しかも一国の王太子、将来は、国王の座も約束された境遇、そのまあ一応イケメンの顔と色々なチャート能力を、あげた僕をもっと大切に思ってくれよ。
まあ、でも、この世界を守ってくれるという大変な仕事をお願いしたわけだからね…。
次々に、新たな世界が生まれているという宇宙論を知っているだろう?この世界もそうなんだよ。しかも、存在しない乙女ゲームの断罪される悪役令嬢に転生したとか、処刑されて、子供の頃に生き戻ったとかの小説の設定を持った世界なんだよね。小説が世界化するなんて、はないんじゃないか?人の観念に生まれたということだけで、世界の創造、世界の発生だってあり得るよ。
この世界、宇宙は広い、広大な、世界なんだけどね、1つの星の一地方が、要になっているんだ、小説の設定の世界のね。そして、問題がいくつかあった。6人のヒロインが、ざまあする物語の世界なんだけど、ざまあされる屑男のロレンツィオ君が存在しないということ、あまりに酷くて、かつ6人分ということで、この世界の創造と同時に存在が崩壊してしまったんだ。ヒロインはそれでも、小説通りに行動する。それを単純に阻止すると世界は崩壊する、要だからね、彼女らと彼女らの行動の存在がこの世界の要だからね。しかし、彼女らの行動は、最終的にこの世界を破壊してしまう。小説のざまあって、以外に現実と比較するとおかしいだろう?
悪役令嬢とかいってもどこがやねん?とかだったり、こんなに簡単に重大な婚約を当人だけの意思で破棄できるかとか、異国の王様、王子様に拾われるなんて、それだけで国際問題、聖女の能力のないのに本物を追放して、成り代わろうとするのは無理がある等…、まあそれはさておいて。ざまあだってそうさ。婚約破棄され、追放された悪役令嬢は、最終的に海賊令嬢となって、人々を救い、ロレンツィオ達にざまあする内容なんだけど、正義の海賊なんて存在しないんだよ、弱い者から略奪するのが海賊なんだ。それだけでも、それで進むと世界には無理が生じるんだよ。
「と言うわけで、頼んだよ。」
と頼んだら、彼ったら何と言い出したと思う?死んで、第二の人生を与えてあげたんだから、それだけで喜んで、感謝すべきなのにさ!
「それだけ分かっていたら、事前に対策でもとれるのでは?私なんか召喚するより…まさか、もう何度も崩壊したとか…やっぱり…何度も何とか補修できて、最初から…なんか、困ったことを押し付けられたような…ああ、ご苦労様です。下っ端は辛いね、よく分かりますよ。」
失敬な、不遜だぞ、まあ、その通りだけど。
「今日のうちに、イベントが2件あるね。これで全てが始まる前わけだ。チート能力もたっぷりとあげたんだから、頑張ってよね。」
「神様…大した能力は、くれなかったでしょう?」
「そんなことはないと思うよ。いっぱいあげたじゃないか…、まあ、いわゆるチート級じゃなかったけど…。」
強い戦闘力とか魔力とか、すごい勢いスキルとか、彼にとっての現代社会の武器、機械等を創れる能力とかは、
「だめ、世界の秩序が壊れるから…。」
と確かに断ったな。彼は、しかし、しぶとく粘ったね、交渉してきた。
「なら、努力したら、練習したら、復習したら、どんどん向上する、身につくというのでは?」
「それもなあ…。分かったよ~、そんなジト目で見ないでくれよ~。目に見えた、というほどではないけど、はっきりとそれが自覚できる程度に、常に成長する、向上する、身につくようにしてあげるよ。」
ということで色々と与えてやったんだよ、まあ、彼の要求からは、しっかりと目減りさせたけどね、しかたがなかったんだよ。
「でも、私なんかより、ずっと若い、ゲームとかをやりなれている連中の方が適任だったのではないですか?」
「ここはね、小説が具現化して生まれた宇宙、世界さ。でも、ゲームでも、小説でもないんだ。ねえ、ちまたで、時には学者、専門家ですら、持っている知識は間違っている、都市神話でしかない、小説での創作だったりする場合もあるよね。コロッケの歌や坂本龍馬が薩長同盟を作ったとか、トマトの日とか、ロンドン万博での規格統一化を実演したアメリカ館とかさ。君は、それを知っている、信じ切ることなく考える能力がある。そして、歳に見合わず、この種のものの愛好者だ。だからこそ、この世界の歴史を糺せるんだ。ノーフォーク農法を中世社会で実施しても、上手くいかないことも、奴隷が管理者を担ったことも知っているし、人は平等ですと言えば、選挙をすれば民主主義が生まれるとか考えない、ビンチ村のレオナルド君に頼めば超兵器を造ってくれると考えない君だからこそ、適任なんだよ。」
と滔々と力説して、納得させたんだ。
「残り二人ですか?」
ともう嫌だという顔でいう彼に、
「そのイベントも今日だったね。それから、家出した二人の令嬢の父上達へのフォローも、これからするのだろう?」
「まあ、そうですよ。」
そんなに嫌な顔をするなよ。君のお仕事なんだから。
「じゃあ、頑張ってね。いつでも応援してあげるから、できるだけはね、可能な時には。」
ああ、また彼の顔が歪んでいるよ。困ったけどどうしようもないよ。
彼を元の時間帯に戻してやった。
彼は、勇者から今後の活動の説明にじっと耳を傾ける。主に説明するのは賢者なんだけどね。勇者様は女の影がないか、不機嫌な顔をして探してばかり。先に出ていったハイエルフの女騎士様は、途中ですれ違う女官、女騎士、女の行政官に彼の臭いがしないか鼻をきかせていたしね。彼女らは、どうやっても、本当のロレンツィオを認めようとしないんだから、今の所は。
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