第2話 大天使は「鍋」を知る
~あらすじ~
大天使が彼女になった。以上。
「こ、
「うん、「しゃぶしゃぶ」ね。誤解されそうな言い方しないで……、好きなだけお食べなさい」
「いただきますっっっ‼……はふっはふっ……お、美味ひいっ……‼」
これまで全く「彼女」というものができなかった俺、藤波黒羽の前に突如として現れ、大昔の先祖から受け継がれてきた見た目安物のペンダントの力を利用し、俺が長年溜め込んできた…「彼女が欲しい」という願いをその身を犠牲にして叶えてくれた天界の大天使……
今俺の前で両目を星のように輝かせ、夕飯の鍋をつついている羽の生えた美女、ウリエルが…ついさっきほど、俺の正式な「彼女」になったのだ。
まぁ、それはそうとして……
「まさかそんなに気に入ってくれるとは……」
「ひっくりれすっ……ん、こんな美味しいものが下界に存在していたなんて……特にこの「はくさい」っていう植物、最初口にしたときは熱すぎて溶岩食ってるのかと思いましたが…あひがほっへもひみへへほいひいれすっ‼」
「うん……まぁ食べれるならよかったよ、後半何言ってるのか全然わかんなかったけど。というか、少し思ったんだけど……ウリエルってもしかして…結構猫舌?」
「?ねこ、じた…とはなんですか?」
あ、そっか下界の言葉わかんないのか。
「うーーん、何て言えばいいんだろう、熱いモノ食べたらすぐ舌が「ひー」ってなっちゃう感じの…さっき緑茶一気飲みしてたウリエルみたいな人のことかな」
「いやあれはホントに緊張で喉が渇いていただけでっ…‼でも…そうですね、確かに熱いものはあまり得意ではないかもしれません、はいっ!私「ねこじた」ですっ、あっ「はくさい」発見‼あーん……アッッッッッヅ⁉」
よっぽど白菜が気に入ったのか鍋の底を掻き分け、発見した瞬間笑みを浮かべ口の中に放り込む。
そして舌を火傷する。……もうすっかりさっきまでの覇気が消え失せていた。
「あーーっ底のほうにある具は熱一番籠ってるんだから気をつけてッ‼…はい水」
「すみません……」
「いや、いいんだけどさ………あれ?今「緊張で」って言った?」
「…んっ…んっ…ぷはぁっ…え?あ、はい」
「もしかして…
「あはは……実は…そうなんですよ。黒羽さんが石の力使ったとき…私のリングにも「下界いけ」って通信が入ってきて、まさかホントに呼ばれるとは思ってなかったので流石に緊張しました…「嘘でしょ?」って感じで」
「そっか……なんかごめんね。でも、なんで俺の
突然来訪した大天使と付き合うことになり、二人分の夕飯を作らなくてはいけなくなったため心に残っていた疑問を完全に放置していたが……
この石が大天使を召喚する特殊な力を得た経緯は理解できた。
しかし何故その力が解放されたのか、その原因だけは全くわからない。
だって俺猫とじゃれてただけだもん。
「力が発動した理由……ですか、ふふ、いい着眼点ですよ黒羽さん。それはですね……」
「そ、それは……?」
「全然わかんないです」
「全然わかんないんかい」
いい着眼点です、とは何だったのか。
「さっき話した通り…黒羽さんのご先祖と私の先祖に関わりがあったのは確かなんです。あの石…『
「一つも…?え、それはどういう?」
「これは…あくまで私の推察なんですけど、恐らく誰も石の「解放条件」がわからなかったからだと思うんです」
「いや……俺も条件なんかわからないんだけど…」
「そうなんですそこが意味わかんないんですよ。さっきまで石の存在すら知らなかった黒羽さんが偶然その条件をクリアすることができた……恐らく、何かきっかけになるようなことはしていたと思うんですけど…」
きっかけ、か…今日は学校行って、勉強して、猫拾って、彼女出来て……、
「全然わかんないな」
「全然わかんないですよね。まぁ今はゆっくり食べましょうよ…って…こ、黒羽さんその白い液体なんですか…?どろどろして…粘っこくて…そ、そんなものを私の前に出して一体何を…⁉」
「「ごまだれ」ね。お願いだから誤解されるような言い方しないでねホントに。……食べる?」
「いただきますッ‼……こっこれはっ…「ぽんず」とはまた違った美味しさが口の中全体に広がってきますっ……下界の人はいつもこんなモノを食べているのですか⁉」
「しゃぶしゃぶでそんなに感動するとは……あっ白米炊けたかな」
「はくまいって何ですかっ⁉」
「あはは…ウリエルの分も用意するね、」
いったい、どうしてこんな生活が始まったのか…その原因はまだわからない。
けど、今こうやって「自分以外」の誰かと同じご飯を食べれる幸せを得られたのは…過去の先祖に感謝すべきなのかも知れないな。
そして……明日の朝食分も含めて炊いた白米は、ウリエルによって一晩で消え去った。
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