第16話 大馬鹿二匹は「課題」と戦う
五月上旬……少しずつ気温が上がってきたこの季節は、インドア派の俺や蔭島でもつい外出したくなってしまう程気持ちのいいモノだった。
俺たち五人はとある公園の、名称がよく分からない謎の木造スペースに集まっていた。
木組みで作られた小屋には、同じく木組みで作られた机が二つ並んでいる為、五人でも充分リラックスすることが出来る。
「……チョコアイス美味ひい」
「暗理ちゃん、それ一口ください!」
先ほど立ち寄ったコンビニで買ったアイスを頬張る蔭島と、犬のように縋り付いている
ゲームセンターの一件を通して二人の仲はかなり縮まっていた。
そんな穏やかな景色の横で俺……いや、俺と桜馬は……、
「黒羽、よそ見しない。あとそこ単語の意味間違ってる」
「はいごめんなさい」
所々が赤黒く染められている「ハリセン」を片手に、魔王の如く足を組み居座っている小日向矢夏の目の前で……GW前に出された課題に取り組んでいた。
そう、小日向は俺と桜馬の課題の「手伝い」をしてくれている……それだけなら聞こえはいい。
「………ぐごぉぉ……」
「おい寝るな蒼司てめえッッ‼‼」
小日向は俺の隣で居眠りをこいている桜馬の脳天に、それはもう恐ろしい勢いでその「ハリセン」を叩きつけた。
「ぶほォッ⁉……す、すみません‼」
「ハハ…バカダナーサクラバー(死ぬ死ぬ死ぬあんなん喰らったら絶対死ぬ誰か助けてッッ‼‼)」
GWも明日で終わりという状況で課題を何一つ終わらせていなかった俺らは全力で小日向と蔭島に泣きついたのだが……
もう何回目かも分からない俺たちのSOSに、普段は温厚な性格の二人も流石にしびれを切らし、蔭島には見捨てられた。
――…たまには痛い目見るべき…二人仲良く●ね……――
ぐぅの根も出ないド正論に俺たちの精神は崩壊しかけていたのだが……、泣き崩れている様子を見かねた小日向は最大の慈悲で手を差し伸べてくれた。
――…私たちにアイス奢るんなら…今回だけは助けてあげるわ…――
これほどまでに小日向が女神に見えた日は無かった。さっきまでは。ハリセン持ってくるまでは。
「もう、そもそも二人が課題全くやってないのが悪いんだからね?私だって
「あの、小日向?その「ハリセン」は一体…なん…でしょうか…?」
「ん?…あぁ、黒羽には見せたことなかったけ?私の相棒ハリセン、その名も「ディアボロス」よッッ‼」
小日向は手にしていたハリセンを高らかに掲げその名を叫んだ。
「いや別に名前はどうでもいい……てかハリセンに付ける名前じゃないでしょ「ディアボロス」って。知らんけど」
「うるさい!この子とは小学生からの付き合いでね、よく学校のいじめっ子達を容赦なく血祭りにあげて完膚なきまでに叩きのめしてあげたわッッ‼」
「え、だからそのハリセン所々赤黒いの?普通に怖いんだけど…、呪われてない?」
「黒羽…ッ‼矢夏が
「どんなプレイしてんだよお前ら」
正直今すぐにでも逃げ出したかったが……、砂場で蔭島とお城を作ってハシャいでいるウリエルを見てしまうとそういう訳にもいかなかった。
「はいはい、お喋りは後にして。まだ数学と日本史も残ってるんだから早く手を動かす!私もウリエルちゃんと遊びたいのッッ‼」
「「は、はい…」」
スパルタ狂師の指導に体と心を震わせながらも、何とか課題を終わらせることが出来たのであった……。
《午後十時》
「もう夜じゃんッ‼遊べないじゃんッ‼時間掛かりすぎなんだよお前らぶっ●してやるッッ‼‼」
「「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ‼‼‼」」
「暗理ちゃん、次は百階建てのお城を作りましょう!」
「…………(眠い)」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます