第51話 [愛娘 由都]チーズケーキとカラメルクラッシュと。
「みさきさん。お母さんへのプレゼント、預かるから。最後に渡したいでしょ?」
こっそりとみさきさんに伝えて、荷物を預かる。
「ありがとう、しずるさんへの最初のお祝い権といい、さっきの鍋掴みと三角巾姿といい……誰がお祝いされてるのか分からないくらいだよ」
「来年は、自力でね。もう譲らないから」
これは本音。
来年のお母さんのお誕生日にはお母さんと二人だけでいられるくらいに頑張れ、みさきさん。
「……頑張ります」
カッコいいのに、しゅんとした表情がかわいい。
さっそく、あまり目立たない、でも安全な所にみさきさんからのプレゼントを置いて、と。
……あ。
「お母さん、フロマージュブランとマスカルポーネはそのままで、カマンベールにカラメルクラッシュをかけてる! おいしそう!」
さすがお母さん! いい感じ! こういうのを見逃さないのが私、由都です。
「カマンベールだけバーナーで炙ってもらおうかと思うの。マスカルポーネには少しだけカラメルクラッシュをかけさせてもらおうかな。由都ちゃんは全部そのままと、カラメルクラッシュがけも全部で併せて六個、で良いかしら?」
……お母さん、嬉しいけど、多いよ。私の誕生日じゃないんだから。
あと、みさきさんが買ってきてくれたのもあるし、ってまだ言えないんだった。
「あ、土岐さん、食事は? しずのおにぎりと卵焼き、それから僕達のサンドイッチもあるよ」
うまい具合にお父さんが会話に入ってくれた。さっきもケーキをしまう間の時間稼ぎ、ありがとう。
「……! すみません、今はケーキが食べたいです」
……! は、しずるさんの手作り! だよね、みさきさん。
大丈夫だよ、冷蔵庫と、台所にあるのはばっちり保冷剤! してあるからね。
「とりあえず、しずのカマンベールと、由都の全部を炙ろうか。土岐さんは?」
「マスカルポーネでお願いします」
「分かった。じゃあ、僕はフロマージュブランにしようかな。……皆、少しだけ離れてね」
お母さんがバーナーで炙ってもらう六個にカラメルクラッシュをかけて、それから、少しだけ距離を取る。
そこに、安全に配慮した距離を取ったお父さんがバーナーに点火。
とろとろと溶けていくカラメルクラッシュが香ばしい香りをさせていて。
「はい、しずの分。それから由都の三つと、土岐さんと僕ね。お茶はディンブラにしたよ。芳醇な香りと爽快な渋みが良いから、どのチーズケーキにも合うと思う。もしかして他の茶葉が良かったら、遠慮なく申し出てね」
「コーヒーが良い人がいたら、後から入れるわね」
「ありがとうございます、先生、みさきさん。紅茶を頂きます」
……これは、良いタイミングかな。
「私はチーズケーキを食べてからオレンジジュース、入れてくるね!」
お父さん、良いかな?……目だけで訊いてみたら。
うん、そうして。みたいな感じで肯くお父さん。
了解。ケーキとお皿とカットナイフだけ持ってきたら良いね。あ、そうだ、あれを……。お父さん、あ・れ!
気付いてくれたお父さん、いいね、みたいにまた軽く肯いてくれた。
よし、ばっちり! 計画が定まったところで。
「おいしい……」
もちろん、いただきます、だよ!
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