第44話 誕生日当日、また今日に。

「もしもし……こんばんは」

 結局、電話にしてしまった。


 あっという間にみさきさんの声。

「しずるさん? いえ、着信表示で分かりましたけど、まさか、起こしてしまいましたか? すみません! 由都ちゃんが、しずるさんはもう寝ているからと教えてくれたのでメールだけ、と思ったのですが……」

「やっぱり、明日の朝……今日の朝ね、それで良かったのね。でも、体調を崩したとかじゃなくて良かったわ」


 みさきさん的には、私は既に就寝中の筈だったのね。


 確かに私は寝付きが良い。

 由都と京さんからのあのメールの後すぐに寝室に行っていたらきっと眠っていた筈だ。


 寝付きの良さの例外は由都が赤ちゃんだった時だけ。

 あの頃は由都が泣き出すか出さないかの、ふえ、の時にがばっ! っと起き上がれたのよね。不思議。


 そんなことを思い出していたら。


「すみません。……由都ちゃんに、家庭教師のお礼です、って。すごく素敵なものを頂いたので、しずるさんにお披露目したくて。……良いですか?」

 恐縮しきりのみさきさん。

 ああ、そういうことだったのね。

 私から電話したのだから、気にしなくて良いのに。

 あ、でも確かにメールでも良かったかも。電話は念の為に、だったのかしら。


「ええ、楽しみにしているわ」

 きっと、明日……今日だった、に見せてくれるのね。


「ありがとうございます……では。しずるさん、お誕生日おめでとうございます。貴方と会えたことを、貴方が生まれた今日この日に、心からの感謝を申し上げます。……言わせて下さって、本当にありがとうございます。由都ちゃんに、今年最初にお誕生日おめでとうとお伝えできる権を頂いたんです。……今日、お会いできるのを楽しみにしています。この後はすぐにお休みになって下さいね。……失礼します」


「は、はい! じゃあ、また今日に!」


「はい、また今日に。良いですね、この挨拶。では」


 ……由都ちゃん! 京さん!


 絶対知ってたわよね、二人とも!


 だけど、抗議なんてできないわ。


 ……だって、今、私はすごく。


 嬉しいのだから……。

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