第24話 大天使は「看病」を知る
空は快晴、曜日は日曜……人間としてこれほどまでに気分が高揚する日はないだろう。
普段の俺なら、溜めていたアニメの消化や、漫画の考察なんかで一日を過ごしている。
しかし今の俺は……
「…………38度か……ごほッごほッ……」
発熱が原因で寝込んでいた。
昨日、家で読んだ漫画の影響を受けて寒風摩擦にチャレンジしていたのだが……夜は随分と冷え込んでいたため見事に風邪を引いてしまった。
我ながらなんて馬鹿な男なのだろう。
「もう、あんなアホなことしてるからお風邪引いちゃうんですよ……大丈夫ですか?」
呆れと心配が入り混じった表情を見せながら、
その両腕には氷水と手拭いが入った桶が抱えられている。
「でも休日だったのが不幸中の幸いでしたね!……ちょっと冷たいですよ」
そう言うとウリエルは氷水を吸った手拭いを俺のおでこに乗せてくる。
熱で意識が朧げになっている頭には心地の良い冷たさだった。
「……体育祭の日だったら最高だったのに……」
「?「たいいくさい」とは何でしょうか?」
「………陰キャを一匹残らず殲滅する為に催される特別な
「そ、そんなに恐ろしいイベントが下界にはあるんですか……ッ⁉…人間って残酷……」
間違ったことは何一つ言ってない……ハズだ。
「それにしてもなかなかお熱下がりませんね…、黒羽さん、風邪薬はどこに置いてありますか?」
「………胃薬じゃダメかな」
「ないんですね?……わかりました、私薬局に行って買ってきますね!黒羽さんはゆっくりお休みしていてください」
「…ごめんねウリエル……」
「おやすいがってんですッッ‼」
ウリエルは謎のガッツポーズを披露すると同時に勢いよく飛び出していく。
その背中を見つめながら、俺はゆっくりと眠りについた――…。
☆☆☆
――俺がウリエルを守ってみせる――
そう誓ったあの日から、一つだけ、たった一つだけの夢を見るようになった。
まるであの日誓ったことがトリガーになっているかの様に、夢を見るようになった。
目の前にいる羽の生えた不思議な生物……、だけどウリエルとは違った黒い羽――…。
けれども俺の意識は「それ」をウリエルだと言っている。
俺は必死に走り出す――…
彼女を取り戻す為に…そして、伝えるために――…
暴れる彼女の手を取り、俺は叫ぶ――…
「ごめん――…ッ‼‼」
☆☆☆
「――…さん、――…さん」
眠っている脳に甘い声が差し込んでくる。
声のする方へゆっくりと目を開けると――…
「……ウリエル?帰ってたの…?」
「はい、ウリエルです!起こしてしまいすみません、お粥を作ったのでどうぞ」
窓を見るとすっかり空は暗くなっていた。
どうやら昼間にウリエルが出かけてからずっと眠っていたらしい。
お粥の入った茶碗を受け取ろうと、俺は気だるい体をゆっくりと起き上がらせ……
「あぁッ大丈夫ですよ……ふー、ふー、……はい、あーん」
「な……ッ⁉い、いや自分で食べれるから…ッ‼」
「ダメですよ?病人なんですからちゃんと甘えてください。はい、あーん♡」
「あ、あのホントに大丈夫だか……」
「あーーーーんってばッッ‼‼」
「わ、わかったよ……ッ‼……あむ」
ウリエルに強引に押されるがまま、俺は差し出されたお粥を口に入れた。
「美味しいですか?」
「……美味しい、です」
「うへへ♡……お顔色だいぶ良くなってきましたね、薬も買ってきたので明日には治ってそうです」
「………………………………………………………………………………好きだよ」
「ん?何か言いました?」
「あッい、いやなんでもない‼……お粥もっとちょうだい」
「はいっ!……あーん」
熱のせいなのかどうなのか、何故かこの時間は無性に……ウリエルに甘えたくなってしまった――…。
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