神さまは砂時計を廻さない

桜木 澪

序章


1年。1日。1時間。1分。1秒。


時にひと時。

時に一瞬。


思い出すだけで、ため息をつきたくなる時間。


巻き戻したい過去。

そんな過去は誰にでもあるだろう。


気づけたこと――。

間違った選択――。

すれ違った行動――。

取り戻せたもの――。

言い出せなかった言葉――。


数多の後悔の中、安達隆哉(あだちりゅうや)は公務員になった。


自身が何をすべきだったのか――。

自身に何が出来たのか――。


夜を数えるほど、考えた。


過去のこと。

考えても、現実は変わらない。


結局、自分は何も出来なかったのだ。


だから、隆哉は背負う。


――幼馴染への『償い』を。


神さまがいるならば。

もしも、時が戻せるのなら。


あの時間よりも、前に。

あの瞬間よりも、前に。


数秒でも、前に。

さすれば、僕は行動するだろう。


 ――彼女を事故に遭わせないために。

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