第46話 サンドイッチとおにぎりと卵焼きと。
「お母さん、お誕生日おめでとう! 大好き!」
誕生日の午後。
京さんのマンションは3階だから、階下の方に迷惑を掛けないようにつま先立ちでやって来て鍵を開けてくれたのは愛娘、由都。
今が13時だから、ほぼ半日ぶりかしら?
ああ、かわいい。
「ありがとう! お昼はまだかしら?おにぎりと卵焼き、食べてね」
「もちろん! 朝、たくさん食べたんだよ。昼はお母さんと食べるつもりだったから!」
「やあ、お誕生日おめでとう、しず。土岐さんは夕方になるから、先に始めてほしいそうだよ。由都と僕の二人の合作、サンドイッチをどうぞ」
私が預けたおにぎりと卵焼き入りの保冷バッグを受け取った京さんがダイニングのテーブルを指し示した。
無垢の一枚板のダイニングテーブル。いつ見ても重厚な美しさのテーブルだ。
その上に、色とりどりのサンドイッチ。
まず、キウイ、バナナ、イチゴのフルーツサンドイッチ。断面のイチゴがハート型! 凝ってるのね、かわいい!
「フルーツを置いたのは私。それから、生クリームをカシカシ泡立ててくれたのはお父さん! ハート型の切り口、上手くいって良かった!」
「あとでレシピ、教えてね。一緒に作りたいわ!」
「もちろん! 嬉しい!」
……かわいい、かわいい! 食べる前から幸せ。
「次は、こちらですよ、しず」
ハムとキュウリのサンドイッチ。
それから、ローストビーフのサンドイッチ。
「……で、これがメインね」
そう言って、キッチンに一度戻った京さん。
「お待たせ」
その手には、お盆に載った焼きたてのハンバーグとそれからシャキシャキレタスを挟んだサンドイッチが。
「すごい!」
「ハンバーグ、成形して冷凍してあるからね。お土産にどうぞ」
……何て至れり尽くせりなの!
「ケーキは作って、とは言っても通販で届いた冷凍のものなんだ。ごめんね。でも、昨日きちんと時間を合わせて解凍しておいたからね」
「お母さん、仕上げは自分たちでするんだよ!」
「それは二人が作ってくれた、になるのよ? 嬉しいもの!」
そう、嬉しい。嬉しいわ!
「ケーキはぎりぎりまでみさきさんを待って良い? どうかな、お母さん」
「そうね、じゃあ二人の心尽くしのサンドイッチを頂きたいわ。お母さんのおにぎりと卵焼きも食べてね?」
「もちろん。だけど土岐さんは絶対にしずの手料理を食べたいだろうから、先に少しだけ取り分けさせてね。……その間、しずは洗面所にどうぞ?」
「そうだね、お父さん、さすが! 絶対喜ぶよ、みさきさん!」
「あ、あの、アルミホイルに包んであるのは必ず入れてあげてくれる?」
「うん、分かった。多目に取り分けるよ」
にっこり、の京さん。
……アルミホイルに包んだ分のおにぎり、誰のリクエストかが分かっているのね。
本当に、京さんはすごいなあ。気配りとか、色々。
由都も、みさきさんの気持ちとか、繊細な部分に目を配ることが出来ていて。
誕生日を契機に、私ももう少し感情の機微に敏感になりたいな。
由都や京さん達家族はもちろんだけど、アルミホイルに包んだおにぎりをリクエストしてくれた人のものも、ね。
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