第20話 大天使は「迷い」を知る

「ふーー洗濯物終わった……、黒羽さんのおパンツ黒いのばっかですね」


平日のこの時間は黒羽さんがいない。学校があるからだ。


ちゃんとお勉強してるかな。ちゃんとご飯食べられたかな。


こんなことを考えるのは久しぶりな気がする。


忘れていたこの時間、黒羽さんが家にいない一人の時間。


家事はもう一通り済ませてしまった。寝転んで天井を見つめることしかやることがない。



私は「孤独」が嫌いだ。一人ぼっちは楽しくないから。誰かといると楽しいから。



この前のデートで黒羽さんが言っていたが、心の奥に染みついて洗い落とせない。


――許せるほうがカッコいいから…――


一体……なんて優しい人なんだろう。


「目には目を歯には歯を」

ずっとその生き方だったから。から。私の中には……私たちの中には「ないモノ」を、黒羽さんは持っている気がする。


……私も出来るだろうか。「罰する」ではなく、「許す」選択を取れるだろうか。


私は「孤独」が嫌いだ。思い出してしまうから。あの天使ヒトのことを。を。



――……エル…ッ‼貴方は…ッ……ってる……ッ‼――


――……には……ってほしくない……ッ‼――



もしまた出会えたら、私はあの天使ヒトを、「許せる」だろうか。


「ただいまーー」

「………!」


心臓が跳ねる音がした。しかし私は知っている。温かくて優しい、その声を。



「お帰りなさい黒羽さんっ!」



――…私の「彼氏」が帰ってきた…――

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