第21話 大天使は「女子会」を知る

《小日向宅》


午後八時、蔭島暗理とウリエルは今、親友である小日向矢夏の部屋にいる。


「よーーし、じゃあ改めまして……「ウリエルちゃんようこそ‼ドキドキッ秘密の女子会in私の家」開催ッッ‼はい乾杯!」


「か、かんぱ~い…っ!」


異常にテンションの高い矢夏になんとかついていこうと、ウリエルは自身のコップを必死に掲げている。可愛いな。


「ほら暗理も!」


「…………乾杯チアーズ


「かっけぇッッ‼」

「……うぐ…ッ……ぐ、ぐるじいぃ…ッ‼」


矢夏は「ウハハ」と笑いながら、まるでゴリラのような腕力で私の首を締めあげてきた。


どうやら今日が命日だったらしい。


「小日向さん暗理ちゃんの目がイッちゃってます!それ以上はダメッ‼……ところでお二人とも、その…この「じょしかい」…?というイベントは……天使が参加していいモノなのでしょうか…?」


「「……………」」


矢夏の腕をほどいてくれたウリエルが不安そうな顔をこちらへ向ける。


ある日突然、藤波黒羽あのバカに出来た彼女―…それも普通の人間ではない「天使」という人外の生物らしい。


信じ難い話だが、実際に初対面あの時を見てしまったからには……本当マジなんだと信じざるを得ない。(今は生えてないけど)


多分本人もそのことを未だに気にしているのだろう。しかし……私たちは……、


「……ウリエル…私たちは…」


「え、だって女子でしょウリエルちゃん?」


「⁉は、はい女子です…ッ‼」


「じゃあ何も問題ないじゃん!これ「女子会」だし」


「……ッ‼こ、小日向さん…ッ‼」


「…………むぅ…」

「いたッ⁉ちょ、ちょっと暗理⁉何でお尻ツネるの⁉」


一番いいところを取られてしまったが……こういうことを躊躇なく言えてしまうこの「性格」が、小日向矢夏の「優しさ」だ。


でも私だって言いたいことはある。


「……ウリエル…天使とか関係なく……私たちは「友達」だから……そんな顔しないで欲しい」



友達その大切さは……私が一番から。



「暗理ちゃんまで……ッ‼あ、ありがとうござ…」


「ねぇちょっと待って、何でウリエルちゃん暗理のことは名前で呼んでるのッ⁉私のことも「矢夏」って呼んでよ、私も「ウリエル」って呼ぶからぁ~~ッ‼」


「あ、はい!わかりました!」

「いえーい♡」

「…………」


前言撤回。矢夏コイツただ空気読めないだけだ。


        ☆☆☆


矢夏主催の女子会は、ジュースやお菓子の効果も相まってなかなかに盛り上がっていた。


そして話題は、私が人生で一番興味ない「恋バナ」へと発展していった。


「てかウリエルって今黒羽と一緒に住んでるんだよね?普段どんな感じで一緒にいるの?」


ポテチで汚れた指先を拭きながら矢夏はウリエルに問いかけた。

これは正直私も気になる。


「そうですね……、一緒にご飯食べたり…しりとりしたり…お洗濯したり…ですかね?」


しりとりってなんだよ。


「いいなーー同棲楽しそう…、私もしたいな~~…」


「……?私「も」?」


「………矢夏は蒼司と付き合ってる」


「え、そうなんですか⁉普段何してるんですか⁉ちゅ、ちゅーとかしてるんですか⁉」


ウリエルは興奮しながら矢夏に食いついた。


「天使」とはいえ、他人の恋路にはやはりわくわくするのだろうか。


「す、すごいグイグイくるねウリエル…⁉いやー…流石に「そういう」ことはちょっと言えないかなーー…」


「…………毎日してるよ」

「毎日ッッ⁉」


「…………深いほうね」

「深いほうッ⁉深いほうって何ですか矢夏ちゃん⁉」

「ねぇなんで暗理はそういうこと全部言っちゃうのッ⁉てか何で知ってんのッッ⁉」


………恋バナも案外悪くないかも知れない。


「て、ていうか暗理はどうなの?モテるんだし少しくらいはそういう話……」


「……恋愛には興味ないってば」


「えぇ~~?せっかく可愛いのに……」


「…………可愛くないから」

「いや、暗理ちゃんはかわいいですよ?」

「ほら!ウリエルも言ってんじゃん‼」


「………………………可愛くないってば…」


「「顔赤~~い!」」


「………何なの二人ともッ‼」


…やっぱり恋バナなんて最悪だ…


友人二人に頬をつつかれながら、私は改めてそう思った――…。

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