第13話 聖ジョルジョ祭 その九
「このことは貴女に言わないでおこうかと思ったのですけれど・・・
アルフォンソが聞かせてくれたんだけれど、ジョバンニやエンリーコたち、貴女の4人のあの従弟たちがね、最初にフランチェスコ様が図書館にいらっしゃった直後に、貴女の婚約のことを初めて知ったらしいの。
もうとっくにみんな知っているものと思い込んでいたけれど、あの子たちはまだ幼かったから何も聞かされていなかったのね。
それが、思いもかけないことから突然わかって、ショックを受けたらしいの。
そして、
『4人でこの縁談を壊そう』
と誓ったんですって。
その理由がね・・・あんな浅黒い人はイザベラに合わない、と言っているんですって。 それから、イザベラは有名な先生でも舌を巻くほどラテン語が上手いのに、一体どこから聞いてきたのか、フランチェスコ様は幼い時から先生方に
『この若君を机に縛り付けておくのは至難の業でございます。』
と言われて母上に叱られた、とか、あの御方は戦しか出来ない、とか目茶苦茶言っているらしいの。
それでね、ここが可愛いの。
最後に、一番年下のルチオがぽろっと
『壊した後でどうするの?』
と言ったんですって。
そしたら急にみんな、しゅんとなって黙ってしまったらしいの。」
そう言って、母は目頭を押さえた。イザベラは黙ってうつむいて聞いていた。
次の日、イザベラは数日ぶりに図書館に行った。
いつもと違ってイザベラは、大理石の階段を静かに上って行った。
そして、「ラテンの部屋」の樫の扉を開けた時、後ろからルチオがやって来るのに気がついた。イザベラは、ルチオのために扉を開けて待っていた。
やにわにルチオは、イザベラが支えている扉を足で蹴った。
その音が反響した。
イザベラは、衝撃のあまり口も利けなかった。
つづく
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